すれ違い


最初に彼を遠目に見たとき、宇宙人がいる!!と思ったものだ。だって見慣れない銀髪頭に整った顔。妖しげな雰囲気に聞き慣れない言葉。
彼、仁王雅治は完璧に宇宙人だと思う。

「…ピヨ」

そして今、私は裏庭の片隅で彼と対面している。どうしろと言うんだ私に。

「吉田さん、来てくれて嬉しいなり。」

なり?ま、まじでか。どうしよう、私に対応する事が出来るのだろうか。
名前もない手紙によって呼び出された私。取り敢えず話だけでも聞いておこうと訪れたはいいものの、話を聞くどころじゃないかもしれない。
ちょ、友達連れてきて通訳お願いしてもいいですか!?いつも仁王くーん!って叫んでるくらいだから彼の言ってる言葉は理解出来る筈だ。

「まどろっこしいのは苦手じゃから、単刀直入に言わせて貰うぜよ。」
「はあ。」

じゃ?ぜよ?どうしよう、そこばっかりに集中して殆ど理解出来てないよ。

「一年の時から好きなんじゃ。俺と、付き合ってくれんかのう?」
「はあ。」
「え…ええんか?」
「え?はい、…え?」

なんて言ったこの人。え?何?

「じゃ、じゃあ、今から一緒に帰らん?」
「え?あぁ、うん。いいよ。」

それくらい。てかさっきなんて言った?もう一度お願いします!
ん?鞄を取られた。え?なんで手握ってんの?

「へへ、絶対ことわられると思ってたなり。」

一緒に帰るのが?

「明日の朝迎えに行くから、これからは朝だけでも一緒に登校しよ?お互い部活もあるけど、帰れる時は一緒に帰りたいのう。」

んん?

「吉田さんが”彼女”なんて、夢のようじゃ。」

彼女?え?

「あのー…」
「ん?」
「あ、いや、うん。」

そんなに嬉しそうに優しく微笑まれたらさっきなんて言ったの?なんて聞けない!駄目だ、このまま知ったかしとこう。それが無難な気がする。

「なんじゃ?」
「な、なんでもない。」
「ふ、可愛いのう。」
「え!?」
「…あー、そんな顔で見ないで欲しいなり。折角我慢しとるに。」

そんな顔ってどんな顔?驚いた顔そんなに酷かった?
見てはいけないらしいので取り敢えず下を向く事に。てか帰るんなら行かない?未だに裏庭なんだけど。

「仁王くん、帰ろ?」
「、あー…。」
「!」

上を向いて頭を抱えてると思ったら、突然抱きつかれた。え?何、虫でもいたの?私も虫は苦手だよ!?

「に、仁王くん?」
「ごめん」

え?何が?

「今日は我慢しようとしとったんじゃけど無理じゃ。」
「え?は?」
「…可愛すぎ」

見上げた途端に振ってきた唇。額、目元、頬と徐々に下がっていくそれに困惑。なんだ、何が始まったんだ。
次は唇、というときに動きが止まり、視線が絡まった。

「…ユキ」
「!」
「好きじゃ」

驚いて返事をしようと口を開いたが、声にならずに飲み込まれた。
何がどうしてこうなったのかサッパリ分からないが、どうやら大事なところを聞き逃していたらしい。流れに任せたのが悪かったのか。

「ん…、」
「っっ、可愛いすぎじゃ!」
「わぁっ!」

ぎゅうっと抱き締められて思わず声を上げる。それさえも笑って受け止められるんだから、彼は相当私の事が好きなんじゃないだろうか。なんて自意識過剰になってみる。

「帰ろ?」
「…うん。」

私の手を取ってふんわり笑う彼に、これも有りかななんて絆されて。ほんの少し前を歩く彼の手を
、ほんの少しだけ握り返してみた。

「プリッ」

!!ぷり?
どどどどうしよう。取り敢えず、


通訳お願いします!




純愛を目指してみた。
一途な仁王と注意散漫で流されやすいユキ。