類は友を呼ぶ

※『出会えた奇跡』と同主設定



ある日の休日。いつも通り俺は、脱走した毒虫を探しているところだった。

「あれ?ハチ。」
「お、雷蔵。」
「こんな所でなにやってるの?」
「また虫が逃げ出したんだ。」
「また?大変だねえ。」

「おー、ハチに雷蔵。」
「三郎。」
「なんだハチ、また虫が脱走したのか?」
「うるせー。」
「ははは。」

「あ、ハチ!」
「…え、雷蔵?」
「ようやく見つけた!さっき先生が…ってどうしたの?」

俺は周りを見渡す。雷蔵の顔がひい、ふう、みい…うん。三つ。…三つ!?

「…ええええ!?」
「え?あ、僕が二人いる?」
「ほ、ほんとだ。」
「どっちかが偽物で、雷蔵に変装してるんだ!」

ど、どういう事だ!?雷蔵が三人?いや、雷蔵が二人と三郎が一人?よく分からなくなってきた!

「あ、いたいた。兵助、みんな居たよ。」
「本当だ。こんな所で何やってるんだ…」
「「…」」
「「「「…」」」」

途中から来た勘ちゃんと兵助も三人の雷蔵を見て言葉を無くした。取り敢えず三人を並べて観察をしてみる事にしたのだが、分からない。三郎は三郎っぽいが…

「雷蔵が二人…だがこの三郎が本当に三郎とは限らないぞ。」
「確かにね。三郎はからかうのが好きだから。」
「いや待てって。私が鉢屋三郎に決まってるだろ!」
「うーん、どっちが三郎だろう。」
「右にも見えるし左にも見えるし…」
「雷蔵、二人して迷うなよ。余計分からなくなるだろ。」
「だから、私が鉢屋三郎だって!変装?変装してみればいいのか!?」
「いや、これだけ区別がつかないんだ。ソイツも相当の変装名人だろう。」
「がーん!ら、雷蔵!雷蔵なら私が本物だと分かるだろう!?」
「「うーん、たぶん?」」

ちくしょー!!と叫ぶ三郎(仮)。二人の雷蔵(仮)は同じ困った顔をしているし。いやもう、本当に区別がつかない。勘ちゃんと兵助に視線をやると二人も眉を下げていた。

「ぶ、くくく…」

これでは埒があかない、そう思ったとき、押し殺すような笑い声が聞こえてきた。

「ら、雷蔵…?」

その主は最初に俺に話し掛けてきた雷蔵で。それはもう心底可笑しそうに腹を抱えていた。そして一息ついた後にふっと口元を緩め、頭巾を豪快に外した。

「ふはははは!馬鹿め、騙されてやんの!!」
「なっ!」
「え」
「あー」
「お前っっ」

現れたのは最近食堂のおばちゃんに弟子入りした吉田ユキさんだった。女でフリーの忍なのだから、それなりの実力の持ち主だろうとは思っていたけれど此処までとは。

「鉢屋くんは私の正体が分かっていただけに残念でしたー!じゃーあねー!」
「あ、ちょっ」

ケラケラと笑って吉田さんは去っていった。それはもう楽しそうに。

「ちっ」
「え、なんだよ三郎。吉田さんだって分かってたのかよ。」
「だから私が鉢屋三郎だと言ったではないか!」
「んなこと言ってもあの状況じゃしょうがねえだろ。」
「それは…そうだが。」
「吉田さんって凄いんだね。」
「ちくしょー!食券三枚取られる…!」
「なんだよ賭けてたのか。」
「抜き打ちではあったがな。油断していた。」
「今日の夕飯豆腐でるかな…」
「兵助…」

このイタズラがこれを期に度々行われるようになったのは言うまでもない。







主に不敵に笑わせたかった。