初デートです!
最近、万事屋の朝は早い。
この間ユキさんが営む『万屋』に行ってからというもの、ほぼ毎日依頼が来るようになったのだ。其れというのもユキさんが仕事を回してくれているからなのだけれど。屋根の修理とか簡単な物が多いけれど、お陰で経営状態も安定、規則正しい生活を送れているのだ。
そして今日は久しぶりの休み。けれど、いつもよりも2時間以上早くに銀さんは起きて、服を選び、髪を直すのを延々としていたらしい。
「銀さん、そろそろ行かなくていいんですか?」
「マジで?もうそんな時間?やべーよ見ろよコノ髪。こんなピョンピョンしてるんですけど。直らないんですけど!!」
「大丈夫アル。いつもと同じヨ。」
「ホントに?どっか可笑しい所ねーか!?」
「大丈夫、いつも通りですよ。」
「ねぇ、それって大丈夫なの?ホントに俺可笑しくなぁい!?」
「大丈夫ですって。ほら、待ち合わせまで時間ないですよ!」
「あ、ああああぁ。行ってくる!」
「「行ってらっしゃーい」」
そう。今日は銀さんとユキさんの2人きりでの初デートだ。
ユキさんに初めて会ったその日にプロポーズをした銀さん。基本銀さんは面倒臭がりだし、自分よりも他人のことを気遣ってしまうような人だから、意外と対人関係には淡白だ。あんなに必死になって誰かを手に入れようとする銀さんを初めて見たし、応援してあげたいって思った。
後を付けてたどり着いたのは待ち合わせ場所らしい、銅像の前。銀さんはそわそわしている。
「銀ちゃん落ち着きないネ。」
「約束って何時なんだろ。」
今の時間は10時20分、時間からして10時30分くらいだろうか。ならすぐ来るかな、と思い神楽ちゃんと草陰に隠れて様子を窺う。
「…」
「…」
「…来ないネ。」
「…どうしたんだろう。」
あれから15分くらいが経った。それでもユキさんは来ない。まさか…
「…なにかあったのかな?」
「あっ、ユキ姉アル!!」
あ、本当だ、良かった。2人の会話が(というか銀さんの異様に大きい声が)聞こえてくる。
「坂田さんっ。時間まで大分あるのに、随分早いんですね。」
「あ、あああぁ、まぁな。」
「待たせてしまってごめんなさい。」
「い、いやいやいや、俺が早く来ただけだしよぉ。」
「ふふ、じゃあ行きましょうか。」
「お、おう。」
歩き出した2人。それに続き神楽ちゃんと後をつける。銀さん手と足が一緒に出てるんだけど。どんだけ緊張してるのあの人。それにしても、
「ユキさん遅刻じゃなかったんだね。」
「銀ちゃんが1人はしゃいでいただけアル。昨日の夜だってずーっと鏡とにらめっこしてたヨ。」
2人して色々な小物屋を見ては笑って。手は繋いでいないけれど、さながら恋人のようだ。ユキさんを見る銀さんの目は優しくて、愛おしそうで。今まで見たことのない銀さんに微笑ましく思った。
何軒か店を冷やかした後、ファミレスに入った。良かった、お洒落なお店とかに入られたら僕らはついて行けないところだ。神楽ちゃんと隠れるように店内に入り、少し離れた席につく。心配すること無かったかな、なんて思ったりして。
「新八ぃ、お腹空いたアル。」
「そうだね。もうお昼だし僕らも何か食べようか。って言っても僕あんまりお金持ってきてないよ?」
「じゃあドリンクバーは欠かせないネ。水で膨らませるアル。」
「切ないこと言わないでよ!」
取り敢えずメニューを見る。うーん、手持ちだと大したものは頼めないよなー。…はぁ。
「見てよ新八!卵かけご飯があるヨ!流石TKGブームアル!!」
「あ、本当だ。でもファミレスに来てまで卵かけご飯って…。」
『ピンポーン』
「はい、お待たせいたしました。ご注文はお決まりですか?」
「あ、ああぁ。はいっすいません。」
「卵かけご飯を10…」
「神楽ちゃん!そんなに手持ち無いって言ったでしょ!」
「役に立たねーな駄メガネが。」
「なっ!しょうがないでしょ!…全く。すいません、取り敢えずドリンクバー2つと、」
「お客様。代金のことは気にせずにご注文下さい。代金は彼方のお客様にご請求させて頂くことになっておりますので。」
「え。」
店員さんの視線を追うと、銀さんとユキさん。え、何。もしかしてバレてるの?
「銀ちゃん?銀ちゃんがそんな太っ腹な筈ないアル。」
「じゃあ、もしかして…」
ふとユキさんが顔を上げた時、バチリと目が合った。そしてニコッと笑ってまた銀さんと何事も無かったみたいに話し始めた。
「新八?」
「ユキさんと目が合った…。」
冷や汗が出てきて、自然と肩を落とす。どうやら、バレているのはユキさんにだったらしい。じゃあファミレスにしたのもユキさんの気遣い。
「じゃあ、奢りってユキ姉アルか!?キャホーッ!流石ネ、太っ腹アル!!」
「あっ、神楽ちゃん!」
次々と注文し始めた神楽ちゃんに既に僕の声は届かない。止めるのを諦めて、僕もユキさんに甘えておこう。注文した商品が半分ほど来た頃、銀ちゃん達が立ち上がるのが見えた。伝票をさっと取ってユキさんを気遣いながらレジに行く銀さんは男前だ。…って僕らまだ食べ終わってないよ!!黙々と食べ続ける神楽ちゃんを止めて立ち上がると、窓の外に先に出ていたらしいユキさんがいた。机の上のご飯を指差し、両手を併せてお願いのポーズ。…?
「今日は此処までにしろってことアル。人の恋路を邪魔する人は、馬に蹴られてーってやつネ。」
「うーん、そうだね。大丈夫そうだし、今日はユキさんに任せようか。」
「スイマセーン、コレとコレ追加で。」
「まだ食べるの神楽ちゃん!?」
後をつけるのは諦めて、席に再びつく。窓の外を見ると、笑顔で話す2人が目に入った。僕らに背を向けて歩き始めた銀さんに、半歩遅れて歩き始めたユキさんは少し戸惑ってから銀さんの腕に手を絡めた。銀さんは見ていて分かるくらいにビクッと跳ねた。そのため、ユキさんの手から離れてしまい、さらにアタフタしている。ユキさんは手をそのままにじーっと銀さんを見つめている。
少し落ち着いたのか(顔は相変わらず真っ赤)、銀さんは頭を掻き毟った後ユキさんの手を取って歩き出した。ユキさんが嬉しそうに頬を染めて笑ったのを見て、僕は2人が早くくっ付けばいいのにと思った。
あかり様リクエストありがとうございました!
お言葉に甘えて少し崩させて頂きました(汗)因みに、銀さんはいっぱいいっぱいで新八と神楽には気が付いていません。ユキちゃんは1人で万屋やってるくらいなので、色々鋭いです。こんな感じになりました。如何でしょうか?
ありがとうございました!1/12
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