君と住む
新八Side



「ただいまヨー。」
「ただいま帰りました。」
「お帰りなさーい。」
「、おー。ただいま。」

仕事が終わり、万事屋へと3人で帰ると、普段は聞こえる筈のない言葉が聞こえてくる。事の発端は三日前に遡る。

以前、団子屋で見事に桂さんをあしらっていた女の人が依頼にやってきた。彼女は吉田ユキさんといって、銀さんとも知り合いらしい。
ユキさんの依頼はストーカー退治。ずっと視線は感じていたらしいが、気のせいと思い放っておいたそうだ。そうしたら郵便受けに隠し撮りされた写真が入っていて、流石に身の危険を感じて依頼に来たそうだ。

「悪かったな、留守番なんかさせちまって…」
「いえ、私がお世話になってる身ですから。」
「ユキ姉お腹空いたアル。」
「じゃあご飯にしよっか。手洗っておいで?」
「キャホーッ!!」
「新八くんも、ね?」
「あ、はい!!」

なんか良いよな、こういうのって。ユキさんには失礼かもしれないけれど、母上ってこんな感じなのかな。帰ったら笑顔で迎えてくれて、明るい部屋に暖かいご飯。
ユキさんが万事屋で生活するようになって二日。家にいるのは危ないから、という理由で銀さんが万事屋に居るように言ったんだ。ユキさんも最初は戸惑っていたみたいだけど、銀さんと神楽ちゃんに押し負けたみたい。
神楽ちゃんに続き洗面所に行く。小さな声だけど二人の声が聞こえてくる。

「あー、ユキ。今日お前ん家寄ってきた。そしたらコレが入ってた。」
「…一つは宅配便の不在届け。もう一つは…」
「ストーカー、だな。まだ中は見てねーけど、封筒が一緒だ。」
「…」
「…絶対ェ捕まえてやっから。」
「、はい。」
「だからー…」

ユキさんは少し震えているみたいで、顔を伏せている。銀さんがユキさんの頭に手を乗せようと手を伸ばした。
気になって洗面所から顔を出して見ていたら、神楽ちゃんが手を洗い終わったらしく、後ろに立っていて声を上げた。

「新八ィ、何やってるアルか?」
「神楽ちゃんっ!?しーっ!今いいところなんだから!!」
「何が?私にも見せてヨ!!」
「あっ!だから静かにってー…」

銀さんとユキさんがコッチを向いていた。銀さんは手を挙げたまま固まり、ユキさんは首を傾げてコッチを見ている。

「…」
「あ、手洗った?ご飯にしようか。」
「今日は何アルか?」
「ハンバーグだよー。」
「やったネ!!大好きヨ!!」
「なら良かった。今から焼くからもう少し待っててね?」
「分かったアル!」

キャッキャッとはしゃぐ神楽ちゃんを横目に、銀さんを見る。顔を伏せて頭を抱えている。耳が少し赤い…?

「銀さん…、いや、あの。すいません。」
「うるせー、ほっとけ。」






銀さんのアピールもままならないまま、事件は思いの外早く動きを見せた。次の日、ユキさんの仕事が終わる頃に迎えに行き、三人で帰宅していた時だ。(神楽ちゃんは定春の散歩に行ってたので、この時は居なかった。)
他愛ない話をしながら赤く染まった歌舞伎町を歩く。前に見える影を見ながら、此処に神楽ちゃんも居たら家族に見えるかな、なんて。微笑ましく思っていると、影がもう一つ増えた。ん?と思って後ろを振り向くと、浪人風の男が一人、刀を構えて佇んでいた。

「あー、なんか用っすか?昨日から俺の事つけていたみたいですけどー。」
「…の…」
「はぁ?聞こえないんですけどー。」

銀さんが目線で僕に合図をする。それに頷き、ユキさんの手を引き少し離れ、後ろに隠す。

「僕のユキに触るなぁぁああ!!!もう少しで俺と彼女は結ばれるんだ!!邪魔をするなぁぁああ!!!!」

刀を振り上げ、銀さんに振りかぶる。銀さんは素早く木刀を抜き、刀を弾き飛ばした。尻餅をついた男はわなわなと震えながら銀さんを見上げている。

「誰がテメェのだって?」
「ひ、ひぃぃぃいいっ!!」
「コレに懲りたら二度とコイツに手ェ出すんじゃねーぞ。」
「あ、うあ…っ」
「おい、」
「ぎ、銀さん!やり過ぎですよ!?もうその人泡吹いてます!!」

いつもと雰囲気の違う銀さんに焦り、慌てて声を掛ける。近寄ると顔をしかめた銀さんがいた。下を向いて頭を掻き、顔をあげた銀さんはいつもの死んだ魚の目をしていたので、ほっと息を吐く。

「ユキさん、大丈夫でしたか?」
「え?あ、うん。(すっげー、銀さんてやっぱり強いなー。テレビで見てるみたい。)」

ユキさん、なんだかボーッとしてる?
それにしても、銀さんどうしちゃっんだろう。

「あ!僕、真選組に電話してきますね!」

二人を残して電話を探しに走った。





ーーーー

 銀時Side

2ヶ月程前から、団子屋で会う彼女は少し疲れて見えていた。派手なほうのネーチャンも気にしてるみたいだったか、話を聞いてもDVDを徹夜で見たとかなんとかではぐらかされるそうだ。俺も聞いてみたが、見事にはぐらかされた。徐々に酷くなるものの、何も出来ない日々が続いていた。
漸く三日前、ユキが依頼に来た。押し切って万事屋に無理矢理泊めたこの二日間。ソファで寝させるのは悪いから、と言われて隣同士に並べた布団。俺は一人ドギマギしながら布団を被り、じっとしていた。暫くすると、彼女はムクリと起きて身体を抱え、一人震えていた。その身体を抱き締めることも、慰めることも出来なかった俺は、ただただその背中を見つめていた。
彼女は2ヶ月もの長い間、1人で耐えていたんだ。

目の前にストーカー野郎が現れた時、軽口を叩きながらも腸が煮えくり返るほどの怒りを感じ、気が付いたら木刀を抜いていた。
野郎の怯え具合からすると、俺の顔は相当ヤバかったんだろうな。新八も焦ってたし。

大分気持ちが落ち着いてきて周りを見渡す。あれ?新八何処行った?
振り返るとユキと目が合った。

「…」
「あー、おい、大丈夫か?」
「え?あ、はい。」

なんとなく上の空のユキ。あぁそうか、この瞳は…。

「…悪ィ、怖がらせたよな。」
「え?」

白夜叉という異名は、捨てたつもりでも捨て切れていなくて、ふとした時に表に出てくる。殺らなければ殺られる日々を過ごした為に身に付いた殺気。これらを後悔している訳じゃねー。
怖がられることだって、風当たりが強い時だってあった。今更、俺は何を怖がってんだ。俺にはもう、居場所があるのに。



「もう、近づかねぇようにするから。…じゃあな。」


コイツなら、分かってくれるんじゃねーかって。コイツと、一緒に居たいって。

「え?は?坂田さん?何処行くんですか?」
「…何処って、」
「もう真選組の人来ますよね?帰って夕飯にしましょうよ。」
「…はあ?」
「で、出来れば今日もお世話になってもいいですか?神楽ちゃんとお風呂入る約束しちゃって。」
「え、いや、いいけど?」
「良かった。あ、すいませんお礼がまだでしたよね。ありがとうございました。」

あっけらかんと言い放つユキに思わず脱力。なんだよコイツ。俺が色々考えていたこと全部何でもないような顔しやがって。額に手を当てて力無く笑う。

「?坂田さん?」
「はは、もうさ、」



一緒に住んじゃえば?





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(え?いや、帰りますけど)
(まぁそう言わずに)
(何やってるアルか?)
(神楽ちゃん、今いいところなんだから隠れて!)









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凜耶様リクエストありがとうございました!
思ったよりもシリアスな感じになってしまいましたが、如何でしたでしょうか?
ありがとうございました!
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