「悪ぃな。休みは昼過ぎまでしか取れなかった。」
「…はあ。」
再び定食屋で会った土方さんは唐突にそう言った。
なんだかんだこの定食屋を利用している私。いや、だって美味しいし安いんだもん。それはともかく、何の話だ?
「やっぱりクリスマスだからな、一日は取れなかった。ただでさえも隊士の数が少ねぇからな。」
クリスマス?
「んで?どこ行きてぇんだ?」
「え?」
「なんだよ、まだ驚いてんのか?まぁ、確かに明日一緒に過ごせるとは思ってなかったろうがな。俺だって仕事ばっか考えてる訳じゃねーんだぜ?」
「は、あ。」
な、なんだ?取り敢えず明日遊ぼうってこと?まぁ仕事も休みだし、特に用事もないからいいけど。
いやでもきっと久しぶりのお休みだよね。しかも午後から仕事ならそんなに歩き回ったりするのは疲れちゃうよね。何がいいかな…。遠出も無理だし…。
「土方さんは…」
「んんっ」
「ト、トシさんは…」
怒られた。ギロッて睨まれたよ。
「行きたいところ無いんですか?」
「あ?あー、特に無えな。つーかこんな時くらい我が儘言えよ。どっか行きてぇところ無えのか?」
「はあ。…あ、映画とかどうですか?」
「映画?」
「はい。実は私、江戸に来てから映画見たこと無いんです。」
「ほぉ、んじゃそれにすっか。何見るかは明日行ってから決めるか。」
「はい。」
ということで明日のクリスマス、土方さんとお出掛けする事になりました。
────
次の日の25日。カラフルに彩られた木々や街並みに目を奪われながらやってきた映画館。待ち合わせは9時。2時間映画を見て、街をウロウロしつつご飯を食べて解散てとこだろう。
「よぉ、早えな。」
「こんにちは。」
「んじゃ行くか。何見るか決めたか?」
「いえ、ペドロ?が見てみたかったんですけどやってないみたいで。」
「あぁ、あれは名作だぜ。見た方が、というか見るべきだ。」
そういえば土方さんってペドロ見て銀さんと一緒に泣いてたような。いやぁ気になるわ。けど今日はやってないので、無難なファンタジーを見ることに。
あれ、これハリーのパクリ?まぁそれなりに凝っていたので楽しめた。感想をポツリポツリと話しながら街を歩く。暫く歩いていると土方さんが細い路地に向かい始めた。土方さんが振り返って促すので、首を傾げながら後に続いた。
「どこ行くんですか?」
「飯。」
小さな表札のある店の前で立ち止まった土方さんは引き戸をガラガラと開け、ずかずかと入って行ってしまった。え、なんか高そう、というか一見さんお断り的な雰囲気なんだけど。
「土方様、お待ちしておりました。」
「おぅ、女将世話になるぜ。」
か…顔パスゥゥゥウウ!?まさかの常連さん!!流石土方さんだわ!行ってる店が違うよ!!
「御案内致します。此方へどうぞ。」
美人な女将さんの後について行くと通されたのは個室の小部屋。ええぇぇ、個室?個室なの!?すっげぇぇぇええ!!昼御飯食べるのに個室!!やっぱ違うわ!土方さん違うわ!
女将さんがお辞儀をして部屋を出て行く。視線をウロウロさせながら、ちょこんと居心地悪く座っていると土方さんがブハッと吹き出した。
「なんだ、緊張してんのかよ。」
「だ、だってこういうお店初めてなんですよ。」
「まあこういうのは慣れだからな。これから来る機会も増えんだろ。」
増えないよ!こんなお店一生に何度も来ないよ!!
未だにククッと楽しそうに笑う土方さんに微妙な気持ちになっていると、女将さん達が部屋にやってきて、続々と豪華なご飯が机に並べられていく。昼?これ昼御飯?どっかの料亭の晩御飯じゃないか!!
そして目の前でニュルニュルと料理を台無しにしていく土方さん。女将さん達居なくて良かったね。見てたら多分泣きたくなるよ。
「?食わねえのか?」
「あ、いただきます。」
ニュルニュルを見ないようにして台無しになっていない自分の分を一口。…美味し!何コレ美味しい!
「ふ、気に入ったか。」
「はい、とっても美味しいです。」
結局この豪勢なお昼ご飯はご馳走になってしまった。いやだって、土方さん御手洗いのついでに会計済ませてしまうスマートぶりだったんだもの。払うって言っても要らねえっていうし。あんまり言うと逆に失礼だしね。
その後店を冷やかしながら帰路についていると、土方さんがプレゼントを買ってくれた。え、あ、はい。ありがとうございます。若干どもりながらお礼を言うと土方さんは満足そうに笑っていた。