回転ブランコで見渡す

「あ、あの植木なんかの形になってますよ。此処のキャラクターですかね?」
「ああ多分な。トピアリーか、結構凝ってんだな。」

久し振りに来た此処は来る相手でこんなにも違うんだ、と実感した。前に来たときはとっつぁんの娘のデートの相手を暗殺…ゴホン、邪魔するとかいう馬鹿げた任務の時だった。とっつぁんと近藤さん、総悟のアホと一緒だったから、それはもう大変だった。
まあ、その時の詳しいことはさておき、隣をチラリと見る。まさかコイツが此処に来たいなんて言い出すなんて思わなかった。確かに今まで一緒にどっか行ったことなんてなかったもんな。初めての我が儘がコレなんて可愛いことしてくれんじゃねーか。

「土方さん?どうしたんですか?」
「…」
「土方さん?」
「…お前、まだ呼び慣れねぇのかよ。」
「は?」

土方さん、なんて他人行儀な呼び方未だにしやがって…。

「前にトシって呼べっつったろ?」
「…あぁ、スイマセン。…トシさん。」

さん?まだ恥ずかしがってんのか。可愛い奴。

「フ、じゃあ行くか。」
「…はい。」

手始めに向かったのは回転ブランコ。二人乗り用の座席に着いて簡素なシートベルトをする。

「ほらじっとしてろ。」
「…はい。」
「怖くねえか?なんなら手でも握っとくか?」
「え?あ、大丈夫です。」

強がりやがって。まあそんなとこもお前らしいがな。ブザーが鳴り、徐々に座席が宙に浮いていく。おー、結構高ぇな。結構な遠心力を受けながら機体はグルグルと回る。単調な動きに余裕が出てきて景色を見渡す。

「うわぁっ、結構早いですね!」
「だな。」
「次どれ乗ります?私、アレには乗ってみたくて…」

下を指差しながら尋ねてくるコイツに笑みが浮かぶ。あー、無理して休み取ったけど、偶には良かったかな。なんて。

「そう急ぐな。時間はあるんだし、順に乗って行くぞ。」
「はい。」

風に靡く髪の毛に指を通して、彼女の頭を軽く撫でた。

top