蜜柑と殿内の対面後、殿内は私を見てこう言った。
「水の舞姫…?」
−−−−
「なんだよ、その"水の舞姫"って?」
翼が皆を代表して言う。
「…え?あ、あぁ。」
しかし殿内は曖昧に頷くだけで、明確な答えを言わない。視線はずっとユキに注がれている。
「殿?」
「あ、いや、すまん。ちょっとビックリして…、」
殿内は深呼吸をして心臓を落ち着ける。
「"水の舞姫"っつーのは…。ホラ、アリス祭のダンスパーティの前に、ステージで舞が披露されただろ?」
「あぁ!あの凄かったやつか。すげー綺麗だったよな?」
「新聞部が中等部を必死に探してるんだろ?」
「私も聞かれた!知り合いに居ないのかって。」
「え、あの人中等部の人なん!?ウチも会ってみたい!」
「いや、なんか見つからないらしいぜ?」
「「「「で?それが??」」」」
殿内は頭を抱える。ソコまで分かっていて何故分からないんだ。
「…だから、その舞姫が」
そこで、ずっと黙っていたユキが口を開いた。
「殿内センパイ。ちょっといいですかー?」
「!…なんだ?」
殿内を連れて廊下に出て結界を張る。
「そのこと、言い触らさないでもらいたいんですよねー。」
「なんでだ?無断でやったのがバレて、罰せられる為に探されてるわけじゃないぜ?」
「別に、そんなことは問題じゃないんですー。」
「…」
ほんの少しだけ、真剣な顔を作る。
「私は目立ちたくないんです。お願いします。」
正体をバラすつもりは無い。コレは、姫様に興味を持ってもらうための布石。
「………分かった。新聞部の奴にはそれとなく言っといてやるよ。」
「有り難うございますー。」
ヘラリと笑う。すると、目の前に悪どい顔。
「ただし、条件がある!」
「条件?」
「そ。俺を名前で呼ぶこと!あと敬語も無し!」
「…いいのー?」
「のだっちから事情はある程度の聞いてるからな。年上、なんだろ?」
「中身はねー。」
「じゃあ、問題ないな。俺は外見が年上だから名前で呼ぶし、敬語もなし。中身が上のお前もそうすれば、おあいこだろ?」
ニカリと笑う殿内につられて笑みが浮かぶ。
「…変な人だね明良はー。」
「!」
なんとなく、明良ならいいかなと思った。
「明良なら、教えてもいいかなー。」
「?」
「…自分たちじゃ、どうしようも出来ない時の最終手段、をさ。」
近い未来、君たちの道を少しでも照らしたいから。
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(ユキ…、皆で話し合った結果、お前が"舞姫"だってことになったんだけど)
(ぶはっ、そんなわけないじゃーん)
(だ、だよなー!)
((バカだ…))
道を作るのは君たち。
自分はあくまでも最終手段。
殿はきっと話さなくても察してくれた気がする。