『ユキさん、今時間ありますか?』

いつもの柔らかな雰囲気ではなく、少し鋭さを含んだ声で秀ちゃんが"テレパシー"で言った。委員長がアリスを盗まれ、隔離されてから2日目。流石に日にちまで詳しいことは覚えていないので、蜜柑をここ数日マークしていた。蜜柑と蛍に表立った動きを見せないし、少しくらい大丈夫だろうと高等部に瞬身の術で向かうことにした。…分身を残さずに。ここ連日、棗ちゃんの特訓、治療と偵察で疲れはともかく、チャクラの消費が激しかった。その為、少しでも保持、回復に当てたかった。ほんの短時間だと、高を括っていたのだ。


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「!ユキ先輩…?」
「柚香ちゃん…。」

久しぶりの再会に柚香ちゃんが飛び付いてくる。

「ユキ先輩…!良かっ…、ホントに良かった…!!」
「柚香ちゃん。」
「また会えて…、ホントに良かった…!!」
「…柚香ちゃん、」
「センパ…」
「辛いとき、側に居られなくてゴメンね。」
「センパイ…」
「生きててくれて有り難う。頑張ってくれて有り難う。私も、会えて嬉しいよ。」

柚香ちゃんは私をギュウギュウと抱き締めて泣き出してしまった。泣くの、何年我慢していたんだろう。前回会った時、ユッキーの無事を伝えた。その時柚香ちゃんは既に蜜柑を手放していて、色々な決意をした後だった。あれから数年が経って、柚香ちゃんは強くなっていた。けれど、やっぱりただの女性で。

「…柚香、そろそろ。」
「……うん。分かってる。」

そっと私から離れ、最後にキュッと手を握って離れた。

「…護送車は今門前を移動中だ。」
「行きましょうか。」

志貴くんに近付いて手を取る。私は黙って後ろ姿を見送る。ふいに、柚香ちゃんが振り返った。

「ユキさん、私は、私達は貴女に救われました。ずっと、お礼が言いたかった!」

チートな能力を持っていても、肝心な時に役に立てなかった。

「殆ど会えないけど、それでも生きていてくれて、それだけで私は救われた!」

柚香ちゃんが苦しんでいた数年を私は知らないし、恨まれてもしょうがないって思ってた。

「だから私達も…、生きて、また会いましょう!!」

そう言って柚香ちゃんと志貴くんは姿を消した。
私は思わず下を向く。

「……ユキさん?」

後ろで秀ちゃんと昴ちゃんが不思議な顔をしている。それでも私は、目から溢れてくる涙を止めることが出来なかった。

「皆、優しすぎるよ…。」

服の裾を強く握った。



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志貴くんとは初対面。