柚香ちゃんの言葉で胸を一杯にさせていると、去り際の言葉を思い出した。
「…今、護送車って言った?」
「え?あ、ハイ。」
「っ!しまった!!」
慌てて蜜柑のところに戻ろうとすると、昴ちゃんに腕を捕まれた。
「どうしたんですか?」
「今すぐ救護の準備を!」
「「!」」
「昴ちゃんは早く病院へ!」
腕を振り切って、現場を目指した。
−−−−
「―…蛍!!!」
銃声。しまった、遅かったか!
「蜜柑!!」
「蛍っ!…蛍っ!」
既に柚香ちゃんたちは逃げてしまっていて、周りには特殊部隊の奴等が数人いた。
「蜜柑、」
「蛍、蛍…!」
蜜柑はすっかり気が動転してしまっていて、私の言葉が聞こえないようだった。そこで此方に気付いた特殊部隊のうちの一人が大声をあげた。
「お前!一体何処から…!」
「…」
「おい、聞いてるのか!」
「…んなコト言ってる暇があったらさっさと医者を呼ばねぇか!!」
蜜柑と蛍を避け、辺り一面にユキは殺気を飛ばす。空気が揺れる。部隊の人達は目を見開き、冷や汗を垂らす。何人かが泡を吹いて倒れる。
ユキが殺気をしまい、息を整えたとき、救急車のサイレンが聞こえた。
−−−−
手術は無事終わったが、蛍は新種のウィルスのせいで今も苦しんでいる。蜜柑や棗ちゃん、先生達が次々と蛍の病室の前から離れて行った。けれど、私はそのまま廊下からガラスを通して蛍と昴ちゃんを見つめていた。
「ユキさん。」
「秀ちゃん…」
「…なんとか、ならないんですか?」
昴ちゃんは蛍の側に座り、じっと蛍を見ていた。
ホントはこの事件、蛍に協力してもらって、幻術で終わらせるつもりだった。蛍に怪我を負わせるつもりはなかったんだ。
コレは、私の落ち度だ。
「……秀ちゃん」
「はい、」
「秀ちゃんが信頼出来て、結界張れる人、用意出来るかな。」
「!はい、今すぐ。」
NARUTOの世界に居たとき猛練習したのが医療忍術だった。医療忍術は緻密なチャクラコントロールが必要とされるため、性格も大雑把で、大規模な術をぶっぱなすのを得意とする私には苦手なものだったのだ。それでも習得しようとしたのは、亡くしたくない命があったから。応急措置が生死の数割を左右するなら、少しでも現場で命を繋いでいたい、そう思ったからだった。
"細患抽出の術"という術がある。これは体内のチャクラの乱れを感知することにより、毒や病原体など、人体に害をなす根源を看破。チャクラのメスを用いて患部を切開し、毒素を吸い出すと同時に外部からの損傷部を治療する術である(※)。この術は、どうしても完成させることが出来なかった。体質なのか何なのかは分からないが、自身の身体に半分"移す"ことで、患者の負担を半分だけ減らすことしか出来なかった。忍の両親のお陰で大半の毒に耐性はついていたものの、やはり悩みの一つであった。コレでユッキーの時も苦しめられたのだが、それはまた今度。
つまり、ものすごい神経を使うので、他のことなんてやってられない。でもまだ、初等部校長に目をつけられるのは困る。結界は他人に任せることにした。
昴ちゃんに説明をして、少し離れてもらう。秀ちゃんと結界を張る子は外で待機。見張りも頼んだ。
息を整え、神経を尖らせる。
『―…細患抽出の術』
張り詰める空気の中で、静かに昴は息を飲んだ。
−−−−−−−−−−
(※)wikiより。