君にしか

夜の第一音楽室。ここに『穴』が存在する。私は秀ちゃんに監視されながら歩いていた。未だに冷や汗が止まらない。たぶん顔は真っ青だろうな。暗くて良かった。
秀ちゃんが扉に近付く。その間に巻物を取り出す。

「おい。」
「、んー?どうした棗ちゃん。」
「お前ホントに俺の代わりに行く気かよ。」
「うん、今更じゃなーい?」

たまに棗ちゃんに変化して黙って任務してた。それは棗ちゃんも気付いてた筈だ。

「そうだ棗ちゃん。」
「…」
「分かってると思うけど、」

アリスはなるべく使わないこと。

「あぁ。」
「…代わりにクナイと起爆札あげるよー。使い方わかる?」
「あぁ。」
「私が初日に使った時は外に音が漏れないように結界張ってたから。もっと威力あるからね?」
「…」

しゃがみこんで巻物を広げる。なんか皆の視線を感じるけど無視。親指を噛んで血で塗らす。印を結んで巻物に手をかざした。
ポンッと可愛らしい音とともに三羽の小鳥が現れる。
私の代わりに行ってもらう。一匹は柚香ちゃんとの伝達用に、一匹はペンギー救出用に、最後の一匹は皆を守ってくれる用に。ふらつく身体に渇を入れて立ち上がる。

「ルカ。」
「え?」
「この子達連れて行って。」
「俺が?」
「偵察、陽動なんでもするよ。簡単な物理攻撃なんかは守ってくれる。意外と力持ちだから、ルカくらいならくわえて飛べる。」
「俺…」
「ルカだから預けれるんだよ。ルカが出来ないコトはこの子達や周りの人に頼めばいいよ。でもこの子達は、ルカしか扱えない。」
「…」
「気持ちを込めて、お願いしてあげて。きっと応えてくれる。」
「…うん、ありがとう。」



秀ちゃんが呪文を唱えながら鍵を回す。『鍵穴』が開く。

「いそいで。この穴が開いている時間は約30秒くらいだ。」
「え。で…でも、こんな穴にどうやって…っ。」

棗ちゃんが私の頭に手を置いてから鍵穴に近付いた。すると棗ちゃんは穴に吸い込まれて消えた。

「あて25秒。」
「ルカぴょん!」
「俺らもいくぞ蜜柑っ!」

次々と穴に吸い込まれていくのを見て蜜柑が慌てる。

「チビ!これ持ってけ!」
「殿先輩っ」
「少しは役に立つハズだ!使い方は翼にきけっ!頼んだぞ翼!」

明良がアリスストーンを渡して二人は消えた。残った皆は暫く立ちすくみ、鍵穴を見詰めていた。
私はその場に座り込み、息を整えていた。

「ユキさん!」
「んっ、昴ちゃん、」
「!はい。」
「蛍の側へ。」
「しかし、」
「あの子達は大丈夫。だから、私達は最大限にサポートしてあげよ?」
「…はい。」

此方は此方でやることは山程ある。信じて待ってるから、無事に帰ってきて。