昴ちゃんと秀ちゃんはそれぞれやるべきことをやりに行った。二人とも私の体調を案じていたが、ヘラッと笑うと渋々頷いてくれた。
チャクラも戻ってきたし、そろそろ抗体も出来ただろうからウイルスを撲滅したい。明良に時間を聞くとまだ少しくらいは大丈夫らしいので、近くの使われていない教室に入る。
床に座り込み、息を整える。チャクラをゆっくりゆっくり練る。自分の細胞を活性化させて、すでに出来上がっていた抗体の働きを強くする。徐々に痛みが減り、あがっていた息が落ち着いていく。コレが自分に出来て他人に出来ないのは疑問である。
完全にウイルスを消した頃、明良が恐る恐る話し掛けてきた。
「ユキ、まさかお前…」
「ん?うん。蛍のウイルスだよー?」
「なっ!?」
「私の力じゃ毒とかウイルスは、進行を抑えて半分吸い取るしか出来ないんだー。」
「吸い取るってお前…」
「大丈夫。私は抗体を身体で作ることが出来るから。」
時間がかかるのが問題だよね。種類によっては身動きが取れない。
「ま、もう問題ないよ。」
「…」
「行こ。棗ちゃんに変化しなきゃ。何するか聞いてないんだよねー。」
−−−−
殿内Side
何するんだろー?と言ってから"棗"に変化したユキ。チビどもが取りに行った特効薬を必要とするウイルスをこの数時間で攻略する。それはきっとコイツの過去に関する訳で、忍なら毒に対抗する体でも可笑しくはない。
小さい頃から微量の毒を摂取することで体に耐性をつける。この行為は俺達にとっては非現実的なもので、どれほどの苦痛が強いられるのか想像もつかない。
それだけで、住む世界が違うことを思い知らされる。他人の痛みを戸惑いなく受け入れる彼女は、すっかり棗に成りきっている。姿は違うけれどなんて大きな背中なんだろう。少しでも身近に感じたくて肩車をしてやる。
「っ、てめぇ何しやがる!」
「おいおい、口が悪いぞユキちゃーん。」
「…はなせ。」
ボッと髪に火を点けようとしやがる。何処まで棗に成りきってやがるんだ。
「バカ止めろ!」
「ちっ」
「お前なぁ…、まだ誰もいないんだから普通にしてくれ。」
思わずため息。
「えー?でもこの姿でやると変じゃない?」
「…いやコレはコレであり。」
「ヘンターイ。」
キャラキャラ笑うコイツは棗の姿だけどやっぱりユキで。腕の中に閉じ込めた。大きく感じた背中は思ったよりも小さくて、護りたいと強く思った。