流架Side
Zのアジトから帰ってきてから3日。謹慎を経てまるで何もなかったように過ごしている俺達だけど、やっぱり何処か心に蟠りを抱えたままだった。
飛田に無事アリスが戻ったという報告も兼ねて、今井のお見舞いにクラスの数人で向かっていた。
「あっ!」
声につられて前方を見ると、鳴海が車から出てきた。続けて今井兄、岬と岬に抱かれている今井が現れる。
「蛍ちゃんだ!」
皆が今井に駆け寄る。今井は岬に降ろされて佐倉の前に立つ。
「蛍…」
「もう全部、分かってるわ……」
ペンギーのことも。今井には分かってるんだ。
「蛍…、もう肩…痛くない?」
「……平気よ」
「もう…体はどこも痛くないの?」
「うん」
「蛍…」
佐倉は今にも泣きそうで、飛田や小笠原もつられている。
「ほた…」
「バカね、何遠慮してんのよ。泣き虫。」
「蛍…っ」
佐倉は今井に飛び付いて、何度も名前を呼んでいた。周りに飛田達が集まって、皆泣き笑顔だ。…良かった。
「行かねーの?感動の抱擁。」
カゲが棗に問う。当然棗はそっぽを向いている。
「あ、予想通りの反応返されちゃった。」
その一言で棗はさっさと踵を返して歩き出してしまった。
「え、帰んの!?…棗」
「……つばさ」
棗がカゲにアリスストーンを投げ渡す。
「かしてやる。てめーの肩、人のことばっか気にしやがってどーせ完治してねんだろ。…これで貸し借りなしだ。てめーに気づかわれんのなんかゴメンなんだよ。」
確かに自分の怪我の治療はそこそこに、俺達を気遣っていた。棗はやっぱり優しい。そして、
「『つばさ先輩』だろー?」
嬉しそうに笑うカゲ。二人の間に出来た関係に不器用だけれど嬉しくなって、棗の後ろを追い掛け…
ようとした。
「おーおー、皆此処に居たのかー。探しちったよー。」
ほんわかとした空気をぶち破ってきた吉田。そういえば、コイツに借りた小鳥は気付いた時には一羽になっていて、その一羽も暫くしたらポンッと音を立てて消えた。小鳥の行方を聞きたかったのに、肝心の吉田は姿を現さなかった。棗も口には出さないけど気にしていた。
「あー、ユキや!ずっとおらんくて心配したんやで!何しとったん!?」
「ん?うん。」
「ちょっ、吉田さん怪我してるじゃないの!!」
様子を伺っていた棗、カゲ、岬、鳴海、今井兄が急いで吉田に近付き、取り囲んだ。一瞬のことで驚いたが俺も後に続いた。
「ユキ先輩!?どうしたのコレ!?」
「ひでーな…」
「ユキさん…」
「ユキ…」
「ユキさん…」
あまりの剣幕に佐倉たちは若干怯えている。顔に擦り傷、手は荒れ、服はボロボロだった。
「ちょ、邪魔だなー。私はいち早く皆に知らせてあげようとだねー。お風呂も我慢して来たんだからー。」
鬱陶しそうに手をしっしっと払い、懐から巻物を取り出した。それを見た5人は納得していない顔をしながら一歩下がった。巻物を開いて屈む。アレ、これは穴に入る前に小鳥を出したやつ…?
「意外と重いから巻物に入れてきたよー。瓦礫も森も結構厄介だったから時間掛かっちゃった。」
ポンッと現れたのは小鳥ではなく、傷だらけのペンギー。
「な…」
皆が息を飲み、ペンギーを見詰める。
「傷だらけだけど、瓦礫の下敷きにはならずに、隙間に挟まってた。」
佐倉の漸く収まった涙が再び溢れる。吉田はペンギーを持ち上げ、今井に近付く。
「打ち所が悪かったのか、眠ったままだけど」
今井が震える手を伸ばす。
「治してあげてくれるー?」
受け取って、強く抱き締めた。そんな今井に佐倉が抱きつき、飛田達も周りを囲んで泣いていた。