仮面舞踏会が始まった。
仮面をするしないの違いはあるものの、各々楽しく踊っているみたいだ。ペルソナのアリスを受けたナルを遠目に見つつ、私は化粧室へ行き変化をする。変化した姿はほんの少しだけ成長した姿。元々茶髪だった髪の色を少しだけ明るくして。髪型も二つ結びで先端を少し巻いた。服装も初等部用に二種類用意されていた内の、さっきとは別の方。化粧はせずに、唇にグロスだけ塗って仮面をつけた。
化粧室を出る前に、一般生徒除けに幻術を軽くかける。効力としてはナルのフェロモンに似てるかも。
口元に笑みを浮かべ、会場に戻った。辺りを見渡すと、初等部校長が会場を出て行くのを見つけ、口角を上げる。
何時までもじっとしててもしょうがないので、感嘆の溜め息と惚けた視線を受けながら、一直線にある人物に近づく。
彼は予想していた通り多くの女子生徒に囲まれていて、笑顔で受け流していた。
「秀一さん。」
馴れ馴れしく名前で呼んだ私に、中等部、高等部のお嬢様方が嫉妬の視線を向けてくる。しかしそれも一瞬で、その視線はすぐに惚けた物へと変わる。自然と人垣が空き、秀ちゃんと視線が合う。一瞬驚いた顔を見せたものの、すぐに現状を把握してくれたのか、微笑んでくれた。
「此方から行こうと思っていたんですが、一足遅かったみたいですね。」
「ふふ、私が会いたくて此処まで来てしまいましたの。」
「全く、可愛いことを仰いますね。…宜しければ一曲お願い出来ますか?」
仰々しく頭を下げ、手を差し出してくる。その瞬間、周りの女の子達は惚けた溜め息を吐いた。
視界の端で蜜柑がツリーに登って行くのを確認してから、秀ちゃんを見据え、ニコッと笑って手を取った。
「喜んで。」
これで多分花姫の誰か、山之内先輩辺りが接触をしてくる筈。秀ちゃんに「迷惑をかけてゴメンね?」と小声で言うと、「こんなの、迷惑だなんて思いません。むしろ、僕を選んで貰えて嬉しいです。」と笑った。本当にこの世界の人は優しいな。