棗Side
ルカに言われて水玉とダンスを踊り、押し倒されてヘッタクソなキスをされた俺は、今最高に機嫌が悪い。途中からユキは鳴海と消えて行ったまま、未だに姿が見えない。
機嫌の悪さが最高潮のとき、水玉が木の上に登ってきて、一方的に愚痴り始めやがった。…面倒くせぇ。
さっきまで泣いていたかと思ったらすぐに笑い始めるし、ルカのことを聞いたら静かになって、今度は怒鳴り始めた。コロコロ表情が変わるやつ。
「お前とのさっきのなんかキスとちがうわ、カウントすんなー!!ばー…むぐ!」
「こっちこそ願い下げだ。さっきからうるせーんだよ。」
「ムキーっ!!!」
あまりにうるさいから口にイチゴを突っ込む。さっき下から持ってきたやつだ。更にうるさくなり、自然に眉間に皺が寄る。口を開こうとしたその時、下の会場で感嘆の溜め息が聞こえ、自然と目を向ける。水玉も異変に気づいたらしく、下を見る。
仮面舞踏会会場の中央に現れたのは、高等部の代表…櫻野と初等部の女。二人とも目元に仮面をしているため分かりにくいが、女のほうは…
「ユキ…」
「え?ユキおったん?何処?」
気付けないもんだな。まぁ確かにさっき見たときと、髪型も色も違う。でも、見る奴が見れば分かるだろう。やっぱり馬鹿だなコイツ…と冷めた目で見るが、水玉は構わず騒ぎ始めた。
「なぁ、あの真ん中におるのって高等部の人やんな?相手の子って初等部の子!?」
「…」
「あれ、あの子ってキャンプファイヤーの時踊っとった子?えーっと、殿先輩が言うてた…水の舞姫、やったっけ?」
「…」
水の舞姫…?まあ、アイツらしいか。
会場の奴らが皆端に寄り、ユキ達だけの舞踏会会場が出来上がる。
幻想的な光景に魅入るものの、その相手が目に映ると眉間に皺が寄る。なんで、相手がアイツなんだ。
「なぁ、棗はユキの事が好きなん?」
「…」
「ユキっていつも笑ってるやろ?けど、本当に笑ってるところあんまり見たこと無いねん。」
水玉は視線を下に向けたままだ。俺は横目でその様子を窺い、再び視線を踊ってるユキに戻す。
「ウチはこんな性格やから、知らんうちに傷つけとる時があるかもしれへん。それでもユキは笑ってウチを助けてくれとる。」
「棗は、ユキのこと…」
「…ばーか。」
「なっ!」
「お前がごちゃごちゃ言ってもしょうがねーだろ。」
「そうかもしれへんけど…」
「精々、足を引っ張らねーことだな。」
お前も。俺も。