新年明けましておめでとうございます。ただいまアリス学園の寮内、談話室にて初等部の皆とおせちを食べています。
「みなさーん、年賀状が届きまっしたよー。」
わーっとタカハシさんの元に皆が集まる。各々に年賀状が届き、皆はしゃいでいる。
私も自分に届いた年賀状を眺めていた。それと花園会の招待状。そっと懐に仕舞い、ほかの年賀状を見る。
どの年賀状も、私が外に用意した家の住所から送られてきていた。元の世界の家族の名前が書かれたそれは、とても切ない。最近会った旧友たちからの年賀状だ。柚香ちゃん、レオ、馨ちゃんにユッキー、日向くん。ごく普通に連ねられた手紙の中に隠された暗号文を、解読しながら読む。枚数は少ないけれどこの世界で出来た大切な繋がり。そっと目を伏せ、馨ちゃんと日向くんのハガキを持って棗ちゃんを探す。
「あれ?棗ちゃんは?」
「あ…、棗くんは出て行っちゃったよ。」
「えー、なんで。」
「…ウチが無神経なこと言うたからや…。」
ずーんと沈んだまま外に出て行く蜜柑を眺めながら、周りを見渡す。
「ふーん?あ、ルカ!」
「え?何?」
「見てコレ!」
じゃーん!と満面の笑みで二枚の年賀状を見せる。ルカはあまりの勢いに一歩下がり、年賀状を眺める。
「?ユキの家族、なの?」
「え?あぁ、違う違う!えーっと、ちょっと持ってて。」
手紙を預けて、おせちの海老にかぶりつく蛍に声をかける。
「蛍ー。ライター持ってない?」
「あるわよ。…はい。」
「ありがとー。」
この後蜜柑の誕生日会だから、持ってるんじゃないかなー。と思ったらビンゴ。ウキウキとしながらルカの元に戻る。
「ルカ、お待たー。」
「ライター?…どうするの?」
「コッチコッチ。暗い方が見やすいんだよー。」
手招きしてカーテンの影に隠れる。物を燃やさないようにライターに火を付けて、ハガキを翳す。所謂あぶり出し。
「これ…!」
「素敵でしょー。」
「うん。でもなんでユキ宛なの?」
「んー、私はあくまで出来の悪い生徒だからね。手紙は届くんだー。これは私の外の住所。名前は私の家族。」
「え…、」
「じゃあコレ、へこんでる棗ちゃんに渡してくるねー。」
「あ…」
何か言いかけていたルカを置いてウキウキしながら走り出した。蛍にライターを返し、棗ちゃん探しへと繰り出した。
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流架Side
火を翳したことによって浮き上がった棗宛の年賀状。それを見て棗にも家族から届いたんだって、嬉しくなった。けれど元々書かれていた住所と名前。ユキは、それを家と家族だと言った。けれどその年賀状は棗の家族が書いたもので。
それじゃあ、ユキの本当の家族は?
学園が、架空の住所や親族からの手紙を容易に生徒に渡す程甘いとは思えない。Zの事件があったばかりだし、特に棗みたいに目を付けられてしまった生徒には。ユキだって二度目の学園生活だ。アリスは使えなくてもある意味注目されているはずだ。ということは、あの住所は本物であり、家族の名前も本物。けれど…
カーテンの影に隠れたままでいると、今井が声を掛けてきた。
「ユキも年賀状何枚か届いたみたいね。」
「え?あぁ、そうみたいだね。」
「…良かったわ。」
「え?」
「だって、年賀状が届いたってことは、ユキを心配している人が学園の外にも、この時代にも居るってことでしょう?」
「あ…」
「家族とか友達とか、詳しいことは話してくれないげれど、それでもユキを思ってくれている人が居るだけで安心したわ。」
「そう…だな…。」
十数年間音信不通だった彼女を待ち続け、大切に思っている人が居ることが分かって。今はそれだけで充分じゃないか。