蜜柑の誕生日会も終わり、餅つきを経て話題は花園会の話へ。
花園会の説明を聞き流しながら皆に背を向け、隅で先程懐に仕舞った手紙を眺めていた。蛍の所に来た手紙とは違い色合いは青。添えられた薔薇もブルーローズ。
蛍の招待状は開けた瞬間花が飛び出し、派手な演出がされていたものの、私に来た招待状はそんな演出はされていなかった。多分、周りにバレたくないというのを察してくれた姫様の配慮だろうけど。
自分の分だけ作ったお餅をモチャモチャと食べながら手紙をそっと仕舞った。すると隣に棗ちゃんがお椀を持ってやってきた。
「なんだそれ。」
「んー?何でもないよ。」
「……」
「はは、まぁ気にしないでよ。」
「…はあ。」
溜め息を付いた棗ちゃんに苦笑いをしながら餅を口から放し、お皿の上に置く。すると、何を思ったか棗ちゃんがその餅を食べた。…食べた!
「!だ、ダメ!!」
「あ?別にいいじゃねーか。」
「そうじゃなくて…むぐっっ!」
「口直しくらいさせろ。」
「にっが!何コレ!!」
「水玉の作ったやつ。」
みかん餅かー!!!つーか、これはまずい。いや、味じゃなくて状況が。だってこの餅は…。
すぐに体に異変が起きて、棗と引っ付いてしまった。そのすぐ後に蜜柑も来て、私達3人は引っ付いてしまった。
「それ、『もっちもっち粉』のせいだわ。これこれ、中等部寮で流行ってたもんでちょっとイタズラのつもりでさー。」
アハハハと笑う翼を横目に、冷や汗が止まらない。マジで困った。一時間しても取れなかったらマジでヤバい。私は、今回この二人と行動を共にする気はないのだ。そのために姫様に回りくどい真似をして目を付けて貰って。忍び込むなんて簡単だった。それでもしなかったのは、穏便にしたかったから。姫様に敵視されるわけにも、初等部校長に見つかるわけにもいかないから。此処で、私が目立つわけにはいかない。私が一人加わる事で原作通りにいかないなんて、未来が分からなくなるなんて怖い。この世界には助けたい人が沢山いるから。
蜜柑に花園会の抽選玉が当たり、周りが騒然とする。周りの子達はもっちもっち粉の効果が切れ始め、自由になる子達が出てきた。蜜柑に背を向け、棗ちゃんにしか聞こえないように声を潜めて話し掛ける。
「棗ちゃん、」
「あ?」
「花園会、乗り込むんでしょ?」
「!…あぁ。」
「蜜柑を離すな。」
「は?」
「蜜柑について、乗り込みなさい。」
「…お前とだって行けるんだろ?」
「!」
「お前がさっき隠した手紙、色は違ったが今井に来てたやつと同じだった。」
「…イヤなとこばかり見てるね。」
「俺は、お前がいい。」
ゴメン。
「ゴメン。」
ゴメン。ゴメン。
「ゴメ…」
溢れてくる涙。それを隠してくれたのは棗ちゃんで。もっちもっち粉のせいでくっ付いてしまった不便な身体で、私の頭を抱き寄せた。
「…俺こそ、ゴメン。」
蜜柑に向く筈の気持ちが、私に向いているのが怖い。私という異物のせいで、本来あるべき形が変わるのが怖い。
なんで私、此処に居るんだろう?