舞姫になる

蜜柑達がナルの運転で花姫殿へと向かっていた頃、私は高等部の寮に紛れ込んでいた。

「秀ちゃん、昴ちゃん、明けましておめでとー。」
「ユキさん明けましておめでとうございます。着物似合いますね。」
「明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。」
「ありがとー。今年も宜しくね。2人とも似合ってるよー。」

2人とも袴姿だ。こりゃ女の子は放っておかないわ。
今現在、寮には女の子が殆どいないらしい。皆、花姫殿の新年会場に行っているらしい。

「そういえば花園会はどうなりました?」
「御陰様で。この後行ってくるよー。」
「山之内さんに案の定聞かれましたよ。それはもう凄い剣幕で。」
「ごめんね秀ちゃん。」
「僕が好きでやった事です。」
「ん、ありがと。」

3人で珈琲を啜る。着物に珈琲なんて何て新年らしくないんだろう。笑える。
ふと顔を上げた昴ちゃんが私を射抜いた。

「ユキさん、今日はどうして此処に?」
「勿論僕に会いに来てくれたのは分かっていますけど…」
「秀一。」
「分かってるよ。ユキさん、それだけじゃないですよね?」

2人は私のことよく分かってるなぁ。そんなに分かりやすいかな、それって忍としては失格じゃない?…あれ。

「うーんとねぇ。今夜、花姫殿でちょっとした事件が起きる。」
「「!!」」
「私は参加しないから、最大限力を貸してあげて欲しい。」

今回、私が参加しては意味がない。葵ちゃんの記憶も、蜜柑のアリスも。

「それは…僕等が手を貸す程の大事件が起きるということですか。」
「うーん…ていうか、多分この学園には昴ちゃんしか対処出来ないと思うな。」
「それはどういう…」
「昴」
「秀一…。」
「分かりました。万事に備えて準備しておきます。」
「ん、宜しくね。」

察しの良い秀ちゃんに内心苦笑しながら立ち上がって背伸びをする。

「んー…!そろそろ行こうかなぁ。」
「そうですか。」
「ユキさん、あんまり食べ過ぎてはいけませんよ。」
「あはは。食べない、てか食べれないよ。」

キョトンとしながら首を傾げる昴ちゃんと全て分かっているみたいに微笑む秀ちゃん。それを一瞥して高級感のあるショールを手に取る。秀ちゃんが立ち上がって肩に掛けるのを手伝ってくれたのでお礼を言う。

「昴、凄い顔になってる。」
「…うるさい。」
「あはは。昴ちゃん、理由は簡単だよ。」

扉に手を掛けて顔だけ振り返って微笑んだ。




「これから私は、舞姫だからね。」