姫さま

蜜柑達が棗を追って地下へと行った。私は姫さまの側に座り、酌をしていた。

「…で、貴女は行かなくて宜しいのですか?」
「えぇ。」
「ふふ、随分とはっきり仰るのですね。」
「私が居ては意味がありませんから。」

目を細めて私を見てくる姫さま。私はふんわりと微笑みを返す。
今回の目的は葵ちゃん奪還だけではないのだ。今後、重要な時に味方してくれる颯くんと蛍の初対面。ルカの覚悟。蜜柑の盗みのアリス発覚。私が参加をして、邪魔する訳にはいかない。

「…姫様。彼女の花名は如何なされますか?」
「そうですね…、『蓮華の君』は如何でしょう。」

蓮華の花の花言葉は『心が和らぐ、私の苦しみを和らげる』、蓮華升麻の花言葉は『伝統美』。私には、勿体無い気がするけれど。

「…有り難く、頂戴致します。」
「蓮華の君、一杯お付き合い下さいな。」
「姫さま。彼女はまだ初等部の生徒です。」
「以前、一度だけ貴女を拝見しました。あれは確か…、紅薔薇の君と柚子の君、あとは…鳴海先生が一緒でしたね。」
「!」

驚いた。まさか見られているだけじゃなくて、覚えられているとは思わなかったから。

「当時、花姫に推薦しようとしたのですけれど…高等部校長にそれとなく止められてしまいましてね。」
「「!!」」

高等部校長…一巳さんが…。当時、目立ちたくないと言った事を覚えていてくれ、手を回していてくれたようだ。それにしても、あの頃は目立たないように普通に暮らしていたはずなんだけどなー。

「何も、姿形のみが美しさを表すわけではありません。」
「、恐縮です。」
「私も出来る限り力を貸しましょう。」
「!…有り難う、御座います。ですが私の事は…」
「自分の事も大切にしなければ、姫達が悲しみます。」
「え?」
「いつも言っていました。自分達は、助けられてばかりだと。」
「いえ。私は…、私はそんな大層な者では…」

馨ちゃんと柚香ちゃん。本当に、2人は優し過ぎる。いつも他人の為に、自分を犠牲にして。

「…高等部校長が隠したがっていた理由、分かる気がします。」

顔を上げると姫様は微笑んでいて。

「もっと我が儘になって良いのですよ。貴女達は、他人を気遣い過ぎるようですね。」

慈愛に満ちた表情に、言葉を無くす。我が儘に?だって、だって私は…

「…かきつばた、何か一曲轢いてはくれぬか?」
「、はい。ただいま。」

杯を渡され、酒を注がれる。一口で飲み干すと再び注がれる。かきつばたこと山之内先輩が琴を持ってきて、音を奏で始める。
私は手元の杯に注がれた清酒に目を落とし、そっと耳を澄ました。




未成年者の飲酒は禁止です。
姫さまの話し方がよく分からない。