棗Side
あれから一週間が経った。初校長は表上「証拠不十分」として処分保留という判断を下した。
「おい、極秘の見送りのハズじゃなかったのか…?」
そう、今日は葵が帰る日だ。
「だってだって棗君、妹ちゃんがみつかって棗君を学園にひきとめてた理由がこれでなくなったから、もしかして葵ちゃんと一緒に帰っちゃうんじゃないかって、そんな噂がでてたんだもーん。」
「棗…」
「いかねえよ」
「え…」
仲間がいる。ルカやあいつらをこのまま学園に残して俺だけ行く事は出来ない、ユキを支えたい。
「みかんちゃん、ルーちゃん。お兄ちゃんの事よろしくお願いします。」
「葵ちゃん…」
「私…みんなに出会えてよかった。こんな形じゃなくて私がアリスのままで、みんなとこの学園で楽しく過ごせたらなんて、そんな事を想像してしまうくらいみんなと出会えた事…とてもうれしかった。」
葵…
「…お兄ちゃんがいつか安心して帰る家を、お父さんと一緒に作って葵まってるから。そしていつかきっと、みんなと笑ってまた会える日を葵、ずっとまってるから。」
葵も、前に進もうとしてる。
「本当にありがとう、みんな。」
門の外から人の声が聞こえ、視線を向ける。
「お父さん………」
「ママ…!?」
そこには父さんとルカの母親がいて、葵に続きルカと駆け寄る。
「棗っ…!!」
「父さん…」
柄にもなく感極まる。胸が一杯で、後ろの水玉達のことさえ、気にならない。
「面会は終了です。お引き取りを。」
職員に促され、門から離される。振り返ると、父さんが精一杯に叫んだ。
「棗っ…!!ユキさんに馨さんの事、有り難うって!ずっと、待ってるって…!」
父さんもユキと知り合いなのかと不意に関係無いことが頭によぎった。そして、口角をあげて笑う。
「…一緒に、絶対帰る。」
俺にも、ユキにも、帰る場所がある。それが分かっただけで、今後もこの学園で頑張れる。やっていける。
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翼Side
「なぁ、ユキは?特力の教室にも来ないし、全然会えねーんだけど。」
「それがな、ユキ教室にも来うへんねん。」
「来ない…?」
花姫殿以来見かけないユキ。俺の力不足でああなったのに、それをアイツのせいにして。
直接言ったわけじゃないけど、謝りたかった。ユキが俺たちに隠していることが、どれほどの事かも知らないで。
「鳴海先生にも聞いたんやけどな?先生も分かれへんのやって。」
「…なんかあったのか?」
「分かれへん。けどな、鳴海先生言うとったわ。ユキが居なくなるのは何時もの事やって。寧ろ、今までのほうが珍しいんだって。」
「なんだよ、それ…」
俺、ユキの事なんにも知らねーな…。