ルカSide
誰も星階級が変わることなく、2月になった。最近佐倉は上機嫌で今井にくっついていて、今井も前よりも受け止めているように見える。今井が言っていた。
『今の方がマシだってことに気付いただけよ。動かないあの子をまのあたりにするつらさに比べたら………今は前よりいろんなことをやさしく受けとめられるようになっただけ。それだけよ。』
花姫殿の事件では流石に肝が冷えた。でも、色々なことが分かった気がする。
「棗、こんなところにいた…」
「ルカ…」
「何してるの?」
「…よう『星なしなりそこない』」
「む…むか…」
ムカ…って口で言うか、なんて笑う棗に俺まで笑顔になる。今まで学園でこんな顔出来なかったから。
「今の棗の笑顔、佐倉がつくったんだね。」
以前も登った木の上から、学園を見下ろす。
「だから棗は学園に残ったんだね、佐倉を守るために」
「ああ」
ふと見た棗の顔は決意に満ちていて、目がそらせない。
「この先、あいつの前に立ちはだかるものすべてから俺はあいつを守りたい。」
強いなぁ、棗は。
「オレも佐倉を守る。棗に負けないくらい、佐倉のこと大好きだから。」
負けたくない。けれど、
「そして、棗の笑顔をずっと守りたいから。」
棗のことも大好きだから。
あの日、佐倉との出会いはきっと、僕らのみつけた光だったんだ──…
「お前、なんか勘違いしてねーか?」
「へ?」
「水玉のこと、そんな風に思ってねー。」
「えぇ?」
「さっきのはユキのことだ。」
「え、えぇぇぇ!?」
「そーか、お前あいつが好きなのか。」
「うわぁぁぁあっっ!」
しまった!!恥ずかしい!赤くなる頬を隠すことが出来ずに俯く。
そりゃ、ユキのこと好きだろうとは思っていたけど、なんとなく執着っていうか、どっちかっていうと母親に持つような家族愛的な所も大きいと思っていたから。だって、
「だって、ユキって棗のお母さんと同い年…」
「精神年齢だけでいったらもっと上だけどな。」
あいつ、実は結構ババァだぜ。なんてさっきと同じ笑顔で笑う。あ、でも卒業前にタイムトリップしたんなら二十歳か。
「年とか、そういう問題じゃねーんだ。」
隣にいる棗はどこを見ているのか分からないけれど、凄く優しい顔をしている。
「あいつは今まで、俺達が想像出来ないような生活をしてきていて」
ユキが時折見せる大人の顔。
「それのお陰、で俺達よりも格段に強いし俺達を庇ってくれてる。」
任務だって、たまに俺の知らない所で俺の代わりをしてるんだ。なんて切なく笑う棗に目を見張る。そんなの、知らなかった。だってそんなそぶり見せなかった。大体いつも佐倉の側にいたし。
「だけどユキは他人ばかりだ。ユキのことを支えたい。でも俺じゃあまだ力不足だ。」
棗のお父さんもこの間ユキにありがとうって言っていた。
「ユキが水玉を守るんなら、俺だって守る。ユキが自分を守らないなら、俺が代わりに守りたい。」
棗は片手をギュッと握り締めて目を閉じた。
「……俺も守るよ。」
「ルカ。」
「俺だって、ユキのこと棗とは意味が違うけれど、大好きだから。」
俺じゃあきっと足手まといだ。けど、穴の時みたいに、俺にしか出来ないことだってあるはず。もう、棗だけに任せたりしないよ。
ニッコリと笑うと棗も苦笑するみたいに笑ってくれた。