それぞれの役割と覚悟

「棗、棗まって。」
「ルカ。」
「またこのまま………裏任務の方に戻るの…?」
「………」
「寮にも全然戻ってこないし……もう俺にもみんなにもごまかしきれないよ。何でまたこんな…。あの時、解放されたんじゃなかったの、体の方だって本当は隠れて何度も病院に通ってるくせに。」
「ルカ、俺の事はもう心配するな。」

そんな事出来る訳ない。

「自分で決めた事だから大丈夫だ。」
「棗…」
「あいつを守るって決めた。そのためには今は俺がこのままでいる方が一番いいんだ。それに…」
「そんなの」
「蜜柑には言うな。俺はこのやり方であいつを守る。ルカ、お前はお前のやり方であいつを守れ。俺はこの方法で、まだ知りたい事がある…。」

去っていく棗を止めることが出来ない。棗の覚悟を目にしたら俺に出来る事なんて…。




「全く、キミは勝手だね。」
「「!」」

その声は最近聞いていなかった聞き慣れた声で。二人してバッと声のした方を向く。木の上を見上げるとそこにはアイツがいて。
ユキは勢い良く枝から飛び降り、綺麗に着地した。

「全く、フォローする方の身にもなって欲しいよねー。」
「…お前がそれを言うか。」
「えー?」

ヘラヘラといつも通りに笑うユキに安心した。花姫殿以来、ずっと見ていなかったから。何かあったんじゃないかって皆心配していたから。あ、勿論俺も。

「まぁまぁ、ルカー。棗ちゃんの事は任せてよ。私が出来る限りフォローするからー。」
「はは…。」

棗はユキをフォローするつもりでいるのに、その想いは全くの逆効果みたいだ。ポンポンと棗の頭を撫でながらヘラリと笑う。棗は凄い不機嫌な顔をしてるけれど、置かれた手がぼんやりと光を帯びているのを感じたのか、そのまま大人しくしていた。

「それにさっき休学届け出してきたから、もう裏に没頭できるしねー。」

まるでいい天気だねー、とでも言うかのようにごく自然に放たれた言葉。それは予想外の事で。

「「は?」」
「それよりもさー、ルカに話があって来たんだー。」
「え、いやいやいや、え?今なんて?」
「ルカに話があって来たんだー。」
「ち、違う!その前!」
「休学届け出してきたから…」
「それ!!」

休学届け!?何ソレ、なんで!?棗もビックリして目を見開いてる。

「だって授業だる…んん、そろそろ動き始めるからねー。準備が必要かなーって。」

なんか本音が聞こえた。いや、そりゃ確かに二十歳過ぎのユキには簡単すぎる授業だろうけど。

「それに私、アリスストーン作りは居てもしょうがないからね。」
「え?なんで?」
「アリスストーン作れないんだー。練習云々の話じゃなくて、私のアリスは形にならない物らしくてねー。盗みのアリスでも盗れないって言われた事があるよー。」

そんな事よりもさー、と巻物を取り出していつかの小鳥を呼び出した。あれ、前回の小鳥達は青色だけだったのに、今回は赤色も混ざってる。

「この子達、ルカに預けるよ。」
「あ…」
「前回預けたのは青い子達だったよねー。」
「うん、瓦礫とかから守ってくれたよ。」
「うんうん、それは良かった。今度は赤い子達も預けておくねー。」

パタパタと小さな羽を羽ばたかせながら俺に寄ってくる。…可愛いな。

「その子達はねー、凄いんだよー。目標物に突撃していって爆発するのー。」
「ば、爆発!?」

しかも一回だけじゃなくて何回も可能なんだよえっへん!と棗の頭を撫でながら笑うユキに唖然。だって、爆発って…。

「今のルカなら、大丈夫だよ。」

なんで…。俺が、花姫殿で動物たちを使って攻撃を仕掛けた事を知っているのだろうか。俺の覚悟に、気付いているのだろうか。

「…うん。ありがとうユキ。」

俺も戦うよ。棗を、佐倉を、ユキを…俺も守りたいから。俺に出来る方法で。俺にしか出来ない方法で。