◎野田先生と私
あれはいつだったか、多分この学園に来て間もない頃だったと思う。
「野田くん野田くん。」
「?はい、何ですか?」
「お願いがあるんだー。」
特力のクラスで何時もの通りぼんやりとしていた先輩が少しだけ真面目な顔をして言った。
「今後時間を渡ったらさ、探して欲しいアリスストーンがあるんだー。」
「アリスストーン…?」
「そ。私も色々当たってるんだけど、なかなか無くてね。そのアリスを持った子が入学してくるのを、多分待っていられない。」
少し遠くを見ながら話す先輩はいつものヘラヘラした先輩じゃなくて。
「どんなアリスストーンなんですか?」
「”増幅”だよ。」
「増幅?」
そんなアリスの人見たことない。珍しいものなのかもしれない。
「誰が持っているかは分かってるんだ。ただ、その子以外にもいるかもしれないからさ、居なくても情報だけは聞いてきて欲しいんだ。」
「あ、はい。分かりました。」
「マジでかー。ありがとう。」
ただタイムトリップした先でオロオロするよりは断然良いし、目的があった方が旅も面白いと思った。結構軽い気持ちで受けたんだよな、あの時は。
「これ、その子の似顔絵。思っていることを絵にしてくれる子に頼んで書いて貰った。」
「あ、はい。」
「これ、高校長の署名入りの依頼書。」
「こ、高校長!?」
「見知らぬ子供から突然アリスストーンくださいって言われても、普通渡さないでしょ。だから、これ見せてね。」
「は、はい!」
高校長からの署名まで貰っているなんて。そんなに重要なことなのだろうか。
「あ、先輩。その人の名前は?」
「あー。”殿内明良”だよ。」
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「…のだっち、さっきから何だよ。コッチをじーっと見て。」
「いや、子供の頃、ずっと殿内くんを探していたなーって思い出したんです。」
「何だよソレ。」
「のだっちにとって殿は運命の人ってか!?」
「そうですねー、ある意味そうだったのかもしれないですね。」
「「「ヒュー!!!」」」
「…やめろ!鳥肌立った!!」
「あははは。もちろんそういう意味じゃないですけどね。」
増幅のアリスはやっぱりなかなか見つからなくて、結局自分自身で見つけたのは大きくなってからだった。その石を持って過去に跳んで、自分の部屋に置いてきた。
そのすぐ後、彼女が焦った様子で取りに来て、先生がいなくなって。あの時は何も分からなくて不安だったけれど、あの事件の為に探していたんだろうと分かるようになった。
「殿内くん。」
「その節はありがとうございました。」
「え?あー、はい。」
小さくなった先輩にそれとなく尋ねた時、彼女は内緒だよー、とヘラヘラ笑いながらピースをした。嬉しくて、分かち合いたい人が沢山いるのに、それでも周りの人たちに言わないのは、言うことで変わってしまう未来が有ることを知っているから。先輩が秘密にしたがっているということは、まだ話すべき時では無いのだろう。
「野田くん野田くん。」
「、なんですか?」
「ミサキチに活きの良いジャガイモ貰ったんだー。ジャガバター食べよーよ。」
アナタが必死になって守ってきたことを知っているから、いい加減な所も許せちゃうんだよな。
「…それ、食べるんですか?」