◎ユッキーと私
「ユッキー、アリスストーンちょーだい。」
「…は?」
高等部校長室にて兄貴と世間話をしている時だ。ふらりとやってきたコイツは片手を出してこう言った。つーか今なんて言った?
「アリスストーンちょーうだい。」
「え…え?いや、待て待て待て。俺とお前は教師と生徒だから…な?まあどうしてもっつーなら…兄貴も睨むなよっ!」
「…」
新任だが、アリスストーンの交換がどういう意味を持つのかを知らない程、俺は噂に鈍感ではなかった。アリスストーンの交換はプロポーズなんて大層な言い方がされているけれど、要するに愛の告白なわけで。あれ、でもコイツアリスストーン作れないんじゃなかったっけ?
「ふあーぁ。」
欠伸をして目元を擦る。…こんな告白のされ方初めてだ。でも最近寝てないみたいなんだよなー。五十嵐も苦笑してた。
「…はあ、冗談はそこまでにしておけ。」
「え、冗談?冗談かよ!?」
「ええ?別に冗談でもなんでもないですけどー。アリスストーンちょーだい。」
「…お前ただ単に欲しいだけか。」
「そうだよーさっきからそう言ってるじゃーん。」
「「…はぁ。」」
なんだよ期待させやがって。兄貴と一緒に溜め息を吐く。
「俺のアリスストーンなんて何に使うんだ?つーかお前使えないだろ。」
「えー、お守り?」
「お守りぃー?」
お前が神なんかに頼るようなタマかよ、と不審に思いながら眉をしかめて見る。しかし不意に特力の生徒の一人が思い浮かんだ。
「もしかして野田に何か探し物させてんのお前か?」
この間タイムトリップから戻ってきた野田がいつもと違った溜め息を吐いていたのを思い出す。
「ありゃ、野田くん喋っちゃったー?まあ別に隠してないけど。」
「いや、アイツは何も言わなかったよ。」
タイムトリップを繰り返しているだけあって、情報の漏洩が未来に与える影響を誰よりも理解している。
「探しているアリスストーンがあるんだけど、なかなか見つからなくてー。」
「それに、俺のアリスストーンが必要なのか?」
「いーえ……もし間に合わなかった時の為の保険、かなー。」
「保険?」
「んー。」
もうこれ以上は話す気がないと顔を背けられる。くそ、意味分かんねえぞ。
けれど、コイツが柚香や五十嵐や杏樹達を本当に大切にしているのは明白。兄貴から聞いたコイツの役割。コイツが守ると決めた極僅かの人間の中には悔しいことに俺も居て。
垣間見た強さ。ヘラヘラとした笑顔に隠された本音や痛み。その全ては俺たちを守る為で。
そんなコイツを疑うなんて事出来る訳がなくて。少しでもその重たい荷物を分けて貰えたら、と思うとこんな些細な願い事は叶えてやりたくなるんだ。
「…ま、いいけど。」
「あんがとー。」
こんな事でお前の荷物が軽くなるのなら、いくらでも叶えてやるから。少しは俺を、俺たち周りを頼れ。守られてばかりじゃなくて、俺たちも守りたいんだからな。
アリスを盗むのは死期を早めるそうで。ならアリスを入れると死期を遅らせることが出来るのでは?というのが28巻。
別にユッキーは主にloveな訳ではない。loveに近いlike。一巳校長から大雑把に聞いてる。