久しぶりに影分身じゃなくて本体で教室に行くと、クラスメイトの音無さんと蜜柑が踊っていた。
完全な不意打ちをくらった私は指を指してゲラゲラ笑う。そんな私を呆れた目で見ながら棗ちゃんが来て、私の手を引いて隣の席に座らせた。
最近、棗ちゃんは私の行動を監視するようになった。別に掻い潜ることは容易いので問題はないが。今も私の分身は校内外を走り回っている。
5分もすると完全に飽きて、棗ちゃんに借りた漫画を読む。なんかじーちゃんがどうとか話が聞こえる。
「めでてー奴。」
あー、あれか。手紙のやつ。
「学園にいる大人で信用できる奴がいると思ったら大間違いだ。」
確かナルちゃん怪我するよねー。私はどうしようか。手助けするのは簡単。でも。
「特に俺やお前みたいな目をつけられた奴にとってはな。」
必要な、ことなんだよね。蜜柑が、此処で生きる覚悟の為に。
棗ちゃんはそのまま立ち上がって教室を出て行ってしまった。少し思案したのち、後を追うことにした。この話、流架は棗の側には居られないから。
蛍に捕まった流架から視線を頂き、ヘラリと笑って教室を出た。
あれから夕食を棗ちゃんと二人で取り、9時過ぎまで棗ちゃんの部屋にお邪魔した後、ナルちゃんの部屋に向かう。暗くなった室内からナルと蜜柑の話し声が聞こえ、声を潜める。
「じーちゃんて呼んでいい?」
「…………"じーちゃん"はちょっと…」
「……」
「えー、だって僕まだ20代だよ!?」
花のお兄さん!なんて頬を膨らませるナルに笑いが止まらない。ちょ、腹筋痛いっ!
「んー…、じゃ、お父さんてのはどう?」
ぶはっ
いかん、思わず吹き出してしまった。
必死に声を押し殺し、ナルを"お父さん"と呼ぶ蜜柑が寝付くのを待つ。
「……ユキ先輩。」
バレてた。そりゃそうだ。そっと扉を開け、中に入る。ベッドからそっと起き上がったナルと目が合う。…すごいパジャマですね。因みに私はスウェットにTシャツです。
手招きし、部屋をかえる。
「怪我。治しにきてあげたよー。」
「…ユキ先輩、知ってましたね。」
椅子に座らせ、上半身を裸にさせる。左腕を中心に、チャクラを練って意識を集中させ、治療を始める。
少し拗ねた顔をしながら確信を持って聞いてくるナルにニヤニヤと笑う。
怪訝な顔をするナルに笑みを深める。
「いやー、さりげなく蜜柑のお父さんポジションGetとはやるね!ユッキーに聞かせてやりたいよ!」
というか、今度会いに行ったら話してあげよう。
「っ!いや、あれはその場の勢いというか…!」
真っ赤な顔で言われても説得力は皆無だよ。
「10年以上片思いしてんでしょ?いやー、若い若い。」
「…」
柚香ちゃんも罪な女ね!!ニヤニヤしているとナルが突然立ち上がり、私を椅子に押し付けた。
「…"俺"だっていつまでも子供じゃないんですよ。」
気持ちが高ぶっているのか、ナルからフェロモンが溢れ出してくる。
私の頬に手を滑らせ、髪を撫でる。
「身体だって、もう先輩よりも大きいよ。」
真剣な顔をするナルから、目が離せない。
思わず、手を伸ばして−…
傷口を握った。
「いっっ!!!!?」
ナルは踞った。痛みで声が出ないらしく、涙目で恨めしそうに睨んでくる。
「はいはい、大人しく治療されなさーい。」
立ち上がってナルを椅子に座らせる。腕に手をかざし、チャクラを練ると傷がみるみる塞がっていく。
「…先輩はズルい。」
ナルの拗ねた声に苦笑いが浮かぶ。
知ってるよ、私がズルいことくらい。色々な事から目を背けてきた。そして、今も。