鳴海Side
誘拐事件から3日。
昨日目を覚ました蜜柑ちゃんは大事を1週間ほど入院することになった。あの爆発に巻き込まれたはずの蜜柑ちゃんが、怪我を殆どしていなかったのは奇跡であった。それは、棗くんも同様だった。
激しい爆音、爆風が収まり、二人を見つけた時、二人の周り半径1メートル以外は黒焦げで、鉄片や木片が散らばっている状況だった。慌てて二人に近付くと、二人に目立った外傷は見られず、不自然な点といえば二人が水浸しだったことだろうか。
救助に向かった先生の殆どが不思議に思ったであろうあの光景は、僕と神野先生にとっては納得せざるを得ない光景だった。
三人がいなくなったと教師や生徒が慌てる中、ユキ先輩は静かに佇んでいた。あの子達に危険が迫ったとき、いち早く飛び出すのは先輩だと思っていたのに。誰よりも実力がある彼女だからこそ。
それでもただ佇んでいた彼女を不自然思っていたが、あの時既に彼女の本体は現場にいたのだろう。
本当に彼女には驚かされる。一体彼女は僕らの何手先まで読んでいるのだろうか。
−−−−
ガラリと病室のドアを開け、棗くんに宛がわれた個室に入る。開けられたままの窓から、風が入る。カーテンが捲れ、寝たまま未だ目を覚まさない棗くんと、椅子に座り、そっと棗くんの手を握るユキ先輩が目に入る。
「−…先輩、」
朝教室にいないと思ったら此処にいたのか。いや、もしかしたら運ばれてきてからずっと"彼女"は此処にいたのかもしれない。クラスメイトが不審に思わない程度に。
そういえばさっき医者に容態を聞いたとき、事件前よりも良くなっていると首を傾げていた。先輩、だったんですね。
先輩の伏せていた目と目が合う。ドクリと心臓が音を立てる。
「先輩、」
「…ナル。」
ふんわりと笑う"彼女"に熱が上がる。
あぁ、やっぱり僕は…
ボンッ
影分身の"彼女"は消え、後ろで扉が開いた。振り返ってユキ先輩と目を合わせる。
「ただいま、ナル。」
何も言わずに貴方が消えたあの日。何度後悔したか分からない。
「…お帰りなさい。」
何度でも言うから、だから必ず帰ってきて。
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ナルのターン。いつも事後報告で、心配さえさせてもらえない。
強いのは分かっているけど、それでも。