「あれ?ポンタじゃないか。」
「む?田沼か。」
弁当を持って教室を出て廊下を歩いているときだ。一階から外を見ると其処を歩いていたのは夏目ん家の猫だった。
「何やってんだ?こんな所で。夏目なら教室じゃないか?」
「夏目になど用はないわ。お前こそこんな所で油売っていて良いのか?」
「あ、いけね。さっきタキに呼ばれたんだった、じゃーなポンタ。」
「だから、名前覚える気が無いなら先生と呼べと言っておるだろうが!!」
ポンタが何か叫んでいたが気にせずに指定された下駄箱近くに行く。すると其処にはタキだけでなく夏目も居た。
「夏目。」
「田沼。田沼もタキに呼び出されたのか?」
「ってことは夏目も?」
「あぁ。」
苦笑する夏目に首を傾げながらタキを見ると、彼女は棚に身体を隠してそーっと顔を出して向こうを覗いていた。
「何やってんだ?」
「はは、あれは…」
「しーっ、静かに!気付かれちゃうでしょ!」
困ったように笑う夏目と何時になく真剣な面持ちの滝に疑問を覚えながら、俺もそーっと下駄箱から顔を出した。
「なんだ、ポンタじゃないか。」
「そう、そうよ。けど猫ちゃんだけじゃないのよ!」
「はあ?あ、」
暫く見ていると、ポンタに近付く一人の女子。彼女は一言二言話すと裏庭の方へと向かい、ポンタも隣を歩いて行った。
「あれって噂の転校生か?」
「噂ってなんだ?」
「あー、なんだったかな。俺、そういうのあんまり興味無いから。」
「私知ってる!笑顔が暖かくてー、癒し系でー、優しくてー、大人っぽくてー…」
「…なんか大分私情が入ってないか?」
「はは。」
指を折りながら次々と出てくる転校生の噂らしきもの。夏目は苦笑しながらタキに声をかける。
「ほらタキ。先生達行っちゃったけどいいのか?」
「え?あっ!た、大変!行くわよ2人とも!」
一人と一匹の後を追うタキを見て、俺と夏目は顔を見合わせて少し笑った。