冒険譚とジャーファル
「シン!!」
書類を両手一杯に抱え、白羊塔の廊下を早足で歩いていた時の事だ。仕事をしている筈の王が部屋から抜け出して目の前を歩いているではないか。
「あんた仕事はどうしたんですか!!…って、あれ?」
書類を崩さないように素早く廊下の隅に積み(随分と慣れてしまったものだ)、急いでその後ろ姿を追った。しかし、肩に手を置いて振り向かせたその顔は、見慣れた王のものではなかった。
「ジャ、ジャーファル様…」
「あなたは確か武官の…その格好はどうしたんです。」
「は、はい!あ、あの、シンドバッド王が…」
「一体どういう事ですか!!」
ドンッと勢い良く机を叩く。それに狼狽える事もなく静かにペンを置いたシンは小さく首を傾げた。
「どうもこうもないぞ?彼は丁度今日は休みでな。今度のハロウィン衣装の試作品を着てみてもらっただけだ。」
「だから!それがどうしてあのような衣装になるのです!?ユキから聞いた候補の中にはシンなんかありませんでしたけど!?」
「なんかとはなんだ、なんかとは。」
ジロリと睨めばシンは肩をすくめる。しかしそれに懲りる事は無く、未練がましく言い訳を始めた。
「そもそも、衣装は各地に伝わる物語に纏わるモノをかたどって良いのだろう?」
「はあ。」
「ならば俺自身でも問題ないだろう!」
「…」
自信満々に翳されたのは、シンドバッドの冒険書。金になるからと書き続けているその冒険譚は、王曰わく多少色を付けて執筆しているらしい。
「あ、そうだ。お前の衣装も用意してみたんだ。そろそろ…」
コンコンと小さくノックが聞こえ、ガチャリと扉が開く。入ってきたのはユキだった。
「失礼しますぅ。」
「おぉ来た来た。ほらジャーファル、着てみてくれ!」
ユキから渡された衣装らしきものをピラリと広げる。それはいつか見た冒険譚に描かれていた挿し絵にどこか似ていて。
「…」
「ここのカーブ具合が難しかったんですー。」
「…何故ツノが生えているのです?」
「え?だって冒険譚のジャーファルくんですもん。」
「…」
「ごめんって。」
小さく手をあわせたシンを見て、小さく溜め息を吐いて肩を落とした。
シンドバッド(+八人将)なりきり変身セット。戦隊モノとかと同列なイメージ(笑)
当然禁止になりました。5/6
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