出逢いは幸運
「小松田さーん」
「ただいま帰りましたぁ」
「乱太郎くん、きり丸くん、しんべヱくんお帰りなさぁい。そちらのお二人は?え、もしかして南蛮の人?」
事務と書かれた名札を付けた小松田と呼ばれた青年はナルトとシカマルに視線を向け、特にナルトを見て首を傾げた。先ほど貿易商の息子だというしんべヱからも聞かれたが、南蛮とはポルトガルやスペインの事だったろうか。金髪青目じゃそりゃ見慣れないかと納得しつつ、そういう訳じゃ無いってばと軽く否定をすれば、そうですかぁとなんとも軽く頷かれた。
「実はかくかくしかじかでして」
説明とも言えない説明をする乱太郎に思わずナルトとシカマルは視線を向けた。それでわかる訳あるかと呆れたところで、
「そっかぁ、大変だったねぇ。怪我が無くて良かったよー」
なんともあっさりと納得した…納得した?小松田に思わずナルトとシカマルの2人は視線をうつす。
「じゃあ入門表にサインをお願いしまぁす」
それでいいのか。いや、良い訳はないがとりあえずナルトは筆を受け取り平仮名で名前を書いた。その筆をシカマルに渡し、シカマルも同じく平仮名で書いた。外来語をカタカナ表記するようになったのは確かこれくらいの時代だ。
此処の常識が未だ分からないならば、少しでも違和感を与えない方が今後も動き易いだろう。
「なるとさんとしか丸さんですねぇ。ありがとうございます。乱太郎くん達は今から食堂に行くの?」
「どうしよっか?」
「一応土井先生に報告はしといたほうがいいんじゃないか?」
「そうだね。私行ってくるよ」
「じゃあ僕たちが食堂に案内しますね!」
「おばちゃんのご飯本っ当に美味しいので楽しみにしててくださいね!!」
きゃらきゃらと笑いながら食堂へと向かう4人に乱太郎は手を振り、自身も土井先生のところへ向かおうと踵を返そうとすると小松田さんはポツリと呟いた。
「斉藤タカ丸くんとはまた違った髪の色だねぇ」
「お父さん譲りなんだそうです。すごく綺麗ですよね!」
「そうだねぇ」
じゃあ土井先生のところに行ってきます!と今度こそ乱太郎は足を早めた。
ーーーー
乱太郎を待ってから夕飯にしようと4人は席に着いて話を続けていた。時間がまだ早いからだろうか、パラパラと訪れる他の忍たま達もナルトとシカマルを見て不思議そうな顔をするものの、それだけだった。
これが忍として無関心を装っているだけなら良いのだが、それだけでも無さそうなのが何とも心配である。
しばらく視界の中で情報を得つつ、きり丸としんべヱから話を聞く。周りの目があるため、念のため学園についての話は此処では聞かない。内部を探っていると勘繰られても面倒だからだ。アルバイトの話、美味しい団子屋の話、オススメのうどん屋の話、近くの町の話など、欲しい情報はいくらでもある。
そうして4人で過ごしていると、入り口からひょこりと乱太郎が顔を出したのにきり丸が気が付いた。今日は奥の方に座っているので分かりづらいのだろうと手をあげて名前を呼んだ。
「乱太郎ー!」
「あ、きり丸!土井先生あそこです!」
「わかったわかった引っ張るな」
きり丸はそのまま立ち上がり、シカマルの横に座った。しんべヱの両隣に乱太郎と土井が座れるように席を譲ったのだ。その自然な気遣いにシカマルは口角をあげ、頭に手をポンと置き軽く一度撫でた。きょとんとしてシカマルを見上げ、その後気恥ずかしいのか、少し拗ねたようにきり丸は顔を背けた。
やがて席までやってきた乱太郎と教師たる土井を見て、ナルトとシカマルは腰を上げたが、土井がそのままでと押し留めて前の席に座った。
「この度はこの子達がお世話になりました。一年は組担任の土井といいます」
「あー、こちらこそ突然押し掛けてしまい申し訳ないです。俺がシカマルで」
「ナルトだってば」
互いに軽く頭を下げ、自己紹介をする。その様を黙って見守っていた乱太郎きり丸しんべヱだったが、終わると共に堰を切ったように各々土井に向けて話始めた。
「あの時のナルトさんとシカマルさんは本当に強くてっ」
「ぼくも頑張って走ってたんですけど疲れちゃって無理だったんです!」
「隠れてたのに声出したからか見つかっちゃって、危ないところだったんですから!」
「だぁーー!分かった分かった!一度に話すんじゃない!!」
三人に詰め寄られた土井は三人を宥めながら内容を確認しているようだ。各々から話を聞いて、事前に乱太郎から聞いていた話と相違ないか、より詳しく本人達の口から聞くことが大切なのだ。
ナルトとシカマルは三人の話を聞きながら時々口を挟みつつ、身振り手振りで説明をする様子を微笑ましく思う。この殺伐としているであろう時代にここまで子供らしくいられる環境はとても貴重だろう。
おおよそ話を聞き終えると、土井は一つため息を吐いて改めてナルトとシカマルを見た。
「ナルトさん、シカマルさん。本当にありがとうございました」
その声は三人に悟られない程度に真剣で、真摯なものだった。この時代の厳しさを垣間見たような気がして、謙遜するのはやめた。
「土井殿のお気持ち、しかと頂戴しました」
ナルトの雰囲気が変わったのが分かったのであろう乱太郎きり丸しんべヱはきょとんとした。その様子にシカマルは口角をあげ、再びきり丸の頭にポンと手を置いた。
「ま、怪我が無くて良かったなって話だ」
相変わらず三人は不思議そうな顔をしていたが、顔を見合わせて気恥ずかしそうに笑った。そんな三人を優しい瞳で見ながら、土井は再びナルトとシカマルに向き合った。
「学園長にも許可はいただいておりますので、本日はどうぞ一泊していってください」
「「「やったーー!!」」」
「押し掛けておいてなんなんですが、本当にいいんすか?」
「俺らぜってぇー怪しいと思うってば」
「あはは、正直なところこの三人にはよくある事でして。一応、今から学園長に御面会いただけますでしょうか?」
「「「えぇーー!」」」
「私たちもっとナルトさんとシカマルさんとお話ししたいですー!」
「学園長先生話長いんだもんな」
「僕お腹空いたぁー」
「お前らなぁー!」
はぁっとため息を吐きながら肩を落とした土井に思わず苦笑する。
「あんまり先生を困らせるんじゃねーぞ!」
「めんどくせーがこれも道理ってやつだ」
アカデミーの問題児2人が何言ってんだって頭の中でイルカ先生が叫んだ気がするが気のせいだ。
「じゃあ、夕食は待っててもいいですか?」
「もっとバイトの話とか聞きたいっす!」
「うぅ〜、ぼくも我慢する!!」
三人の真っ直ぐで強い眼差しに土井は思わずたじろいだ。普段そんな真剣になる事なんかないくせに、と思わず胃に手を当てる。
「わかったわかった!終わったらすぐお連れするから」
「「「わーい!!」」」
「遅かったら我慢せずに食べるんだってばよ」
「「「はーい!!」」」
キリキリと痛む胃を押さえながら、土井はナルトとシカマルを食堂より連れ出した。ナルトはまた後でなと手を振ってくれたので、三人は各々手を振り返した。
そして姿が見えなくなった直後、乱太郎が声をあげた。
「そうだ!いい事思いついた!」
「ご飯の事!?」
「違うよしんべヱ」
「しんべヱ、待つって今決めたばっかだろ?」
「だってぇー、凄く良い匂いなんだもん」
「もう聞いてよ!」
よだれをダラダラと垂らすしんべヱから少し距離をとりつつ、先ほど思い付いた名案を2人に話した。
「ナルトさんとシカマルさんのお姉さんのこと、先輩達に聞いてみようよ!」
「行方不明だっていう?」
「そうそう!」
忍術学園までの道中、ナルトとシカマルから様々な話を聞いたのだ。迷子なこと。二人は家族であり友達であること。ナルトさんは両親を知らないので南蛮の人かは分からないこと。そして、お姉さんを探して旅をしていること。
目をキラキラとさせる乱太郎に、きり丸は思わず険しい顔をしてしまう。
「けどさー、実際厳しいと思うぜ?女の人が行方不明なんて生きているかも…」
「きりちゃん!」
この時代、戦争もあるし山賊もいる。人身売買だってある。女子供が1人で生き抜くことは本当に難しいのだ。それを身をもって知っているきり丸は思わずそんな本音が漏れてしまった。
「まぁまぁ、まだ時間あるし聞いてあげようよ」
「あげる!?…わかったよ。俺だってその人が無事であればいいと思ってるんだ」
「きり丸…」
「なら決まり!とりあえずそれぞれ委員会の先輩に聞いてみようよ」
各活動場所に行けば誰かしらは居るだろう。六年生の先輩に聞けば知ってる人も居るかもしれない。
「えーっと、どんな人なんだっけ?」
「ナルトさんとシカマルさんって何歳くらいかな?六年生の先輩方くらいだよね?」
「じゃあそのお姉さんなんだから利吉さんくらいかも」
「名前はユキさん」
「見た目は似てないって言ってたね」
「結構のんびりとした性格で」
「少し危機感無く見えるけど、実際はそうでもない」
「運動神経は良いって」
「お料理が上手」
「見た目が分からないんじゃ探しようがないぜ」
「たしかに…」
「でもこの辺に居るかもって言ってたから、もしかしたら先輩達の知り合いかもしれないし」
2人が姉の話をする時、元々表情豊かなナルトは少し穏やかな表情で、シカマルは苦笑しつつも笑みを浮かべていた。その表情はとても大切だと語っているかのようで、聞いていてこちらまで笑顔になってしまったくらいだ。
「でもきっと優しい人だよ!」
「そうだね。お二人があんなに嬉しそうに話す人だもんね」
「ま、聞くくらいはタダだしな」
乱太郎きり丸しんべヱの三人はうんと頷いて拳をつくり右手をあげた。
「それじゃあ先輩方に聞いてからまた此処に集合ね!」
「「「おー!!」」」
こうしてナルトとシカマルの探し人ついては学園内の公然の情報となるのだった。
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