出逢いは必然
自身の世界を飛び出してどれほど経っただろう。
「あー…」
「何処だ此処」
時空忍術による世界の移動。辺りの気配を探りつつ、互いに五体満足その他諸々が無事である事を確認した後に現状把握するために周りを見渡した。
「森っつーよりも山、だな」
「獣の気配は無いが…」
此処から少し離れた場所で、小さくガサガサと木の葉を踏みしめる音が聞こえた。
人数は三人…とバラバラだが五人。前者は子供で後者は大人。履き物も俺達のモノとは違うようだ。
取り敢えず行ってみるかとシカと顔を見合わせて、木の上に飛び上がった。
「うぇぇぇえんっ!待ってよぉ!」
「もう少しだ頑張れよしんべヱ!」
「しー!二人とも声を抑えて!見つかっちゃうよ!」
「おいっ!」
「居たぞ!!こっちだ!!」
「うわぁぁぁあっ!!」
「見つかったー!?」
「走れ!逃げるぞ!!」
「待ちやがれぇーー!!」
ガサガサと走り去る音に耳を傾けながら、シカが俺に指示を仰ぐ。
「…どうする?」
「このまま此処に居ても仕方ねえしな。あの餓鬼共に道でも聞くか」
「了解」
どこに行っても俺が隊長でシカは副隊長っていう事実は抜けないんだな、と感心しながら、俺達は逃げる餓鬼共と野党の間にわざとらしく音を立てて飛び下りた。
「正義の味方参上だってばよ!!」
「はー、子供相手に大人気ない。めんどくせぇけど、俺達が相手だ」
「「「えっ!?」」」
鬱陶しく声を荒げて突進してきた野党を一瞬で伸せば、逃げていた餓鬼共が振り返って俺達の様子を窺っていた。その少し警戒する瞳に表仕様の笑みを浮かべる。すると餓鬼共は安心したように肩の力を抜いた。
「大丈夫だってば?」
「怪我ねぇか」
「「「はーい!」」」
手を挙げて綺麗にハモった三人に内心苦笑しつつ、餓鬼共の身なりを確認する。
小袖の生地は麻だろうか。木綿が庶民に流通するのはいつの時代だったか。
「ありがとうございました!」
「助かりましたぁ!」
「お兄さん達強いんすね!」
「礼なんかいらねぇってば!」
年は10くらいだろうか。警戒心の薄い餓鬼かと思えば、随分と切り替えが早いというか場慣れしているというか。兎に角さっきまでの命の危機はすっかり忘れたようにニコニコしてやがる。
「俺達ちょっと迷っちまったみたいでな。街までって結構遠いか?」
「此処からだと半日はかかりますよ?」
「お兄さん達迷子なんだぁ」
「方向音痴っすか?」
「きりちゃん!」
スカーフをした餓鬼が平然と言ってのけるのを眼鏡の餓鬼が止める。それを傍目に、一番小さい餓鬼がにぱっと笑った。
「あ、そうだ!」
ポンッと手を叩くチビに全員で目を向ける。
「もう日も暮れますし、学園に泊まっていかれたらどうですか?」
「あーそれいい!」
「学園ってなんだってば?」
「僕ら、忍術学園の忍たまなんですー!」
忍術学園?忍たま?なんだそれは。とりあえずここでの表反応は…。
「ええ!?お前らそんな小さいのに忍者なのかよ!?」
「「「そうでーす!!」」」
「マジかよ…」
こんなに忍ばない忍は表のナルトくらいかと思ってたぜ、とシカが呆れているのが目に見える。うるせーよ。
「じゃあ俺ら行くのはマズくねぇか?」
「そういえばそうだってば。忍者の学校ってぇ、場所とか内緒なんじゃねぇの?」
「うーん、基本的にはそうなんすけど…」
「お兄さん達には助けて貰ったお礼もしてないですし」
「食堂のおばちゃんの料理はすっごく美味しいんです!」
「そうっすよ!まぁ土井先生は胃が痛いって泣くかもしれないけど」
「あはは、一晩くらい大丈夫ですよ!」
だらだらと涎を垂らす餓鬼、悪びれる様子もなくケロリとしている餓鬼、それに苦笑しつつ意志を曲げない餓鬼に顔が引きつる。お前ら本当に忍か?不用心すぎる。これが俺でも見抜けないような演技なら脱帽だが。
「それに、お兄さん達なら大丈夫です」
「…それはなんでだ?」
「うーん、強いて言うなら…」
「「「は組の勘!!」」」
その根拠のない、だけど確かなのだろう餓鬼共の直感にニヤリと笑う。何だかんだ言って、これほど真っ直ぐな奴らって嫌いじゃないんだよな俺。
「それなら一晩だけ世話になるってば!」
「そーだな、すっかり日も暮れそうだしな」
はーい!と元気良く返事をする餓鬼共にニカッと笑う。辺りはいつの間にかすっかりオレンジ色に染まっていて。
「あ!お名前聞いてもいいですか?私は一年は組猪名寺乱太郎です!」
「同じく摂津のきり丸っす!」
「福富しんべヱでーす!」
「俺はうずまきナルト!!」
「はー、奈良シカマル。ま、宜しく頼む」
ユキと再会するまでのほんのひととき、コイツ等に付き合う事にしたのだった。
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