出逢いは奇遇
乱太郎きり丸しんべヱと別れたナルトとシカマルは土井の後に続き建物を出た。
日が暮れ始め、夕焼けが眩しく三人を照らした。何処からか体育委員会の声やら生物委員会の声やらが微かに聞こえてくる。また何か問題でも起きているのだろうか。だがこれもまた学園の日常なのである。
学園長の居る庵は少し距離がある為、時折生徒たちとすれ違う。彼らは土井を見て挨拶をし、ナルト達を見て不思議そうな顔をした後軽く頭を下げていく。
アカデミー卒業前後のクラスメイトやら表の自身やらを思い浮かべると、ここの生徒達は随分と行儀が良い。問題児代表だったことは振り返らない。頭の中でイルカ先生が嘆いたとしても知らないふりだ。
「随分とあの子たちが懐いていて驚きました」
「あー、そうですかね」
「ええ。特にきり丸があのような態度をとるのは珍しくて」
気恥ずかしそうに、少し拗ねた表情をしてシカマルの撫でる手を受け入れていたきり丸を土井は思い出す。あの子はなかなかの意地っ張りで、土井に対しても先生と生徒という枠組みを外す事はない。まぁ、一般的な先生と生徒の関係かといえばそれよりも幾分近いとは思っているが。
そんな稀な姿を今日一日の付き合いであるシカマルが引き出したのは何とも複雑な訳で。
「…俺たちが幼い頃、姉にやってもらったことなんすよ」
「え?」
「あれ、あの子らから聞いてませんでした?俺たちがこの辺りに居た目的」
「あ、いえ…お姉さんを探していらっしゃるとは聞いていますが…」
「ええ。姉とはいえ俺たちに血縁関係は無いんですけど」
土井はさり気なくシカマルとナルトを見比べた。確かにこの二人に血縁関係は無さそうだ。容姿も似ていないし、性格も陽陰の如く正反対に思えた。そして俺たち、という事は姉君も姉のような存在、という事だろうか。
「すぐに迷子になる人なんで、俺らが見つけることにしたんですよ」
迷子と聞いて三年生の方向音痴コンビが頭に浮かんだが振り払う。
此のご時世、行方不明となった女性が無事である確率はどれほどであろうか。だけど、シカマルの慈愛の籠った言葉を聞いて、土井はどうかその人が無事であることを内で祈った。
訪れた庵では学園長と教師らしき男が一人待っていた。
円座を勧められナルトは胡座をかき、シカマルは正座をして座った。学園長は大川平次渦正、教師は山田伝蔵と名乗った。ナルトとシカマルは名前だけを簡潔に名乗った。
「この度は学園の生徒が世話になった」
学園長が頭を下げるのと同時に、側に居た山田と土井も頭を下げた。それを見て呑気そうにナルトが笑った。
「こっちこそ助かったってば」
「土井先生より話を聞いたが、何やら人を探しているとのこと。何か情報を提供できるやもしれん。もしよろしければ詳しく話をお聞きしたいのじゃが」
ナルトとシカマルはわざとらしく顔を見合わせた。
「それは助かるけどさぁ、爺ちゃんに何か得でもあるってば?」
ナルトの随分と明け透けな物言いに土井はぎょっとした。無邪気に尋ねるナルトに学園長は穏やかに笑みを浮かべたままだ。
「得もなにも。お主たちと敵対はしたくないしのぉ」
「ふ〜ん…」
思わず学園長とナルトを見比べる。
その探り合うような雰囲気の二人に、土井は自身がナルトとシカマルを然程警戒していなかった事に気が付いた。彼らは六年生と同じくらいの年頃であるが、盗賊くらいは簡単に伸す事ができる実力を持っている。しかし彼らの雰囲気がなんとも緩く、緊張させない様子で自然と気を抜いていたのだ。
学園長とナルトはしばらく見合った後、ニカッと互いに笑った。
「助かるってば!」
「なに、お安い御用じゃ」
あまりに呆気なく霧散した空気に、座っていたにも関わらずコケる。いいのかそれで。山田先生は小さく息を吐いてから土井を嗜めた。
「とはいえ、その心配は杞憂だろーけど」
「なぜ、と問うても良いかの」
片眉を上げた学園長にシカマルが苦笑を漏らした。
「俺たちの探し人である姉は…まぁ随分と巻き込まれ体質なんすよ」
「ふむ」
ここに来るまでに多くの生徒を見かけた。中には声だけでもとても個性的なものもあった。だから、
「この学園の関係者なんじゃないかな、と期待してるんです」
穏やかに目を伏せたシカマルと笑みを浮かべたナルトを見て学園長はひとつ頷いた。
「して、その姉君の名前は?」
ーーーー
「伊作先輩いらっしゃいますか?」
「おや?乱太郎。今日は当番じゃないだろうにどうしたんだい?」
きり丸しんべヱと食堂で別れ、乱太郎は自身の所属する保健委員会委員長が居るであろう保健室を訪れていた。夕餉の時間なので行き違いにならなくて良かったと胸を撫で下ろし、目的である委員長の善法寺伊作に向かい合って座った。
穏やかに微笑みながら話を促す伊作に乱太郎は少し肩の力を抜いて話し始めた。
「実はかくかくしかじかでして」
「うーん、行方不明のお姉さんをねぇ…」
少し困ったように眉を下げた伊作に乱太郎もつられて眉を下げる。やはりきり丸の言ったように難しいのだろうか。だけど少しでもナルトとシカマルの力になりたいと思ったのだ。少しでも情報があれば知りたかった。
「お名前はユキさんとおっしゃるそうです」
「ユキさん?」
伊作は意外な言葉を聞いたとばかりに目を丸くして乱太郎を見つめた。その反応に乱太郎はキラリと目を輝かせる。
「伊作先輩ご存知なんですか?」
「…その探し人であるお姉さんであると確定した訳ではないけれど、ユキさんと聞いて思い浮かぶのは僕は一人かな」
どこか遠くを見るように視線を上に向けながら、彼女を思い出して当時を懐かしむ。そうして伊作は乱太郎に視線を戻し、にこりと笑った。
「その人はこの学園の卒業生。元くのたまだよ」
ぱちくり。
そんな乱太郎のまばたきの音が聞こえてくるかのような静けさが一瞬、部屋内に訪れたのだった。
学園長だけはナルシカの不自然さに気が付いています。山田先生はその様子を見て様子見中。何人か上級生は潜伏してますが、乱きりしんが人を連れて来るのは日常茶飯事かつ委員会の先輩を探しているとの事で代表者のみ。当然ナルシカは気付いてます。
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