村塾編@
ナルトとシカマルは変な奴だ。
ある日先生が連れてきたそいつ等は帰るところが無いらしく、一緒に住み始めた。ナルトは金色の髪をしてニカッと笑う元気な奴で、シカマルは黒髪を一つに纏めていて面倒臭がりな奴だった。
何が変な奴かっていうと、帰る場所が無いというわりに、いただきます、ごちそうさまの挨拶や、野菜の皮をむくなどの簡単な調理も難なくこなすし、字だって書けた。皆と同じようにはしゃいだりする(シカマルはしないが)癖にどこか一歩離れて周りを見ていて、ふとした表情が同じ年頃とは思えないほど大人っぽくて驚いた。
ある時聞いてみた。
「お前ら疲れねえ?」
「なんだってば銀時、突然」
「だってよぉ、ナルトはいっつも駆け回ってるし、シカマルは何だかんだ面倒見良いから勉強とか見てくれるだろ?疲れねえのかなぁって思ったんだよ」
「ふむ、確かにな。此処に来て随分経つとはいえ、まだ慣れないこともあるだろう」
「なんだよ小太郎まで…めんどくせぇ」
「ま、そのままで居るっつうならこれ以上言うつもりはねぇが、コイツ等バカの前で気ぃ張ってても俺は無駄だと思うぜェ」
「「誰がバカだ!!」」
「ぶはっ、本当にバカな奴らだな」
「はーぁ、全くだ」
「なっ…んだと…」
言い返そうと振り返れば、いつもの笑顔なんかじゃなくて苦笑が二人には浮かんでいて。
「だけどまぁ…」
その瞳が、松陽先生みたいに優しく細められる。
「お前らみたいなバカ、嫌いじゃ無いぜ」
そう言って再び笑った二人は、この時からほんの少し素を出すようになった。
「あれナルト、だってばよは?」
「そこかよ」
素を出すと言っても村塾の奴らと遊ぶ時は今までとなんら変わりがなかった。だけど家に帰ってからのナルトははしゃぐなんて事は無く冷静沈着になったし、シカマルは面倒臭がる事無く様々な知識を詰め込んでいた。
そんな生活が半年ほど続いた頃。それは突然の夕立だった。
空は明るいのに突然降り始めた雨。濡れた服を脱ぎ頭を振って家の中に入れば、縁側でナルトとシカマルが静かに目を閉じて座っていた。寝てんのかと思って一応声をかけてみる。
「何してんだナルト、シカマル」
「おい銀時!床がびしょ濡れだぞ!キチンと拭かぬか!」
「ヅラ、テメェの足元もな」
「ヅラではない桂だ!」
「だぁぁぁもう!うるっせぇなぁぁ!!」
俺達三人が傍らで騒ぐのも気にせずに、二人は静かに目を閉じていた。その研ぎ澄まされた集中力、ピリピリとした空気に自然と俺達の口数は減っていき、静寂が訪れる。濡れた身体だけじゃなくて、吸う空気さえもどこか冷たく感じる。
一歩、足を前に踏み出そうとした次の瞬間、ナルトが空を見上げ、シカマルが目を開いて呟いた。
「─────来た」
それが一体何だったのか、分かったのは瞬きを一つした後で。
ドサリという音。その音を辿るように庭に目をやれば、倒れた一人の女。
その人物が誰なのかなんてその時の俺達は全く知らなかったのだが、駆け寄ったナルトとシカマルの女を見る瞳が、触れる手が、愛しいと叫んでいた事がやけに印象的だった。
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