相手を知るには会話から

目が覚めたら大海原のど真ん中に居た私。そのままの状態で惚けていたら青い鳥がやってきて、半強制的に船へと連行された。甲板に集まった人達はどう見ても堅気の方々では無いようで、ぐるりと見渡した後に近寄ってきた男を見上げたのだった─────…




「お前、何者だよい。」

問われた言葉に首を傾げる。何者という問いには、どう応えたら正解なんだろう。
様々な世界を渡る私だけれど、根本的な思考回路は現代の日本で培われた物だし、身体能力の基は木の葉で必死に鍛えた賜物だ。

「おい、聞いてんのかよい?」
「あ、はぁ。そうですね…、何者と言われてもなんと応えて良いやら。」

まあ、素直に全てを話す必要なんて無いし腐っても忍。全てを嘘で塗り固めるよりも所々本当を混ぜることで、信憑性が湧くと言うし。

「…なら幾つか質問させて貰うよい。まずは名前は?」
「ユキです。」
「あそこで何をしていた?」
「特に何も。目が覚めたらあそこに居たので…」
「目が覚めたら?」

怪訝な表情をした彼に、そりゃそうだと内心で頷く。周りの強面なお兄さん達もざわりとして、顔を見合わせている。
今の私はこういう事は初めてでは無いから随分落ち着いているけれど、鳴門世界ではパニックになったものだ。

「家は何処だい?」
「…今は在りません。各地を点々としている身ですので。」
「海賊かい?」
「いえ。」
「それじゃあ海軍かい?」
「いえ。」
「…なら次だよい。さっきの身のこなしからして、アンタ戦えるのかい?」
「自分の身を守る程度には。」

その後も幾つか質問された。途中から黒髪上半身裸男やリーゼントが乱入してきたりしたけれど、当たり障り無く答えた。
年齢を聞かれた時は困ったので誤魔化したけれど。だって何才かなんて怖くて計算できないもの。

「…白ヒゲの船に居るっつうのに、随分と落ち着いてるみたいだねい。何かあてでもあるのかい?」
「(白ヒゲ?)あて……待ってる子達が居るので。」
「待ってる?」
「私がどこに居ようが関係無く、私の側に居てくれる子達です。いつ会えるかなんて分からないけれど、私は彼らが来てくれるのを待ってるんです。」

何日、何ヶ月、何年先か分からないけれど、ナルトとシカマルは必ず来てくれる。自分達の世界を捨てて私を選んだ愚かな、だけど愛しい大切な子。世界を越えても、ずっと一緒に居ると誓ってくれた愛しい子。

「…次で最後だよい。」
「はい。」
「アンタは、俺達の敵か?」

その言葉にゆっくりと口角をあげる。この表情をする度に暗部時代の部下は顔を青くしていた。

「あなた方が、敵ではないならば。」

全ては其方次第。私達に害があると判断したならば、全力で潰すだけだ。
前へ次へ
戻る<top>