乗っ取る

漸く私は此処に来れた!
くだらない毎日から漸く抜け出せた私は、落乱の現代にトリップした。神様から愛された私は色々なモノを貰ったわ。
そのうちの一つに忍たまの皆との関係性があるの。室町時代に行っても良かったんだけど、天女とかくのたまとかは嫌だわ。ガスや電気が無いのだって耐えられない。コンビニも無いし、田舎だから虫だって居るでしょう?折角可愛くしてもらったのに、お化粧も満足に出来ないなんて嫌。
だから、現代にした。学園に通っていたモブの関係を貰ったの。神様の話だと、皆の記憶のモブは全部私に塗り替えられているんだって。
別にそんなもの無くても良かったんだけど、忍たまの皆ってお互いに依存しあってるもの。少しでも学園に居たことにしておいた方が、皆も私に依存してくれるわ。所謂成り代わり主ってやつね。
キッカケは成り代わったからだとしても、愛されるのは私。

「転入生を紹介する。入ってこい!」

ガラガラと扉を開けて教室に入り、先生の横に立って礼をする。そして、最高に可愛い笑顔で笑いかけた。
案の定、クラスの大半が顔を赤らめる。ふふっ、やっぱり可愛くしてもらって良かった!モブには興味無いけれど、ちやほやされるのは悪くないもんね。
クラスを見渡せば目当ての人物を発見。三郎とハチ。雷蔵と兵助と勘ちゃんがいないけど、別のクラスかしら。仕方ないわ。二人が呆然と私を見る。ふふ、初対面ではこんな反応してくれないものね。やっぱり補正つけてもらって良かったわ。ハチに視線を合わせて愛らしい顔でにっこりと笑った。

「神山優芽です!宜しくお願いしますっ!」

何処から来たの?部活は何かやってた?どんな人がタイプ?面倒だったけれど一つ一つ答える私ってなんて優しいのかしら。モブには興味ないけれど、顔を赤くする男子に悪い気はしない。それに、ハチ達に私のこと知って貰わないといけないしね。

「彼氏はいるのー?」
「えっと、彼氏は居ないんだけど、ずっと会いたかった人達が居るんだっ!」
「ええ?誰ー?」

男子がデレデレとした顔で聞いてきた質問に、ニコッと笑い教卓から降りる。そのままハチに向かって一直線に歩き、机から一歩離れた位置で止まった。

「竹谷、くんだよね…?」
「あ、ああ…」
「君は鉢屋、くんでしょう?」
「なんで名前…」

目を見開いて見てくる二人に笑みを深める。

「忘れちゃった、かな…?」

少し寂しそうに、けれど笑みを深める。

「…ハチ、三郎。」

名前を呼ぶと暫くの沈黙の後、ぽつりとこぼすように私の名前を呼んだ。

「優芽…か?」
「っうん!そうだよっ!」

ハチが名前を呼んでくれた!

「やっと、会えたね!」

世界を越えて。
だから、私のことを愛してくれていいんだからね?