stalker's love song
住まいとしているマンションの4階と5階を繋ぐ踊り場でひゅうひゅうと情けない音で空気を漏らす肺と気管に日頃の運動不足を祟りながら少し上にある男の瞳をできるだけ鋭く睨みつける。顔の両側に付かれた肘と両足の間に差し込まれた男の膝が私の退路をすっかり絶ってしまっていた


「は、はは……なまえさん、こんなんでへばっちゃうんですか?可愛いなぁ……」
『犯罪ですよ、これ。離してください』


あくまで冷静を装うもどうにも嫌な汗が背筋を伝う。この一言で退いてくれ、頼むから


「犯罪……そうだよな、犯罪だよな……女性優位のH歴でのストーキング行為、一体どれほどの罪に問われるんだろうな……
でも、ここまでしたらもう後は何しても変わらないだろ?なまえさんもそう思いますよね?元よりなまえさんがこんな可愛い顔と厭らしい身体付きで俺を誘惑したのがいけないと思いませんか。俺なんかに思わせぶりな態度をとったなまえさんのせいですよ。しっかりご自分で責任を取って頂かないと」


ぶつぶつとおぞましい事を宣う男の厚く重い前髪からターコイズブルーの瞳が覗いた


『……ぁ、この間の────』


つい1週間ほど前に駅でボールペンを拾ってあげたひと……。そこまで気付くと男の言わんとしていることが嫌でもわかってしまい足先になんとも言えない気持ち悪さが走る


「なんにも気付いていないみたいですけど、俺の家ここの5階なんです」


『ひっ、』














こんなとき中王区は助けてくれないんだと脳の片隅で毒吐いた
17/29
prev  next