焼かれて焼かれて
華金、夜、神室町、韓来。
私は熱く熱せられた網とそこからのぼる煙を間に挟んで冴島さんと対面していた。
『……あの』
「なんや」
お肉を焼いてくれている冴島さんを正座して眺めていたのだが流石にもう気になりすぎて口を開いてしまった。
網の上に意識を集中させていても極道に似合わず優しい冴島さんは律儀に返事を返してくれる。
だが、だからこそ言いずらかった。しかし、ここで私が言わねば網の上の"奴"は報われない。
『ホルモン、焼きすぎでは?』
言った!言っちゃった!
足の付け根に乗せた両手はそれぞれ緊張から熱く湿っている。
「……ホルモンはな、」
『はい』
いつになく真剣な声色で話し出した冴島さんに思わず少し前のめりになって返事を返すと冴島さんも少し前のめりになった。狭い卓で額を突合すような格好で向かい合う。
「焼かれてこそ、価値があるんや」
『はあ……』
「焼かれて焼かれて、真っ黒なるまで焦げて」
『……。』
「油落として味磨くんや」
何となく深いことを仰っているのは分かるが、それにしたって
『焦げすぎでは』
また言った!また言っちゃった!結構はっきり言っちゃったよ!!!
「ええから食うてみい!!!」
『 熱 ぁ ゛! ! !』
東城会幹部の怒声と共に口に突っ込まれた焼きたて黒焦げホルモンに思わずリアクション芸人顔負けの叫びを上げてしまう。
「どや」
急かされるがままに熱の塊を咀嚼する。視界が滲んできた。
『……あ、美味しい』
焦げの苦味の中から感じた旨味に思わず零すと冴島さんは両腕を組んでうんうんと深く頷いている。
「俺らもホルモンと同じや……」
焼かれて黒焦げホルモンうんぬんかんぬん……。
冴島さんの心地良い声が耳から侵入して脳裏を擽るのを感じながら漸く熱を冷ました口内を舌で探る。あーあ、べろんべろんだ。
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