それから、のこと
昏い穴蔵から日に焼けていない青白い肌を引き摺ってにへら、と薄っぺらい笑みを浮かべる貴方が好きだった

ちょっとした悪巧みを私に打ちあけるとき爛々と光る貴方の瞳が好きだった

強く賢く優しく甘ったれな貴方が、好きだった











流魂街似て魂魄の揺らぎが相次いだ。揺らぎ、と称された其れはその数を重ねる毎に消失と名を変えそれから直ぐに悍ましく不可解な事件へと相成った


何でも流魂街の住民や死神問わず服やら斬魄刀やらを残し綺麗さっぱり霊圧から魂魄から何から何まで消えてしまうらしい、というのを最近十二番隊隊長と昇格した恋人が教えてくれた
初めは前例を持たない現象に消失した者を悼みつつも好奇心を秘めていた恋人の瞳に呆れるだけであったがじわじわと気道を塞いで行くように事が大きくなると如何にも何かが引っかかる


消失した地点に残されていた虚の気配、五番隊舎ですれ違う知人から漏れ出る知らない霊圧、少しづつ辻褄の合わない平隊士の雑談。明日には九番隊が調査へと向かうらしい


何かが可笑しい。それが何かは分からない、けれど何か大きなものが瀞霊廷を呑み込もうとしているような足場が不確かになる様な恐怖があった


嫌味な程に明るい月の光を浴びながら恋人の家を訪ねると、夜更けだと言うのに彼もまた寝付けないようでいくつかの書類を手にしながら出迎えてくれた


「ふふ、……やっぱりなまえだ」

『……こんばんは』

「ハイ、こんばんは」


嬉しそうにとろりと微笑む恋人とそれだけを交わして玄関を通り過ぎ寝室へと向かう喜助の後へついて行った。喜助はそのまま何時も通り敷きっぱなしにしてるのであろう煎餅布団に腰を下ろすと手にした書類をひょいと投げて私を下から真っ直ぐ見つめた。
その瞳をみて、私や護廷が思うよりずっとずっと自体は大きくなっていて、喜助だけがその本質に近いものを知り得たのだと直感した


「こんな夜更けにどうしてここに」

『……月の明るい夜だから、寝付けなくて』


胡座をかいて座る喜助の上に跨り蒲公英色の頭に顎を乗っけた。必然的に私の胸に顔を埋めることとなった喜助のくぐもった声が下から上がる


「ひゃー、ダイタンっスねぇ今日は」

『……喜助』


そのままの状態で名を呼ぶと喜助は私の腰に両腕を回して顔を少し上げた


「……はあい」


喜助の腕に導かれるままに腰を下ろし今度は私が下になって視線を合わせると甘ったれた滑舌とは裏腹に喜助の瞳は鋭く私を捉えた


『危ないこと、したら駄目だよ』

「隊長相手に言います?それ」

『ん〜、……危ないことはしても良いけど、死んでは駄目だよ』

「はは、ちょっと制約が緩くなった」

『譲歩したのだからしっかり守ってね、これは約束』

「そ……っスね、」


そこまで言うと言葉を濁すように喜助は私に口付けた。出来ない約束はしない。そう、そうなんだ。弱い心根が吐き出した涙を誤魔化すように私からも口付けた


羽織を落として、帯を解いて、瞳を合わせて、それから、それから、































喜助はずっと、帰ってこない。
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