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▼【子守歌は昨日まで】

◇狼さんの娘 ※7年生

我輩は、今。年のかけ離れた…、娘と言っても通用するくらい年の離れた生徒を腕に抱いて、眠ろうとしている。
自分自身が招いたにも関わらず、何の抵抗もなく擦り寄ってきたその生徒に危機感すら覚える。

あの父親はどんな教育をしているのだ。

「…君は異性と眠ることに抵抗はないのかね」

眠りに落ちる直前。小声で問うと、腕の中の彼女は照れくさそうに微笑んでいた。

「少しだけ、ドキドキします」
「………」
「寝相をよくしなきゃなとか、イビキかいちゃったりしないかなとか、沢山考えちゃうんです」

なんと忌々しい狼の娘だろうか。
心配するべきところは、そういったところではなく、そして「そういった」思考に陥らないこの生徒が忌々しくて仕方がない。

そして、その生徒のぬくもりに浸っている自分が今は何よりも忌々しい。

腕の中のものが眠りやすいようにしてから、我輩も目を閉じた。


(ドキドキと高鳴る心臓は、リーマスさんと眠る時には鳴らないもので)
(私のその高鳴りはスネイプ先生と一緒にいるときだけのものだと気が付いていました)

(それを言うことは恐ろしくて出来なかったのですけれども)

▼【減点反対です!】

◇狼さんの娘

「グリフィンドール――」
「減点反対です!」
「―%_減点」
「反対って言いましたのに!」
「最近の君はそう言えば減点されないと思っているだろう」
「……」
「図星だな。きちんと減点させろ」
「理不尽ですー!」

▼【ひつじ】

◇狼さんの娘

「……それは何かね」
「羊のぬいぐるみですよ、先生!」
「それは何かね」
「十二支のぬいぐるみですよー! 日本では12年周期で1年を決まった動物に当て嵌めるのです。
 今年は羊なんですよ」
「そしてそれを何故ここに?」
「地下牢教室の雰囲気が一気変わりましたね…」

驚愕の表情をする生徒に向かって、教授は手近のぬいぐるみを魔法で飛ばして彼女へとぶつけた。
ぬいぐるみが頭にクリーンヒットしながらも楽しげに笑う彼女に、スネイプは深く溜め息をついた。


(持って帰りたまえ)
(おひとつ差し上げますよー。可愛いですよ?)
(新年早々減点されたいとは)
(減点反対です!)

▼【真っ白の花束】

◇狼さんの娘 

子供。と言葉でねじ伏せてきた生徒はいつの間にか大人びていた。

同学年の生徒より、ひとつ飛び抜けて。
他人の死を見たその少女の、覚悟を決めた目を見る度に、思い出す、愛しき人。

「………その花は?」
「ホグズミートにお花屋さんが来ていて、可愛かったから買っちゃったんです!
 地下牢教室に置いたら、可愛いと思いまして!」

両手いっぱいに抱えられた花。
彼女の表情に似合う真っ白な百合の花。暗いこの教室に似合わないその白。

「ここには花瓶など無い。談話室にでも持って行きたまえ」
「そう思って、花瓶も持ってきてます」
「………減点覚悟で来たようですな」
「減点反対でーす」

やっぱり、似てなどいない。なのに。重なる面影は、それは。


(大人びてしまった彼女の瞳の中に見えるはずもない緑が見えて)

▼【ご用事なあに?】

◇狼さんの娘

「また来たのか」
「やることあります?」
「そう毎日大鍋を使わないし、魔法薬の材料もそう毎日はない。
 用もないのにそう何度も来るな」
「用事はありますよー。
 私は先生に会いに来ているんですーっと」
「…………」
「? 先生?」
「グリフィンドール5点減点。
 冗談は言葉を選びたまえ」
「えええ? 先生、怒ってます? それはちょっと冗談が過ぎたかとも思いましたけれども何割かは本気ですけど、スネイプ先生ー?」
「更に2点減点」
「えー」


(まだ恋の手前)

▼【年明け】

◇スネイプ

「寝ないのか? 先に寝ていたまえ。まだ終わらぬ」
「………信じられないわ。
 調合に張り切るのはいいけれど、そろそろ日付と時刻を確認したらどうかしら?」
「…………1月1日か。待て、寝るのか」
「先に寝るわ。おやすみ。先生」
「いや、我輩も寝る。待て、おい、待ちたまえ。寝る」

先に寝室に入っていった彼女は、軽く微笑みを浮かべていた。


(私の機嫌を損ねたと思ったら、貴方は優しくなるでしょう?)

▼【行き先は崖】

◇卿 †闇陣営夢主 ※7巻後

「あぁ、負けちゃいましたか…」

ヴォルデモート卿は死んだ。彼女は森の中で息を潜めながらそう呟いた。

「これから、どうしようかなぁ」

独り言が虚しく響く。これで残った闇の陣営も、やがて捕まっていくのだろう。
何人が服従の呪文に操られていたと、そう言うだろうか。それでも、それても確実に。闇の陣営は居なくなっていく。

彼女の未来は完全に無くなった。今まで他人の未来を奪ってきたツケだというのなら…。
立ち上がった際に、顔をしかめて脇腹を抑える。折れたあばらを治す気ももうなかった。

「卿…、すぐに私もそちらに向かいます…」

行く先が真っ暗だとしても、道はひとつしか残されていないのだから。


(未来を奪われた私達)

奪った相手を正義だとでも言うのか。

▼【笑った先】 

◇卿

「ヴォル様、ご復活おめでとうございます」
「…あぁ…貴様か。…まだ、いたのか」
「えぇ。ヴォル様がご復活したお姿を見ないわけには行きませんから。
 …どちらへ…?」
「ここにはもう戻らん。貴様も、どこか違うところへ行け」

彼は彼女に言った。彼女は淋しそうに微笑んでいるだけだった。

「………それは出来ませんよ。私は、ここに、この屋敷に縛られているのですから。
 では、お元気で。ヴォルデモート様」

リドルの屋敷にいたのは半透明の幽霊の少女。


(名も知らない、どこから来たのかもわからないが、ただ俺様を慕っていた幽霊の話)

▼【1秒前の私より勇気を出して】 

◇スネイプ先生

なんで。なんで、よりにもよって獅子寮嫌いの先生を好きになるだなんて。きっと酷く言われちゃうのなんてわかってるけど。

今日はホグワーツの卒業式。ここで告白しないと、絶対に後悔してしまう。絶対に。

「Ms.? いつまでここにいるのかね?」
「は、はい…。何だか…名残惜しくて」

タイミングはきっと今。地下牢教室に2人しかいない、今。

お願い。私、勇気を出して。


(私…スネイプ先生のことが――)

▼【夜を支配しているアイツ】

◇リーマス

「私、あれがとってもキライだわ」
「どうしたの? 急に」
「私、あれがキライなの。
 どうにか消し去る呪文でもないかしら。
 あれさえなくなれば、貴方も、リーマスも苦しまなくて済むでしょう?」

見上げた夜空に輝いている銀色のまんまるに向かって毒を吐く。


(何、嬉しそうにしているのよ)
(僕は本当に愛されてるなぁって思って)
(……愛してるに決まってるじゃない)

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