そして今、私はハリーくんとドラコくんとファングと一緒に禁じられた森の中にいました。

暫く罰則もあることを忘れていたのですが、その日は来て、森の中でユニコーンを殺す犯人を見つける。という罰則を与えられていました。
別の場所でハーマイオニーちゃんとロングボトムくんが、ハグリッドさんと一緒に回っています。

私達はもう、暫く歩いていました。

ドラコくんの表情も硬く、私達はユニコーンの血の跡が点々と続く獣道をおずおずと歩いていました。

「ファング…」
「ウォン!」

不安になって私はファングがいることを確かめながら歩きます。
小さく吠えたファングに寄りながら、私は前を行くハリーくんとドラコくんを見ました。

2人とも私を庇うように歩いていて、あぁもぅ、立派に英国紳士ですよ!

「見て……」

ハリーくんが何かを見つけました。

そこではユニコーンが倒れ、死んでいました。
身体全体が淡く純白に輝き、美しくはかなく悲しい死体が倒れていました。

私が息を呑むと、ドラコくんが私の様子を少し伺いました。

ハリーくんが1歩踏み出した時、何かズルズルと吸魂鬼が来るときのような滑る音が聞こえました。

真っ黒いフードの何かが私達に迫って、真っ黒い何かがは私達を見て!

「ゃ、きゃぁぁっ!!」
「――――リク!」
「ゃ、きゃ、だめ、ハリーくんが…!!」

悲鳴を上げる私の手を取り駆け出すドラコくんでしたが、私は立ち尽くしたハリーくんが気になり、止まってしまいます。

「リク!!」

ドラコくんが大きな声を出し、手を引かれて私は走り出します。後ろなんか振り返ることが出来ませんでした。
ファングのが私達の側を走っています。

(リーマスさん…リーマスさん…怖いよ…ッ)
「リク、走れ!

ずっとずっと走ると道にバッとハグリッドさん達の姿が。
息が上がって話せない私の変わりにドラコくんがハグリッドさんに説明します。
ハグリッドさんは視線を鋭くさせて弓を強く握っていました。

息を整え、私はハグリッドさんを見上げました。
落ち着いた時、私はハグリッドさんを不安で見上げていました。

「アレは…、その、吸魂鬼みたい、でした」
「よく吸魂鬼を知っとるな」
「……見たことは、ないですけど」

足音ならシリウスさんの所で聞いたことありましたから。
ぎゅうっとドラコくんの手を握っていたら、ドラコくんが急に私の前に出ました。

「?」
「足、ふらふらだぞ」

言われて、あぁ、本当ですね。と小さく返すとドラコくんがひょいと私の身体をおんぶしました。私は目が点。
隣で歩いていたハーマイオニーちゃんとロングボトムくんも目が点。

「ドラコくん!?」
「叫ぶな煩い」
「や、でも、あの!」
「煩い」

怒られて私は口を閉じます。

同い年の子(しかもこの世界に来る前は私の方が年上です)をおんぶするのは大変な事だと思うのですが…。

「…ハリーくん、無事ですよね」

怖くなってドラコくんに顔を埋めていると、いつの間にか私は眠ってしまったのです。
はい、お恥ずかしながら。

眠りながらもハリーくんの声が聞こえて、私は安心したのでした。

それよりアレは。なんだったんでしょう。
怖い、怖かったです。

でもあの黒い「何か」も綺麗なユニコーンみたいに、美しくてはかない気がしました。

目覚めた時に、それをハリーくんに言ったら「気のせいだよ」と言われてしまいましたが。


†††


私達が学生である以上、賢者の石が狙われていようと試験は始まります。

外がとっても暑いの中、筆記試験の大教室はさらに暑いものでした。

ですが筆記よりも心配だったのが実技試験です。

妖精の呪文の試験ではフリットウィック先生から、パイナップルを机の端から端までタップダンスをさせられるか、という問題でした。
私のパイナップルはタップダンスというよりも日本民芸みたいな動きになってしまいました。恥ずかしい…。

スネイプ先生は時間内に「忘れ薬」を作る。という問題でした。
これは私も自信があるのですが、スネイプ先生は顔をしかめていたので一気に不安になりました。
だ、大丈夫ですよね…?

最後の試験は魔法史でした。そして終了のベルが鳴ると皆さんで歓声を上げました。
もちろん、私も。

今はハーマイオニーちゃん、ロンくん、ハリーくんの3人で湖の近くの木陰に座っていました。

ハーマイオニーちゃんが答え合わせをしたがっていたのをロンくんと一緒にやんわりと断って、私はぼんやりと校舎を眺めていました。

こうしている間にも賢者の石は狙われているのでしょうか。
クィレル先生が動き出すのはいつなのでしょうか。
私には、わかっているようで、全くわかっていない事でした。

………でも、あれ…?

「あの、ハーマイオニーちゃん」
「どうしたの? リク」
「あの、ドラゴンの、あのノーバードって違法の卵でしたよね」
「えぇ、そうだけど…」
「そうだよ!!」

ここまで言ったあとでハリーくんが急に立ち上がって、ハグリッドさんの小屋の方に向かって、ずんずんと歩いていってしまいました。
私達が慌てて追いかけます。

「そうだよ、おかしいと思わない?」

ハリーくんが言います。

「ハグリッドはドラゴンが欲しくて堪らなかった。
 でも、いきなり見ず知らずの人間がたまたまドラゴンの卵をポケットに入れて現れるかい? 魔法界の法律で禁止されているのに、ドラゴンの卵を持ってうろついている人がいるかい?
 ハグリッドにたまたま出会ったなんて、話がうますぎると思わないか?
 どうして今まで気付かなかったんだろう…」

ハリーくんの心配そうな顔に私も不安になりながら、ハグリッドさんの小屋へ向かいました。

着くとハグリッドさんは小屋の外にいて、私達に手を振りました。

「よう、試験は終わったかい。
 お茶でも飲むか?」
「ううん、ありがとう。でも僕たち急いでるんだ。
 ハグリッド、聞きたいことがあるんだけど、ノーバードを賭けで手に入れた夜の事を覚えているかい? トランプをした相手って、どんな人だった?」
「わからんよ。マントを着たままだったしな」

ハグリッドさんはこともなげに言います。
じゃ、じゃあ誰だか全くわからない方から違法の卵を貰ったんですかっ?

ハグリッドさんは何の事はない『ホッグズ・ヘッド』では普通の事だといいましたが、私達は絶句して顔を見合わせます。


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