「えっと、あのその方とどんな話をしたんですか? ホグワーツの事とか…?」
私が聞くとハグリッドさんは考える素振りをしながら途切れ途切れに答えてくれます。
「話したかもしれん。
わしが何をしているのかって聞いたんで、森番をしてるって言ったな…。
そしたらどんな動物を飼ってるかって聞いてきたんで…あんまり覚えとらん…。
なにせ次々酒を奢ってくれるんで…うん、それからドラゴンの卵を持ってるけど持ってるけどトランプで賭けてもいいってな……でもちゃんと飼えなきゃ駄目だって。
だから言ってやったよ……フラッフィーに比べりゃ、ドラゴンなんか楽なもんだって……」
「それで、その人はフラッフィー興味あるみたいだった」
ハリーくんがなるべく落ち着いた声で慎重に聞きます。
ロンくんもハーマイオニーちゃんも心配そうに見上げます。
「そりゃそうだ…三頭犬なんて、たとえホグワーツだってそんなに何匹もいねえだろう?
だから俺は言ってやったよ。フラッフィーなんか、なだめ方さえ知ってればお茶の子さいさいだって。
ちょいと音楽を聞かせればすぐねんねしちまうって……」
ハグリッドさんは突然、しまった大変だという顔をしました。
私達はもうすでに校舎に向けて駆け出そうとしている所でした。
「お前たちに話しちゃいけなかったんだ! 忘れてくれ!」
私達4人は玄関ホールに着くまで、おしゃべりなんかしないで、走って行きました。
大変です。これで賢者の石を守る壁はなくなってしまったのです。
全部の障害の解き方はもう既にしられています!
「ダンブルドアの所に行かなくちゃ」
ハリーくんが言います。
「マントの人物はスネイプかヴォルデモードだったんだ……。
ダンブルドアが僕達の言うことを信じてくれれば良いけど…。……校長室はどこだろう?」
スネイプ先生は犯人じゃないです。
私はその言葉を飲み込んでハリーくん達に続きます。
その時、本を沢山抱えたマクゴナガル先生が私達を見つけました。
「こんな所で何をしているの?」
凄いタイミングです。あまり大きく出れない私達はマクゴナガル先生を見上げます。
「ダンブルドア先生にお目にかかりたいんです」
勇敢にもハーマイオニーちゃんが言いました。
「お目にかかりる? 理由は?」
マクゴナガル先生はとってもいい先生ですが、この秘密を話してもいいのか、考えてしまいます。
出来ることなら校長先生に言いたいです。
そこで私は映画で見て、知っている、あることを思い出しました。
たしか、今、ダンブルドア校長先生は…。
マクゴナガル先生が私が忘れていた映画のストーリーを話し出しました。
「ダンブルドア先生は10分前にお出かけになりました。
魔法省から緊急のふくろう便が来て、すぐにロンドンに飛び立たれました」
そうです。今は頼らなくてはいけない校長先生はいないのです。
ハリーくんも驚いた顔でマクゴナガル先生に食い下がります。
『賢者の石』という名前まで出しました。
ですがマクゴナガル先生は全然信じてくれてません。
それを横で聞きながら、私はハーマイオニーちゃんに小声で言います。
「ハーマイオニーちゃん、私、ちょっといいですか?」
「え!? こんな時にどこ行くのよ」
「私達だけじゃ駄目です、他の大人の方を呼んで来なくてはいけません!」
「リク、待って!」
ハーマイオニーちゃんが私を止めようとしますが、私はもう走り出していました。
問題の4階の閉ざされた扉とは逆の、地下牢教室の方に。
校長先生がいない今、頼れるのはハリーくんを不本意ながらも守ろうとしているスネイプ先生だけなのです。
緊張からか、はたまた他のなにからか、頭がじくじくと痛み出します。
それを振り払いながらも私は駆けていました。
私はあまりにも慌てて階段を駆け降りていて、その途中で人影に打つかってしまいました。
謝りながらも先に行こうとします。ですが、その人影にぎゅうと腕を捕まれてしまいました。
その人を確認した私の体に冷水を浴びたような恐怖がはしります。
「み、Ms.ルーピン、ど、どちらに?」
よりにもよって、クィレル先生に出会ってしまったのです。
私が恐怖に引き攣った笑みを浮かべ、「なんでもありません」と答えると、ほんの小さな痛みと共に視界が真っ暗闇へと変わっていきました。
あぁ、もう。私ってば役立たずな子です。
頭が割れそうな痛みに加え、吐き出しそうなくらいの恐怖で、私は全身から拒否反応を起こしていました。