私はリクと申します。リク・ルーピン。

1年と数ヶ月前に映画の中にトリップするというとんでもない事が起こり、ハリーくんと一緒に賢者の石を守るという本当にとんでもない事をしました。

今は長期休み真っ只中。私を養女にしてくれたリーマスさんに沢山甘えられる貴重な期間です。

「リーマスさん、焼き加減はこのくらいですか?」
「うん。大丈夫。美味しそうだね。
 今日はデザートも作ろうか」
「はい!」

ニコニコ笑うリーマスさんと一緒にキッチンに立って、今日の夕食の準備中です。

ホグワーツの学生は休み中の魔法を禁止されており、私はマグル式でしたが、隣のリーマスさんはひょいと杖を振っています。いいなぁ。

『こちら』に来る前は自分で作る。ということは基本的にしていなかったので、リーマスさんに教えられつつの料理です。
リーマスさんはとっても料理の上手な方ですので、私も見て覚えようと必死。

「リクちゃん、火、気をつけてね」
「は、はいっ」

リーマスさんはとっても優しい方です。
そして笑顔がとっても似合う方です。私の癒しです。

私もいつの間にかニコニコしながらテーブルに皿やナイフ、フォークを出していきます。
リーマスさんが魔法で料理を並べていきました。

美味しそうな晩御飯が並びます。2人で席について、私は両手を合わせました。

「いただきます!」
「えっと…イタダキマス。であってる?」
「ふふ、はい。あってますよ」

日本流挨拶いただきますをしながら、私は料理に手を伸ばしました。
うん、さすがリーマスさん。美味しいです。

すっかり料理を食べ終わって、リーマスさんとのんびりお話をしていると、コツコツと窓を叩く音がしました。
見ると、灰色のヨロヨロとしたお爺さんふくろうが窓の外にいます。

リーマスさんが立ち上がり、ふくろうを救出しました。

「ハリーくんからですかっ?」

休み前に何度も手紙を送りますと約束をしたのにも関わらず、私が何通も手紙を送ってもハリーくんだけからはお返事が返って来てはいませんでした。
最初は無視されているのでしょうか。と不安になっていましたが、ハリーくんに限ってそんなことありません。
これは何かあったに違いありません!

だから私はひょこっとリーマスから渡された手紙を見ました。が、リーマスさんは首を左右に振りました。

「ううん、ウィーズリーくんからだよ」
「ロンくん! この前のお返事でしょうか」

手紙を開くと、ロンくんの文字が目に入り、そして内容は監禁されているらしいハリーくんを助けに行く。との事でした。
またまた映画の内容を忘れていました。そうです。ハリーくんは今、軟禁状態だったんです!

「…ハリーくん、一緒に住んでいるマグルさんの前で魔法を使ってしまったんですって」
「え? 大丈夫なのかい?」
「今、ロンくんが、マグルさん…ダーズリーさんからハリーくんを助けに行くって、
 手紙のお返事が来ないのもそのせいだろうからって」

ハリーくんがそんな事になっていたなんて。私、知りませんでした。
ションボリと肩を落としていると、リーマスさんは優しく私の頭を撫でてくれました。

「ハリーなら大丈夫だよ。ジェームズとリリーの血を受け継いでいるんだから」
「はい…」

……そういえばロンくんが空飛ぶ車に乗ってませんでしたっけ。あれって違法なんじゃ…。

「どちらかというとハリーくんを救い出す方法の方が心配です…」
「……また暫くしてからウィーズリーくんの返事を待とうか」
「はい」

私が頷くと、お爺さんふくろうがポトリとテーブルの上でこけました。
かなりびっくりしてふくろうを抱き上げます。

「その子、あまり使わない方がいいかも知れないね…」
「多分ロンくんの家のふくろうさんですよ。たしか、エロール?」

ホーとエロールが鳴きました。ぎゅうと抱きしめて、彼にお水をあげます。

すると開いた窓からまた別のふくろうが入ってきました。
そのふくろうは手紙を落とすと、またバサバサと飛んで行きました。とっても忙しいみたいでした。

「リーマスさん、ホグワーツからです」
「来年の教科書リストかな? 一緒に見よう」

リーマスさんの座るソファの隣に腰掛けながらホグワーツの手紙を開きました。

新しい教科書を見ると、基本呪文集1冊と、ギルデロイ・ロックハートの本がなんと7冊もありました。

私は眉をひそめます。忘れていました。今年は「秘密の部屋」でした。ロックハート先生が来るはずです。
リーマスさんが苦笑していました。

「次のDADA(闇の魔術の防衛術)はロックハートファンの魔女かな?」
「いいえ…、ロックハートさん自身ですよ。
 凄い…ナルシストな方なんです」

少しげんなりとした私が答えると、リーマスさんは驚いたようにまたリストを見ました。
ロックハートさんの著書7冊は変わらず書いてあります。

「それはまた…今年も大変そうだね」
「…私、ロックハートさんなら、スネイプ先生がDADAの先生でもいいと思いますけど」

私がスネイプ先生の名前を出すと、リーマスさんは何故か小さく笑いました。
な、なんですか。

「いやいや、ごめんよ。リクちゃんがこっちに帰ってきて、時々スネイプの名前を出すなぁと思って」
「だってとっても意地悪な先生だったんですよ」
「うーん…。それだけじゃないと私は思うけどね」

リーマスさんの言葉に私は首を傾げました。

その言葉の意味は、よく、わかりませんでした。


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