大広間の中は緑と銀色のスリザリンカラー一色でした。

スリザリンのヘビを描いた横断幕が飾られています。

ロンくんとハーマイオニーちゃんの隣に座っていると、ハリーくんが来ました。
皆がハリーくんを見ようと立ち上がっていましたが、運よくダンブルドア校長先生が現れました。

大広間が静かになります。

「また1年が過ぎた!
 何と言う1年だったろう。君達の頭も以前に比べて少し何かが詰まっていればいいのじゃが…新学年を迎える前に君達の頭が空っぽになる夏休みがやってくる」
「ハリーくんの誕生日もきますね」

囁くとハリーくんは顔を少し赤くして微笑みました。

「それではここで寮対抗杯の表彰を行う事になっとる。
 4位、グリフィンドール302点。
 3位、ハッフルパフ352点。
 2位、レイブンクロー426点。
 そしてスリザリン472点」

スリザリンのテーブルが歓声と足を踏み鳴らす音で賑やかになりました。
ドラコくんが笑顔を浮かべています。

「よしよし、スリザリン。よくやった。
 しかし、つい最近の出来事も勘定に入れなくてはなるまいて」

スリザリン寮生の笑いが少し消えました。

「えーと、そうそう…まず最初は、ロナルド・ウィーズリー君」

ロンくんの顔が深紅に染まりました。

「この何年間かホグワーツで見ることができなかったような最高のチェス・ゲームを見せてくれたことを称え、グリフィンドールに50点を与える」

グリフィンドールの歓声が頭上の星を揺らしかねないぐらいに轟きました。
私も沢山の拍手をしてロンくんに笑いかけます。

広間が静かになります。

「次に、ハーマイオニー・グレンジャー嬢に。
 火に囲まれながら冷静な論理を用いて対処したことを称え、グリフィンドールに50点を与える」

わっとハーマイオニーちゃんが腕に顔を埋めました。嬉し泣きをしているに違いありません。
私はハーマイオニーちゃんをぎゅうと抱きしめて狂喜に揺れるグリフィンドールを見ていました。

「次にリク・ルーピン嬢」

私の中の時間が止まりました。私、何もしてませんよ!?

「たとえ捕らえられていようと仲間を信じ、万人を心配することができるその優しさを称え、グリフィンドールに10点を与える」

またグリフィンドールのテーブルから声が上がりました。皆が私達を見て拍手や歓声をあげています。
ドラコくんも嫌々ながら拍手しているのが目に入ったりして、私の顔が真っ赤に熱くなり、ハーマイオニーちゃんと一緒に顔を埋めて隠すことにしました。

「4番目はハリー・ポッター君」

部屋中が静まり返りました。

「その完璧な精神力と並外れた勇気を称え、グリフィンドールに60点を与える」

大騒音が響き渡りました。
これで、スリザリンと全くの同点です!

ダンブルドア校長先生が手をあげました。広間が少しずつ静かになります。

「勇気にもいろいろある。
 敵に立ち向かっていくのにもおおいなる勇気がいる。しかし、味方の友人に立ち向かっていくのも同じくらい勇気が必要じゃ。
 そこで、わしはネビル・ロングボトム君に10点を与えたい」

爆発。

声の爆発が起こりました。大きな歓声がグリフィンドールのテーブルから、スリザリンがトップから滑り落ちたことを祝ってレイブンクローやハッフルパフからも歓声や拍手喝采が加わります。

私も思わずテーブルから立ち上がって近くにいたフレッド先輩に思わず飛びついていました。
これで寮対抗杯は優勝です!

「したがって、飾り付けをちょいと変えねばならんのう」

緑の垂れ幕が一気に真紅に、銀色は金色に変わっていきます。
スリザリンのヘビは消えていき、グリフィンドールのライオンが現れました。

スネイプ先生が苦々しい顔のままマクゴナガル先生と握手をしています。

とっても、素敵な、ホグワーツの毎日が戻ってきました。


†††


殆ど全員が忘れていましたが、試験の結果が発表されました。

ハーマイオニーちゃんがもちろん学年トップでハリーくんもロンくんもいい成績でした。
私は大体が平均値で、変身学が少し悪く、魔法薬学がとってもいい成績でした。これには少しびっくり。
スネイプ先生とのあの補習もどきが効いているようです。

そしていつの間にか寮の中は空っぽになり、全員がホグワーツ特急に乗りました。

お話して、お菓子を食べて笑っているうちに、すぐにキングズ・クロス駅の9と3/4番線に到着しました。

「夏休みに家に泊まりにおいで。ふくろう便を送るよ」
「ありがとう。僕も楽しみに待っていられるようなものが何がなくちゃ……」

ロンくんのお誘いに私も満面の笑みを返します。
ハリーくんに沢山の人が声をかけます。
私はにこりとハリーくんを見上げました。

「ハリーくん、やっぱり有名人さんですね」
「これから帰るところでは違うよ」

そして私達は一緒に改札口を出ました。
そこにはロンくんのお母さんや妹ちゃんがいます。

ロンくんのお母さんが私達に笑いかけました。

「忙しい1年だった?」
「ええ、とても。お菓子とセーター、ありがとうございました。ウィーズリーおばさん」

私もあわせてセーターのお礼をいうと、ロンくんのお母さんはにっこり笑いました。

「まぁ、どういたしまして」
「準備はいいか」

声をかけたのは、どうやらハリーくんのおじさんらしい人でした。
ハーマイオニーちゃんがあんな嫌な人がいるなんて、とショックを受けています。私もハリーくんが心配になりました。

が、ハリーくんは笑顔を浮かべていたので私達は驚きました。

「僕達が魔法を使っちゃいけないことを、あの連中は知らないんだ。
 この夏休みはダドリーと大いに楽しくやれるさ」

ハリーくんが案外楽しそうに私達にお別れを言ったので、苦笑を零しながら私はハーマイオニーちゃんと顔を見合わせました。

そしてロンくんの家族に手を振り(別れ際に私とハーマイオニーちゅんがロンくんに抱き着くと、フレッド先輩とジョージ先輩が冷やかしの口笛を吹きました)、ハーマイオニーちゃんとも抱き合ってから(絶対に手紙を書くわ! 私も書きます!)お別れをしました。

そしてあちらこちらで、親に迎えられている同級生達を見ていると、私にも声がかかりました。

「リクちゃん、お待たせ」

振り返るとリーマスさんの姿が見えました。
私は思わず、彼の胸に飛び込むように抱き着きました。甘い、チョコレートの香りがします。

リーマスさんも私の体をぎゅうと抱きしめ返してくれました。

「おかえり、リクちゃん。
 ホグワーツは楽しかった?」

もちろん。私はリーマスさんに満面の笑顔を返しました。

「はい、とっても!」

笑うと私の中から幸せが溢れ出るようでした。


(狼さんの娘は1年生(The Philosopher's Stone))


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