授業が始まりました。
授業自体は珍しく、楽しいものばかりでしたが、私には英語の発音が上手くいかなくて、難しかったりしました。
ですが、やっぱり魔法は楽しいです。
それより大変なのは授業に向かう時でした。
動く階段。1段抜ける階段。天文台に行ったり、地下に行ったり、沢山ある教室に移動して。
迷子に何度かなってしまって、監督生さんには大変お世話になりました。
幸いまだ遅刻していませんが、油断するとすぐ遅刻してしまいそうです。
「変身術は、ホグワーツで学ぶ魔法の中で最も複雑で危険なものの1つです。
いい加減な態度で授業を受ける生徒は出ていってもらいますし、2度とクラスには入れません。初めから警告しておきます」
これはマクゴナガル先生の最初の授業でのお話でした。
先生が机を豚に変えたのを見て、みんな(勿論私も)が試したくてウズウズしていました。
ですが、授業は難しいノートを沢山とって、次にマッチを針に変える魔法から教わりました。
出来たのはハーマイオニーちゃんだけで、綺麗に尖がった針に変えていました。
私のは銀色でしたが、先が丸く、とても安全性に優れていました。…うーん、残念。
そして私の最初の事件は魔法史の時間に起きました。
ハリーくんやロンくんが睡魔と戦っている間、私はノートだけは真剣にとっていました。
そしたら急に先生の声が、急に聞こえなくなったのです。
聞こえなくなったといったら間違いかも知れません。
聞こえてはいたのですが、急に理解が追いつかなくなったのです。
今まで日本語に聞こえていた言葉が、全て英語に聞こえて。
とっていたノートの意味が英単語だらけで全くわからなくなって。
それは授業が終わってからも続き、私はハーマイオニーちゃんに身振り手振りで医務室に行くことを伝えたのでした。
マダム・ポンプリーは私をびっくりした顔で見たあと、私の喉に向けて杖を振ってくれました。
そうしたらすぐに治りました。よかった。
マダム・ポンフリーが私に優しく説明して下さります。
「呪文の効果が薄れただけですよ。
今は一時的な呪文ですが、あとで薬を作って貰いましょう」
「ありがとうございます。
あの、じゃあ、リーマスさんに何かあったとかじゃ…」
「そうではありませんね。今日は満月ですし…それも関係しているのでしょう」
マダム・ポンプリーはリーマスさんが学生の時もいた方です。
リーマスさんが狼人間だと知っている数少ない人です。彼女が優しく微笑みました。
「さぁ、授業に遅れますよ」
「あ、次、地下で魔法薬学でした…! 急ぎます!
ありがとうございました!」
「はい。お大事に」
そして魔法薬学の授業になりました。
魔法薬学は大抵がグリフィンドールとスリザリンが合同で、私は授業が始まる前の空き時間にマルフォイくんの側に行きました。
「マルフォイくん、なんだかお久しぶりですね」
「あぁ、花咲じゃないか」
「あ…。そっか、私、マルフォイくんに花咲って言ったんでしたっけ…」
あの時はまだ慣れなくて前の名字を言ってしまったのです。
私はマルフォイくんに軽く説明して謝ります。
「ごめんなさい…。あ、えと、出来ればリクって呼んでください!
『ルーピン』も実はまだ慣れてなくて…」
「なら僕もドラコだ」
「はい。ドラコくんですね」
笑うと授業開始のベルが鳴りました。私はぱたぱたとハーマイオニーちゃんの隣に走りました。
「ハーマイオニーちゃん、隣、いいですか?」
「えぇ、もちろん。一緒にやりましょ」
軽くお話していると、後ろから先生が地下室教室に入って来ました。スネイプ先生です。教室中がシーンと静まり返ります。
「このクラスでは魔法役調剤の微妙な科学と、厳密な芸術を学ぶ。
杖を振り回すようなバカげたことはやらん。
フツフツと沸く大釜、ユラユラと立ち上る湯気、人の血管をはいめぐる液体の繊細な力。
心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力……。
我輩が教えるのは、名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえふたをする方法である。
ただし、これまで我輩が教えてきたウスノロより諸君がまだましであればの話だが」
なんだか凄く難しそうでドキドキしてしまいます。
隣のハーマイオニーちゃんは早くしたくてワクワクしているようでした。
「ポッター! アスフォデルの球根粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」
突然。スネイプ先生がハリーくんを当てました。
ハリーくんは何を言われたのか全くわかっていないみたいです。
ハーマイオニーちゃんはビシッと素早く手を挙げましたが、私にも何の事かさっぱりでした。
先生はそのあとも2つ、ハリーくんに質問をして、なのに手を挙げるハーマイオニーちゃんを全部無視して、最後の最後に答えられなかったハリーくんから1点減点しました。
む。あまりハリーくんもハーマイオニーちゃんも意地悪しないで欲しいです。
……ですが、彼はハリーくんを守るためにお仕事をしているのです。たしかその筈です。…矛盾しているようにしか見えませんが。
次に2人1組で(ハーマイオニーちゃんに言わせれば)簡単な薬を作る事になりました。
スネイプ先生は生徒の間を周り、ほとんど全員…ドラコくん以外全員に注意していきました。
私はハーマイオニーちゃんと一緒だったお陰もあり、綺麗な薬が出来上がりつつありました。
まだ注意はされていません。
手先の器用さには自信ありますもん! 丁寧に綺麗に刻んでいきます。
「………Ms.ルーピン」
「? はい!」
「刻み方が粗い。グリフィンドール1点減点」
ショック!
じ、自信あったのに…注意ではなく減点をされてしまいました。
しょんぼりとハーマイオニーちゃんに謝ると、彼女は「逆に何が駄目なのかわからないわ!」と小声で怒ってくれました。
各々作業をしていると、突然、教室中に強烈な緑の煙が充満しました。
後ろを振り返ると、ロングボトムくんとフィネガンくんの班からでした。
鍋が溶けたみたいでロングボトムくんの顔や手に真っ赤なおできが広がります。
「バカ者! おおかた、大鍋を火から降ろさないうちに、山嵐の針をいれたんだな?
医務室へ連れていきなさい」
スネイプ先生がフィネガンくんに言い付けたあと、理不尽にハリーくんから1点減点しました。む。意地悪。
そして初めての魔法薬学がチャイムと同時に終わりました。
「Ms.ルーピンは最後残るように」
終わりませんでした。
な、何故! 肩を落とし、困惑の表情のまま私はハーマイオニーちゃんを見つめます。
「私は居残り…。ハーマイオニーちゃん先に帰っていて下さいね」
「私、待ってるわよ?」
「いいえ。次は昼休みですし、大丈夫です」
私は出来上がった薬を詰めて提出しました。
渋るハーマイオニーちゃんに言って、先に帰ってもらいます。
教室には私だけが残りました。スネイプ先生はロングボトムくんを見に行ってしまっていません。
自分の鍋は綺麗に洗ってしまって、まだ先生が帰ってくる気配はありません。
手持ち無沙汰になった私は予備に置いてある大鍋に手を伸ばしました。
「よし、これも洗いましょう!」
ということで、予備の大鍋を洗い出しているとスネイプ先生が入ってきました。
入ってきて私を見て、目が合って。驚かれました。
「何をしている?」
「えっと…洗おうと思いまして…。自分の分は洗い終わりましたよ!」
「当たり前だ。
Ms.ルーピン。これがマダム・ポンプリーに言われていた翻訳の薬だ」
あ。そうでした! マダム・ポンフリーがあとで薬を、と言っていたのを忘れていました。
よかった。スネイプ先生に何か説教されてしまうのかと…。
安心した私は薬の入った瓶を受け取ります。それは日本にあった金平糖によく似ていました。
基本的には白が多めで、時々赤や緑が入っていて、それはとても綺麗でした。
瓶についた緑のキャップには銀の模様が入っています。
なんというか、スリザリンカラー。私、グリフィンドール生ですけれど。
私は金平糖の形を見て、あの甘さを思い出しました。
「おいしそう……。
先生、これ食べてみてもいいですか?」
「構わないが」
その言葉に、ワクワクと懐かしい、白い金平糖を口に含むと。
「!? …ッ!! に、苦…ッ!? まずい…!!」
激まずでした。
「薬の効果は大体1日持つ。毎朝、同じ時間に飲めばいい」
「ま、いあさ!? これを!?」
「1日一粒を守れば別に毎晩でも構わないが。
飲み忘れれば1日、話が出来なくなるだけだ。死にはしないだけいいですな」
淡々と言われますが、これはそんな苦さまずさではありません。
例えるなら何か草を乾燥させて、それに蜥蜴や漢方系の何かを混ぜ合わせた味です。
そんなもの食べたことありませんが。初めてこんなにも舌に厳しいものを口に入れました。
少し楽しそうなスネイプ先生を睨みます。泣きそうです。実際、少し泣いてますよ。
でもどうしてですか! 見れば見るほど先生は楽しそう!
「用はそれだけだ。少なくなればまた言え」
「ふぁい…わかりまひた…」
帰ろうと鞄を持つとスネイプ先生に引き止められました。
「はい?」
「途中で帰る気かね?」
指差すそこには大鍋。忘れていました。
「あ! やっていきます!」
がしゃがしゃと大鍋を洗い、元の場所にしまっていきます。
するといつの間にか洗う前の鍋に混ざって、見知らぬ試験管などもあります。
暫く普通に気にせず洗っていたのですが、ふとみると、やっぱりいつの間にか増えています。
私はむすと頬を膨らませて、魔法薬の採点をしているらしきスネイプ先生に振り返りました。
「スネイプ先生?」
「どうせ洗うなら増えても構わんだろう」
いえいえ構いますよね!?
私は頬を膨らましましたが、彼にはたいして関係ないようです。
結局、全部洗ってから帰りました! スネイプ先生は意地悪さんです!