私はきれいじゃないけれど 人は見かけによらぬもの
私をしのぐ賢い帽子 あるなら私は身を引こう

山高帽子は真っ黒だ シルクハットはすらりと高い
私はホグワーツの組分け帽子 私は彼らの上をいく

君の頭に隠れたものを 組分け帽子はお見通し
かぶれば君に教えよう 君が行くべき寮の名を

グリフィンドールに行くならば
勇気ある者が住まう寮
勇猛果敢な騎士道で
他とは違うグリフィンドール

ハッフルパフに行くならば
君は正しく忠実で
忍耐強く真実で
苦労を苦労と思わない

古き賢きレイブンクロー
君に意欲があるならば
機知と学びの友人を
ここで必ず得るだろう

スリザリンではもしかして
君はまことの友を得る
どんな手段を使っても
目的遂げる狡猾さ

かぶってごらん! 恐れずに!
興奮せずに、お任せを!
君を私の手にゆだね(私は手なんかないけれど)
だって私は考える帽子!


「とってもユニークな帽子さんですねー。組み分けは帽子をかぶるだけなんでしょうか?」
「そうみたいだな」

私は今、マルフォイくんの隣にいました。
マルフォイくんの逆側には途中で合流したゴイルくんとクラップくんがいます。

ホグワーツはとっても大きくて、半透明のゴーストさんとか、本物の空のような天井に、沢山の蝋燭が飛んでいたり、私の視界は行ったり来たりです。
映画の中だけだった世界が私の前にずっと、ずっと広がっていたのです。

キョロキョロと見回すとハリーくんの姿も見えました。
前に座る先生たちにはこの前会ったクィレル先生や、映画で見たマクゴナガル先生、スネイプ先生もいます。

そして今注目すべきは軽やかに1曲歌いきった組み分け帽子でした。

「でも…あの帽子さん、少し怖いです…」

実際に動き出す帽子を見ると少し怖いものがあったりして。
マルフォイくんはそんな私を見て呆れていましたが。

きちんと整列をして、次々と名前が呼ばれ、帽子が寮を決めていきます。被った瞬間に決まる子や、なかなか決まらない子。
どの子も帽子を被っている間は不安げな顔をしていますが、寮が決まった瞬間に照れたようにはにかみます。

先に呼ばれていったマルフォイくんはスリザリンへ。ハリーくんはグリフィンドールへ。
ここまでは映画で見ていたとおりです。私、緊張してきました!

「ルーピン・リク!」

あれ。私。花咲…?

そっか…、今の私はリーマスさんと同じ籍に、養女として招いていただいたので、家名はルーピンなのでした。
花咲は前の名前で、今はルーピンになったのでした。

それはともかくと、思いを振り払い、前に出てマクゴナガル先生を見上げました。
高めの椅子に座り、大きめの組分け帽子をかぶりました。目元まで帽子がかぶさります。

「こんばんは。帽子さん」
(こんばんは。私は怖くないよ)
「あは…、ごめんなさい」

どうやら怖いと思っていたことがばれたようです。あはは。ごめんなさい。

(さてさて異世界からのお嬢さん。君はどの寮にしようか)
「知ってるんですか? 私が違う所から来たのを…」
(私は何でも知ってる帽子だからね。
 君を4つの何処に分けるかによって、いろいろと面倒が起きそうだからねぇ。
 さてどうしたものか)

それから帽子さんはじっと黙ってしまいました。
特に時間がかかっているようで、私は帽子に顔が隠れていることを感謝しました。

今、私に大広間の注目が集まっているのです!

「グリフィンドール!」

突然、帽子さんが叫びました。やったこれで私もリーマスさんと同じくグリフィンドール生です!

笑いながら私はマクゴナガル先生に組分け帽子さんを渡しました。
最後に帽子さんに小さく話し掛けます。

「ありがとう、帽子さん」

私が行きたかった寮を言ってくれて。

私はそれからすぐにハリーくんを見つけ、彼の隣を少し詰めてもらいました。

「ハリーくん、この前ぶりですね。
 これから7年間よろしくお願いします」
「もちろん! 僕もここのことはわからないし、一緒にね」

ハリーくんに笑いかけると、ハリーくんの前にいた赤毛の男の子が目を丸くしていました。

「君、もうハリーと知り合いなの?」
「この前『漏れ鍋』であったんです。新入生のお買い物の時に。
 えっと…?」
「あ、ごめん。僕はロン。ロナルド・ウィーズリー」
「リク・花咲…、ううん。リク・ルーピンです。
 よろしくね、ウィーズリーくん」
「残念」
「俺達も」
「ウィーズリーだよ!」

突然上がった声に私は隣をみると、双子みたいにそっくりな赤毛の男の子が2人、同時に声をかけてくれました。

「俺はフレッド。このロニー坊やの兄貴さ」
「俺はジョージ。ちなみにあそこに見える監督生のパーシーもウィーズリーさ!
「「俺達をウィーズリーと呼ぶのは得策じゃないね」」

2人は代わる代わるに紹介してくれます。
呆れた、もしくは照れたような(ハリーの向かいの)ウィーズリーくんも頷きます。

「7人兄妹なんだ。僕の上に5人いて、下に妹がいる。ロンでいいよ」
「ふふ。仲良しさんなんですね。
 改めてよろしくお願いします。ロンくん。
 フレッド先輩とジョージ先輩も」

自己紹介を済ませると、調度、組分けの儀式も終わったようでした。
前に校長先生…ダンブルドア校長が立ちました。

校長先生の挨拶です。

「そーれ! わっしょい! こらしょい! どっこらしょい! 以上!」

挨拶が終わりました。

今、もうお話終わったのかしら…。簡潔過ぎて素晴らしい。

気が付くと目の前の空だったお皿に沢山の料理が積み重なっていて、私とハリーくんが目を見開いていました。
驚いた顔のハリーくんと目があって2人ではにかみました。

そこで、遠くのスリザリン席でマルフォイくんがご飯食べているのが見えました。
何だか私の方を見ている気がして手を振ると、ニヤッと彼が笑ってくれました。

「マルフォイとも知り合いなの?」

隣のハリーくんが不思議そうに私を見ます。
私はこくんと頷き、コンパートメントで一緒だった事を伝えました。

「いい子でしたよ? 英国紳士」
「「冗談!」」

ハリーくんとロンくんが列車の中であった喧嘩について教えてくれました。
どうやら私と会う前に喧嘩してきたみたいですね。
クラップくんとゴイルくんとはそのあと別れたのかしら。
それはいいとして。

「危ないこととか、喧嘩とかしないで下さいね」

ハリーくんの将来的にそれが無理だとは知っていたけれど、私は心からそう思いました。


†††


「私、ハーマイオニー・グレンジャー。私もマグル生まれなの」
「本当ですか? ふふ。嬉しいです」

私と相部屋になったのは髪がふわふわとして可愛いハーマイオニーちゃんでした。
映画で見ていたよりも可愛くて、とっても良い子です!

ハーマイオニーちゃんも興奮気味に沢山のお話をしてくれます。

「私、いろいろと楽しみなの。
 明日から授業入るでしょ? 勉強はついていけるか心配で…」
「はい。私も授業は楽しみです!
 一緒に住んでいる人もホグワーツ出身だったんですよ」
「そうなの? ねぇ、呪文学ってどんなのかしら…」

今日は珍しいものを見すぎて興奮してしまって、ハーマイオニーちゃんと話している間も眠たくてすぐに眠ってしまいました。

ホグワーツ1日目が終わっていきます。


prev  next

- 4 / 281 -
back