私にはそれはわかりませんでしたが、なんとなく頷いていました。

そのあともハリーくんとダンブルドア校長先生の話が続いていました。

『あの人』はきっとまた舞い戻ってくるであろうこと。
どうして『あの人』はハリーくんを殺したかったのか。
クィレル先生はどうしてハリーくんに触れられなかったのか。
ハリーくんの『透明マント』を誰が送って来たのか。
スネイプ先生が本当にハリーくんのお父様を嫌っていたのか。
どうやってハリーくんは鏡から『石』を取り出したのか。

沢山の質問に答えたり、答えられなかったり、ダンブルドア校長先生は丁寧に返していました。
私もそのお話を聞きながら、そしてお話が終わって、ダンブルドア校長先生が医務室から出て行った時に、ハリーくんを見ていました。

「リクの怪我は酷いの?」
「いいえ。全然、大丈夫ですよー。手足首に縄の跡が少し、残っていて、あとは軽い脳震盪を起こしていただけですから。
 ハリーくんは?」
「僕も大丈夫。でも、クィレル先生に触られた時に頭の傷が痛んだんだ」

そう言ってハリーくんは額の稲妻の傷痕を押さえました。
私をそれを見て、少し不安を抱きましたが、ハーマイオニーちゃんとロンくんが医務室の外にいると聞いて、薄情にもハリーくんと一緒にマダム・ポンフリーに懇願する事にしました。

5分だけ。との約束を取り付けて、やっと2人が入ってきました。
ハーマイオニーちゃんがハリーくんに飛びつきそうでした、が、思い留まったようです。

それからはハリーくんからもう1度、あの部屋であったことを話してくれました。
リクも! と言われましたが、私はハリーくんのように上手にお話出来る気がしませんので、ハーマイオニーちゃん達と一緒に聞き手に回っていました。

ワクワクするような大冒険。それを私達がしてきたのだと思うと、少しにやにやしてしまいます。
沢山お話したあと、ロンくんが誇らしげに言いました。

「明日は学年末のパーティーがあるから2人とも元気になって、起きてこなくちゃ。
 得点は計算がすんでスリザリンが勝っちゃったけど」

悔しそうに笑うロンくんに私は満面の笑みを浮かべました。
大丈夫ですよ、寮杯はもちろんグリフィンドールが頂くんですから!

そこでマダム・ポンフリーが勢いよく入ってきました。

「もう15分も経ちましたよ。さぁ出なさい」

10分おまけしてくれただけでも、ありがたいです。もう少し、みんなでいたかったんですけども。


†††


次の日、私はハリーくんより一足先に退院することが出来ました。
絶対にハリーくんと今夜のパーティーで会うことを約束してから出てきました。

グリフィンドール寮に向かう前に、私はスネイプ先生の地下牢教室に向かっていました。

入ると、何かの片付けをしていたスネイプ先生と目が合いました。
笑いかけると先生は無表情のまま、また作業を続けました。

「1年間、お疲れ様でした」

スネイプ先生が片付けていた鍋を、私も手にとって片付けを手伝いました。
薬草も間違えることなく薬品棚にしまっていくことが出来ます。
いつの間にか、何回かここへきてお手伝いをするうちに覚えていたんです。

スネイプ先生の言葉はありませんでしたが、私は続けていいました。

「また、来年もよろしくお願いします」
「…我輩としては願い下げですな」
「そんなこと言わないで下さいよ」

苦笑を零すとスネイプ先生は浅く、意地悪な笑みを返しました。

「まぁ…、来年も、というならばまた必要な魔法薬でも作って貰えますかな」
「う」

どうやら来年も私は、またあの難しかったり面倒臭かったりする魔法薬を作っていくみたいです。

それは減点はされるのに、加点はしてくれない、理不尽な補習。

「絶対、スネイプ先生に加点して貰えるような薬を作ってみせますからねー」
「ふん。まだまだですな」
「いーっ」

でも、何故だか楽しいと思うんです、私は。

どうしてかは、全くわかりませんでしたが。


prev  next

- 25 / 281 -
back