次の日はハリーのクィディッチ今期、初試合でした。
私達も観客席でハリーを応援していました。
スリザリン寮シーカーになったドラコくんの初試合でもあります。私は試合が始まる少し前からわくわくと高揚する胸を押さえていました。
「リク、最近、寝不足なんじゃない? 顔色が良くないわ」
急にハーマイオニーが私に聞きました。
試合が始まって声を上げていた私は?と首を傾げます。
私、そんなに顔色が悪いのでしょうか?
確かに、夜は寝ているような、でも起きてシリウスと話しているような。そんな生活をしています。
私は心配するハーマイオニーに私は笑いかけます。
「大丈夫ですよー。夜もちゃんと眠れていますから」
「無理しちゃ駄目よ。貴女、体も小さいんだから負担になるわよ」
「ふふ。ハーマイオニー、お母さんみたいです」
「もちろんよ。危なっかしいんだから」
「やめろよハーマイオニー、小さい子供じゃないんだから」
言うハーマイオニーとロンがなんというか仲がとてもよくて、私はニコニコと2人の間でハリーを応援していました。
その時、ハリーの方にブラッジャー、黒い球が襲います。
ハリーは軽くかわしましたが、また。また。ハリーばかりを狙っているようにも見えます。
ジョージ先輩、フレッド先輩がハリーを守っていますが、ブラッジャーのせいでなかなかスニッチを探し出せずにいます。
次第に雨が振りはじめました。上空の視界が悪くなっていきますが、幸い目はいい私にはかろうじてハリーが見えていました。
スリザリンがリードのまま試合が進み、ウッド先輩がタイムアウトをとります。
そしてそのままタイムが終わるとハリーは1人でそのブラッジャーと対峙していました。
そんな無茶ですよ、ハリー!!
「でも、どうして…」
ブラッジャーは選手全員を襲うように出来ています。
それがなんでハリーだけに?
どうしても映画を思い出せない私がぎゅうと両手を握ってハリーの安全を願います。
雨に打たれているハーマイオニーとロンも心配顔です。
中々見えない雨の中で、ハリーにブラッジャーが迫って行くのが見えました。私はぎゅっと目を閉じます。
「っあいた! …絶対、今ので骨、折ったぜ…」
ハリーの右腕にブラッジャーが激突しました。
ロンが顔をしかめていました。私はだんだん怖くなって、ハーマイオニーの手を握りました。
「大丈夫よ、リク。大丈夫……」
安心させるようなハーマイオニーの声も不安げです。
ハリーは何故かドラコくんの方に向かうと、折れていない左手を伸ばし、そして、そのまま落ちてきました。
「ハリー!」
バシャと泥の中にハリーが落ちました。
私とロン、ハーマイオニーは真っ先にハリーに走って向かいました。
ハリーの元にロックハート先生が向かうのを見て、私は急に映画の続きを思い出しました。
ロックハート先生は間違って折れたハリーの腕を『無くして』しまうのです。
「駄目です、ロックハート先生!!」
私が走ってハリーに手を伸ばそうとすると、キリキリと頭が痛みだしました。
……ハリーにこのまま痛い思いをさせるというのですか!
苛々する頭の痛みに内心叫びながら私はハリーを見据えます。
「――横になって、ハリー、この私が数え切れないほど使ったことがある簡単な魔法だからね」
「僕、医務室に行かせてもらえませんか?」
人並みに揉まれて小さな私が進めないでいました。
あと、もう少し。あともう少し!!
「みんな、下がって」
「駄目!!」
頭の痛みは今や割れそうなほどに酷くなっています。
それを必死に我慢して私はロックハート先生とハリーの間に手を伸ばしました。
「あっ」
ロックハート先生の声が聞こえました。
何かを言っているロックハート先生を右腕で避けて、私はハリーの顔を覗き込み微笑みました。
「ハリー、大丈夫ですか?」
私の頭の痛みはゆっくりと引いていきました。
物語は変わらずに、進むことが出来るという事のようです。
問題は怪我の量ではなく、ハリーが医務室に行くかどうかなのです。
人混みを掻き分けてきたハーマイオニーが私を見て息を飲みました。そして私をぎゅうと抱きしめました。
私も「片手」でハーマイオニーを抱きしめ返しました。
ハリーの右肘から指先、私の左肘から指先まで、綺麗に骨が抜き取られていました。