そして夜の8時になり、みんなで大広間に向かうと、そこにはほとんど学校中の生徒がいました。
私もハーマイオニーちゃんの隣に立って、金色の舞台を見つめています。

誰が来るのだろうと話していると、舞台にパッとロックハート先生と、その後ろからスネイプ先生が現れました。
ハリーとロンが顔をしかめる中、私とハーマイオニーの顔は違った意味で輝きます。

「皆さん、集まって。私がよく見えますか? 結構、結構!
 これは自らを守る必要が生じた万一野場合に備えて、皆さんをしっかり鍛え上げるためにです!
 では、助手のスネイプ先生をご紹介しましょう」

殺気あらわのスネイプ先生の前で、ロックハート先生は笑顔を振り撒いていました。

「スネイプ先生がおっしゃるには、決闘についてごくわずかにご存知らしい。
 私が彼と手合わせしたあとでも、皆さんの魔法薬の先生は、ちゃんと存在します。ご心配めされるな!」

その言葉に私はクスクスと笑ってしまいました。
これではロックハート先生よりスネイプ先生が弱いみたいです。

私は思わず声をこぼしました。

「スネイプ先生、とっても不機嫌です」
「いやいや不機嫌なんてもんじゃないよ。僕なら回れ右して、全速力で逃げるよ。あの顔」

ハリーの囁いた言葉にクスクス笑いが収まらなくなってしまって、スネイプ先生に睨まれてしまいました。
あ、場所がばれました。いや、別に大丈夫ですけど。

顔を引き締め、立った2人の先生を見ます。

「三つ数えて最初の術をかけます。もちろん、どちらも相手を殺すつもりはありません。
 あー、Ms.ルーピン!」

びっくり。突然、話し掛けられて、私はハリーの背に隠れる事が出来ずに、ロックハート先生を見ました。
満面の笑顔のロックハート先生がいました。こ、怖くなんか、ないですよ!

「三つカウントしてくれませんか? Ms.の綺麗な声で」
「さーん!」

あーあー聞こえていません。聞こえていません。
私は颯爽とカウントをはじめました。ハリーがニヤッと笑いました。

ロックハート先生が慌ててスネイプ先生に向き直ります。
スネイプ先生を見ながら、私はカウントを進めました。

「にー! いーち! はじめ!」
「エクスペリアームズ(武器よ去れ)!」

ロックハート先生の身体が舞台から吹っ飛んで、反対の壁に激突しました。痛い。

少しやり過ぎな気もしますが、スリザリン生のあげる歓声に紛れて、私も密かに拍手をしました。
スネイプ先生、格好いいじゃないですか!

ロックハート先生はフラフラと立ち上がり、よろめきながら壇上に戻ります。

「さぁ、みんなわかったでしょうね! あれが『武装解除の術』です。
 スネイプ先生、確かに生徒にあの術を見せようとしたのはすばらしいお考えです。
 しかし私にはそれを止めようと思えば、いとも簡単だったでしょう。生徒に見せた方が教育的によいと思いましてね」

スネイプ先生の殺気が今や大変な事になっていました。
やっとロックハート先生も気がついたようで生徒達に声をかけました。

2人1組で練習するようです。私はハーマイオニーの側にぎゅうと寄りますが、真っ先にスネイプ先生が私達のところに来ました。

「ウィーズリー、君はフィネガンと組みたまえ。ポッターは、マルフォイ君、きたまえ。
 Ms.グレンジャー、君はMs.ブルストロードと組みたまえ。
 Ms.ルーピンは、」

スネイプ先生は回りを見ると暴れかけている双子先輩を見ました。

「ウィーズリー、Ms.ルーピンと組め」
「ジョージ先輩、フレッド先輩!」

よかったです。私の知っている人でした。

見知らぬスリザリン寮生だったら泣いてしまいます。
ブーブー言っていたロンに苦笑を送り、私は先輩達の側に寄りました。

「「よろしく! リク」」
「はい! じゃあ、先にフレッド先輩、やりましょうよ」

背の高いフレッド先輩の顔を見て、ニコと笑いました。

ロックハート先生の声が響きます。

「相手と向き合って! そして礼!」

ペコンと頭を下げました。フレッド先輩がニヤニヤしています。
悪い予感。というか嫌な予感。

「杖を構えて!
 私が三つ数えたら、相手の武器を取り上げる術をかけなさい、武器を取り上げるだけですよ!
 3――2――1――」

「プロテゴ(守れ)!」
「オーキデウス(花よ)!」

フレッド先輩の杖から色んな色の花が飛び出しました。
私が思わずだした盾の呪文に花が当たり、舞い上がりました。

「リク、それ酷くないか? せっかくの花を!」
「だってフレッド先輩、悪い顔してましたもん…。もっと怖い呪いかと…」
「リクにそんなことしないさ」

む。と頬を膨らますと、フレッド先輩とジョージ先輩が笑いました。
回りは私達よりも悲惨で、あたり中に緑がかった煙が立ち込めていました。あらら。

不安げに回りを見回していると、ジョージ先輩が声をかけました。

「フレッド、交代! 次、俺やる」
「絶対、意地悪しないで下さいよーっ」
「さぁてどうかな」

また礼をして杖を向けあうと、私は両手で杖を握っていました。
回りの惨状をマイペースに無視しながら、フレッド先輩がカウントしました。

「3――2――」
「オーキデウス(花よ)!」
「わわわっ、先輩、反則です!」
「フレッドの目的が果たせたから満足さ」
「さすがジョージ。わかってる」

ジョージ先輩はまだカウントが終わっていないのに、先程と同じ呪文が放たれました。
私の髪や服に花が降り積もっています。もう!

花びらを落とそうとすると、ジョージ先輩がそれを止めました。

「いいって、リク! 似合うよな」
「あぁ、花の冠みたいで似合う似合う」
「からかわないでくださいよー」

不満の声を上げていると、ハリーとドラコくんが舞台に上がっていくのが見えました。
遊んでいる場合ではありません! ハリーの大活躍を見なくては!

「先輩、前に出ましょうよっ」

先輩方の手を引いて、舞台のすぐ側に向かいました。ハリーに手を振ります。
ハリーはロックハート先生の指導を受けていました。先生が杖を落としました。大丈夫でしょうか?

「………リクを見てたらなんか和むな、ジョージ」
「わかるぜ、フレッド。なんとなくジニーを見ているのと近いな」
「先輩の妹でも、楽しそうですね」
「「歓迎するよ!」」

私がニコニコしていると、試合が始まり、ドラコくんが素早く杖を振り上げ「サーペンリーティア(ヘビ出よ)!」と怒鳴りました。

真っ黒いヘビが出てきて、私達の目の前に現れます。

顔を険しくさせたフレッド先輩、ジョージ先輩が私の腕を引いて私を庇ってくれました。
他の生徒も悲鳴を上げ、舞台から遠ざかります。

ですが、ヘビは怒り狂ったまま、シューシューと、固まっていたジャスティン・フィンチ-フレッチーくん目掛けて滑り寄っていきました。
それを見て、ハリーがシュー、シューと声を上げました。

蛇語。パーセルマウスです。

回りの生徒のざわめきが止まり、ハリーに視線が集中しました。
ハリーに話し掛けられたヘビはいつの間にか床にクルンと丸くなっていて、十分に大人しくなったようです。


prev  next

- 36 / 281 -
back