「いったい、何を悪ふざけしているんだ?」

そこでジャスティンくんが叫びました。

不思議そうな顔をしているハリーをロンとハーマイオニーがホールの外へと連れ出して行きます。
私も追い掛けようとしましたが、その前に現れたヘビが気になりました。

このままではスネイプ先生に消されてしまいます。

「リク、何しているっ?」

フレッド先輩が声をかけるのを手で押さえて私は舞台に上がります。
上がって四つ這いのままヘビに近づきました。

「ほら、怖くないですよ」

ヘビは興味深そうに私を見たあと、ゆるゆると近づいてきます。

「離れろ、Ms.ルーピン」

スネイプ先生が声をかけましたが、私はさらにヘビに近づいて、手を伸ばしました。

ヘビはシュルンと顔を伸ばして、私の指を長い舌で舐めました。
噛む気はないみたいです。うん。やっぱり大人しくていい子ですね。

1mくらいの長さのヘビを腕に絡ませて、私は立ち上がりました。
他の生徒は怯えた様子で私を見ていましたが、私にはあまり関係のないことです。

ヘビは私の頬を嘗めると、シャと短く声をあげました。
私の肩に上り、だらんと身体を落ち着かせています。

「ふふ。いい子ですねぇ」
「リク、そ、それ、どうするんだ」

ヘビを巻き付けたままの私が舞台から下りると、恐る恐るとフレッド先輩とジョージ先輩が近づいてきました。私は笑顔を浮かべます。

「可愛いですよねぇ。昔、家にリューシスティックっていう真っ白いヘビを買っていたんですよー。
 とても懐いていて、可愛かったんです。
 色は違いますが、その子にそっくりなんですよー」
「……俺達は今、リクの謎を発見をしたよ……」

フレッド先輩がヘビを見て、まだ不安げにしています。
ヘビがフレッド先輩に向かってシャーと声をあげました。フレッド先輩はびっくりしています。

「からかっちゃ駄目ですよ」

話し掛けながら、私は裂けていく人波の真ん中を進んで、ハリー達のあとを追いました。


†††


グリフィンドール寮の談話室でやっと3人を見つけた私は、青い顔をしたハリーに駆け寄りました。

「ハリー、ハリー! 大丈夫ですか?」
「…あ、リク…、僕は大丈夫――リク!! 肩! ヘビ!」
「可愛いですよー」

ヘビを絡ませたままの私が笑顔を向けるとハリーとロン、ハーマイオニーの驚いたような苦い顔に出会う事が出来ました。
もう。ヘビ、可愛いじゃないですか! 名前つけてあげますからねー。

「……ハリーはスリザリンさんの子孫なんかじゃないですよ」

私はひじ掛け椅子に座ったハリーの側で、小さく笑った。不安そうなハリーが私を覗き込む。

「でもリク、どうしてそんなことが言えるの?」
「ハリーがスリザリンさんの子孫なら、ハリーくんのお父さんかお母さんもスリザリンさんの子孫って事になりますよね?
 そんな人達じゃないと、思います。
 ハリーも。ですよ」

ニコと笑うとロンもニヤッと笑ってハリーの肩を叩きました。

「そうだって! 大丈夫だよ!」
「私もヘビを連れて帰ってきたら、ドン引きされてしまいましたし」
「…いや、それは僕も勘弁」
「私も」
「ハリーもハーマイオニーも酷いですよ! 可愛いじゃあないですか、ヘビ!」

言い合ったあと、私はクスクスと笑っていました。
よかったです。ハリーに元気が出たみたいで。

ヘビがスルンと私の手に巻き付いてシューと声を出しました。ハリーがそれにシューシューと返します。

わぁ、うらやましいです。ロンとハーマイオニーもハリーを見ていました。

「この子、何て言ったんですか?」
「『リクは抜けてる顔してる』って」
「む。失礼な」

指でヘビの頭を押し付けてから私はニコと笑いました。


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