「フクロウ、猫、カエル以外のペットは認められていない筈だが?」
「マクゴナガル先生とダンブルドア校長先生に沢山お願いしたんです。
ね、『フェイン』?」
次の日、私はスネイプ先生の所で名前をつけたヘビを披露していました。
スネイプ先生は大鍋を掻き混ぜながら私にききます。
「名前か?」
「『ムリフェイン』という名前にしたんです。へびつかい座を構成している星の1つなんですよー。略して『フェイン』」
ムリフェインというのは、おおいぬ座のα星『シリウス』の隣にある星と同じ名前でもあるんです。
私はふふふと笑いながらフェインと頭をすり合わせて、材料であるヘビの抜け殻を鍋に入れました。
先生が呟きます。
「………いつか魔法薬の材料になりそうですな」
「さ、させませんよ…!?」
「シャー!!」
†††
外は大雪が降っていました。この寒さは日本人な私には堪えます。
寒い廊下をフェインと歩いていると、ピーブズの大声が廊下の奥から聞こえてきました。
「襲われた! またまた襲われた! 生きてても死んでてもみんな危ないぞ! おーそーわーれーたー!」
私は思わず声のする方へ走り出しました。
沢山の人込みに揉まれながらも、私は騒ぎの中心にたどり着きました。
そこには、フレッチリーくんと「ほとんど首無しニック」さんです!
そこに、呆然としたハリーもいます!!
私はバッとハリーに駆け寄りました。
「ハリー!」
「…リク、リク、僕、やってない!」
「わかっています。私はハリーを信じています。
ですから、落ち着いてください」
ハリーの腕を強く握ると、蒼白な顔をしたマクミランくんがハリーを指差しました。
「そいつは、現行犯だ!」
「おやめなさい、マクミラン!」
マクゴナガル先生が彼をたしなめます。
鋭い声をあげたフェインに、マクミランくんが後ずさります。
私はフェインの口を掌で覆いました。
「静かにしましょう。フェイン。
……マクゴナガル先生、私もハリーと一緒にいてもいいですか?」
「いけません。Ms.ルーピン。貴女も寮に戻りなさい」
ぎゅうとハリーの腕にしがみつきながらマクゴナガル先生を見つめていましたが、私は少し俯くと、次にハリーを見ました。
「ハリー。私、寮で待っています」
「…リク、ロンとハーマイオニーに」
「もちろん、伝えておきます。
大丈夫ですよ、ハリーはやっていないんですよね?」
「うん」
「それなら先生方はわかってくれますよ」
ハリーが小さく頷き、マクゴナガル先生に連れられて、何処か(きっと校長室)へ行ってしまいました。
私はその背中を見つめていましたが、ロンとハーマイオニーを探すためにも歩き出しました。
階段を上がっていると、後ろから駆け上がるジニーちゃんにぶつかってしまいました。
ジニーちゃんは何か慌てているようで、何も言わずにそのまま駆け上がって行きました。
「、あ……」
階段の途中に、黒い日記が落ちていました。
ジニーちゃんが落としていってしまったようです。
私はその黒い日記を広い、パラパラと中身を見ました。
何もかかれていない、真っさらな日記。
それはトム・マーロヴォロ・リドルの日記でした。
†††
ロンとハーマイオニーにハリーの事をお話したあと、私は日記を抱えて部屋に戻っていました。
ドキドキとしている自分の鼓動を聞きながら日記を開きました。
黒い、皮張りのその日記に羽ペンで書き込みはじめました。
映画を見た私にはこの日記の使い方がわかっていましたから。
「初めまして。あなたはトム・リドルくんですか?」
スゥとインクは紙に吸い込まれていき、そして文字が浮き上がってきました。
やっぱりこれはあの日記帳なんです!
〈君は誰?〉
反ってきた答えに私は急いで書き込みました。
〈私はリク・ルーピンです〉
〈どうして君はこれの使い方を知っているの?〉
確かに。リドルくんにとっては死活問題でしたっけ。
私は一つ一つ文字を書いていきます。
〈……前に似たようなものを見たことがあったからです。
他の人には言ってませんし、殆どの方は知らないと思います〉
〈直接あって話してみないかい?〉
直接ですか…。だ、大丈夫でしょうか。
警戒心ばりばりのまま、でも私は羽ペンを走らせました。
〈はい。よろこんで〉
†††
気がついた時には私はホグワーツの空き教室に立っていました。
目の前には、黒い髪に赤い目をした男の子が机の上に座ったまま私をじとと見つめていました。
「えっと…初め、ましてですよね…?」
「うん。初めまして。僕は、トム・リドル。
で、君は僕の味方? 敵?」
赤い目を鋭くさせて、彼は私の事を睨んでいました。背中を冷や汗が流れていくのを感じました。
†††
「じゃあ何? 君は僕がヴォルデモードだって知っているってこと?」
「は、はい。
……あの、この縄って必要なんでしょうか」
根掘り葉掘り聞かれた私は(ハリーに不利になる事は答えませんでしたよ!)、リドルくんの記憶の中でロープでぐるぐる巻きにされていました。
み、身動きがとれません。
リドルくんは紅い瞳を輝かせて、にっこりと笑っていました。
「必要。だって、反逆されちゃ困るもの。
ね。僕に協力することを誓いなよ、リク」
「い、いやですよ」
ぷいとそっぽを向くと、リドルくんはあからさまに不機嫌そうに「あっそ」と返しました。
あぁやっぱり来るんじゃなかったですね! 怖いです! リーマスさぁーん!!(泣)
「………そういえば、リドルくん。リドルくんはもう身体を自由に動かせるようになってるんですね」
映画では最初、日記の文字での会話しか出来ずに、ジニーちゃんの体力を吸って?かなにかして、ゴーストさんみたいになっていた気がします。
そう思ってきくと、リドルくんが私をじとーっと見つめていました。
「…本当に君は何処まで知っている訳?
前に見たことあるってそれは何処で?
ねぇ、マグル生まれのリク。……犠牲者にはなりたくないだろう?」
リドルくんが私の頬をなぞって、私と視線を合せました。
私はきゅっと口を閉じていましたが、やがて小さく話しかけました。
「リドルくん…、私、未来を知っているんです」
「は?」
「これからどうなるのか。リドルくんがどうなるのか。ヴォルデモードさんがどうなるのか。誰が死んでしまうのか。
全部とは言いませんが、大体は知っているんです。
だから、変えたいんです。良い方に。私の大切な人を守っていけるように。
…………リドルくんも助けたいんです」
リドルくんは私を見つめたまま、黙り込んでしまいました。
私もずっと黙ってリドルくんの反応を待っていました。
しばらく見つめあっていると、くすくすとリドルくんが笑い出しました。
笑ったままのリドルくんが私をぐるぐる巻きにしていたロープを外しました。
自由になった私は驚きながらリドルくんを見つめました。
「闇の帝王を助けたい、守りたいだなんて。君って本当に命知らずだと思うよ」
「え…っと?」
「君が気にいったってことさ。
僕は君に手荒なまねはしないし、うん、ハリー・ポッター殺しに協力しろとは言わないよ。
条件としては、僕の事を誰にも言わない事と、僕の話し相手になること。このくらいかな?」
リドルくんは綺麗な指先を私に向けると、にやりと笑って私の頭を撫でました。
まだ良く状況がわかっていない私でしたが、笑うリドルくんに私も笑顔を返しました。
「じゃあ、リドルくんとお友達になったって思っていいんですか?」
「あまり調子に乗らないでくれる?」
「いたいですいたいですいたいです!」
微笑むとリドルくんに思い切り頬をつねられてしまいました。