「私、いけないと思うわ。3人でいって」
「ハーマイオニー?」
私が声をかけて、はっと息をのんだ所で、ロンが当惑した表情で私を見ていました。首をブンブンと振ります。
そうです、そうでした。ハーマイオニーは間違って猫の毛を入れてしまっていたんです! 何で忘れていたんでしょう!?
「は、ハーマイオニー、体調は大丈夫なんですか?」
「えぇ、大丈夫。だから、早く行って!」
ハーマイオニーにせかされ、私達は注意深くトイレから出ました。
さて、スリザリンの談話室を探さなくては。
「確か、地下だったとは思いますけど……」
「とりあえず行こう。誰か彼かいる筈だ」
ハリーが答えました。そして地下牢の入口辺りを歩いていると、ロンのお兄さん、パーシー先輩が出てきました。
「こんなところで何の用だい?」
思わずロンが聞きました。パーシー先輩は疑うようにロンを見ていました。
今はグリフィンドール生に敵対しているクラッブくんとゴイルくんなんですよ、ロン!
「自分の寮に戻りたまえ。この頃は暗い廊下をうろうろしていると危ない。
リクもなんでここにいるんだ? グリフィンドールに戻ろう」
「え、あ、あの、じゃあ私、戻りますね」
ここで戻っていいものか困ってロンを見ると、ロンはパーシー先輩を睨んでいた。
「自分はどうなんだ」
「僕は監督生だ。僕を襲おうものは何もない」
胸を張るパーシー先輩の後ろからドラコくんが現れました。
「おまえたち、こんなところにいたのか。
あまりにも遅いから探しに来た。
僕はリクを連れてこいといった筈だか?」
「え?」
ドラコくんの言葉にハリーが思わず声を上げました。ドラコくんは眉をひそめるとハリー(ゴイルくん)を見ます。
「また忘れていたのか?
……まぁいい。ところでウィーズリーこんな所で何の用だ?」
「監督生に敬意を示したらどうだ! 君の態度は気に食わん」
「あ、あの、パーシー先輩…」
「リク、いい。話したいことがある。来てくれ」
最近、ドラコくんに避けられていた気がしていた私は、そのドラコくんの言葉にコクンと頷きました。
パーシー先輩に謝ってから、歩き出したドラコくんの背中を追います。
そのまま付いていくと、どうやらスリザリンの談話室についたようです。
合言葉を言い、そのまま談話室に上がって行くドラコくんに私は足を止めました。
「ど、ドラコくん、私入っても…?」
「クリスマス休暇に残ったスリザリン生で僕に逆らえるものはいない。
スネイプ先生に見付かる前に早く上がれ」
「は、はい…」
入ると、中は石造りで出来た地下室がでした。鎖でつるされた緑色のランプが綺麗に光っていました。
見覚えのある緑色ですねと思っていると、私がスネイプ先生から頂いた金平糖の瓶の色だという事に気が付きました。
「わぁ……凄いですねぇ」
「ここで待っていろ、リク。見せたいものもある」
離れていったドラコくんを見送った後、小さく囁くようにハリーとロンに話しかけました。
「薬飲まなくても入れました……」
「リク、本当、ずるい」
「今度、お菓子作って持っていきますね」
「うん、そうして」
すぐにドラコくんは戻ってきました。何やら新聞の切り抜きを持ってきています。
「これは笑えるぞ」
内容はロンのお父さんの事でした。入学の時の車の事で、罰金を言い渡されたらしく、ドラコくんのお父さんも出ていました。
にやにやとロンのお父さんの悪口を言うドラコくんに私は声を上げました。
「本当に仲が悪いんですね。ロンとドラコくん達は!」
「怒っているのか?」
「怒ってませんよ。ですが、ロンもハリーも私の友達ですからね」
横を向くと、ドラコくんはムスとしていました。
「リクも純血だったらよかったのに」
「私の本当の両親はマグルですよ」
「だから。純血だったらよかったのに。そしたら、きっと」
「私、自分の寮に帰ります」
私はドラコくんの言葉を遮って立ち上がりました。ぽかんとしたハリーとロンが私を見上げていました。
純血か、そうじゃないかだなんて。それだけだなんて。良くないと思います!
慌てた様子のドラコくんが私の手を引きました。
「悪かったって。リク、待てよ」
「もう少しで就寝時間も来てしまいますし、私、帰ってます。
………クリスマスプレゼント、ありがとうございました。
メリークリスマス」
「………………わかったよ。メリークリスマス。
おやすみ、リク」
ゆっくりと私の手を離したドラコくんに、振り返って、私も小さく俯きました。
なんだか、こんな怒るつもりではなかったんですが、なんででしょう。
「ごめんなさい。言いすぎました。
…おやすみなさい。ドラコくん」
スリザリンの談話室から出て、私は歩き出しました。残してきたハーマイオニーが心配です。
†††
「ハーマイオニー? 大丈夫ですか?」
「リク…? もう1時間たったの…?」
「まだですよ。私が先に帰ってきました。
ハーマイオニー、どうかしたんですか?」
トイレに戻ると、嬉しそうなマートルちゃんが出てきました。
私はハーマイオニーが入って行った小部屋の前に言って、扉を何回かノックしました。
すると、飛び出してきたハーマイオニーが私に飛びつきました。
その身体はふわふわと毛におおわれていて、目は黄色に変わっていました。
「き、きいて、リク、あれ、猫の毛だったの!」
「そう、だったんですか…。大丈夫ですよ、マダム・ポンプリーなら詳しくきいてこないでしょうし、医務室にいきませんか?」
「ま、待って、まだ1時間たってから、行く。も、もしかしたら治るかも知れないし」
泣きじゃくるハーマイオニーをぎゅうと抱き締めながら、私はハリー達が戻って来るまで、ずっと抱き締め会っていました。