ふと振り返るとそこにはさらさらの髪をした綺麗な女の子がいました。
ロンなんか呆然と、女の子を穴があきそうなほど見つめています。
その綺麗な女の子は微笑みながらハリーからブイヤベースを受け取り、零さないようにもといたレイブンクローのテーブルへと戻って行きました。
私もブイヤベースをよそいながら、未だロンが見つめている彼女を見つめました。
しばらくするとまたゴブレット達が空になり、ダンブルドア校長先生が再び立ち上がります。
教職員の席には他にも2名の役員? の方が到着していました。
「時は来た」
ダンブルドア校長先生の声は静まった大広間によく響きました。
校長先生の合図でフィルチさんが何か大きな木箱を持って進み出ました。
「代表選手達が今年取り組む課題は3つあり、今学年1年間に渡って行われ、試される。
魔力の卓越性、果敢な勇気、論理・推理力、危険に対する能力などをじゃ。
参加三校から各1人ずつ。選手は課題をどうこなすかで採点され、総合点の高いものが優勝する。
代表選手を選ぶのは公正なる選者、『炎のゴブレット』じゃ」
杖が出され、木箱の蓋が軋みながらゆっくりと開かれました。
その中から大きなゴブレットが取り出されました。
その縁から溢れる青白い炎が近くを照らしました。
代表選手に名乗り出たい生徒は羊皮紙に必要なことを書いてゴブレットに入れるのです。
17歳以下がゴブレットに名前をださないように、ダンブルドア校長先生自身がゴブレットの周りに『年齢線』を引くことを言いました。
「最後に、この試合で競おうとするものに言うておこう。
軽々しく名乗りを上げぬことじゃ」
ゴブレットに選ばれた選手は試合が終わるその時まで魔法契約によって拘束され、途中破棄など出来ない状況となります。
ダンブルドア校長先生のお話が終わり、生徒全員は就寝のために席を立ち上がりました。
ボーバトン生とダームストラング生は乗ってきた馬車や船の中で眠るらしく、ぞろぞろと外へと歩み出して行きました。
†††
目を開くととっても不機嫌そうな彼。とナギニ。
「こんばんは。ヴォルデモートさん」
「極々普通に現れるな。貴様は」
すぐさま返ってきた厳しいお言葉に私は苦笑を零します。彼は鼻を鳴らしながら私を見ていました。
「『剥がれかけ』が。戻れなくなるぞ」
「………私だって気をつけているつもりですよ。
でも気が付いたらヴォルデモートさんがいるんですもん」
「…闇の帝王に責任転嫁とはいい度胸だ。
俺様の身体が戻ったら真っ先に可愛がってやる」
低く笑うヴォルデモートさんに、肩が小さく震えました。
ソファの隣に腰を下ろして、この前と同じように肘掛部分に顎を乗せてくつろぎモード。
呆れ顔のヴォルデモートさんは、それでもこの前よりは嫌そうな顔をしませんでした。
「聞いてくださいよ、ヴォルデモートさん。今日は他の学校の生徒さんがいっぱい来たんですー」
「くだらん」
「綺麗な女の子もいたんですよ! 私よりも先輩さんで、すっごく可愛かったんです」
「話を聞け。貴様」
「今、思ったんですけど、ヴォルデモートさんは日本食を食べたことあります? お寿司とか、天ぷらとか、茶碗蒸しとかも美味しいんですよ」
「…………」
「ヴォルデモートさん?」
衰弱した赤ちゃんが頭を落としているのを見て、私は彼の背中に触れました。
急に黙り込んだヴォルデモートさんが急に顔をあげて、苛々と私を見つめていました。
「ヴォルデモートさん?」
「………お前、人の話を聞かないとは言われないか?」
「言われたのはヴォルデモートさんが初めてです」
答えた私に深々と溜め息をつく彼に、私は首を傾げます。
「貴様は本当、俺様を敬え」
「それは嫌ですよ」
「帰れ、剥がれかけマグル!」
「それも嫌ですね」
クスクス笑っていると、ヴォルデモートさんの溜め息がさらに深まった気がしました。